「ビバリーヒルズ青春白書」と全然違う!アメリカの多文化社会 ~イマニ由加利(ライター)


ハリウッド映画顔負けのスケールとストーリー展開で日本でも人気を誇る海外テレビドラマ。2000年に入ってからは「24」「プリズンブレイク」「デスパレートな妻たち」「Glee」といった多くの名作が生み出されたが、それより以前の90年代、海外テレビドラマと言えば「ビバリーヒルズ青春白書」がヒットを飛ばした。
 
「ビバヒル」と呼ばれたこのテレビドラマは1992年にBSチャンネルで放送されて以来、日本でも絶大な人気を誇った。登場人物が着るファッションはアメカジならぬビバカジと呼ばれ、女性誌が特集を組んだ程だ。
 
当時ビバヒルを見て「これがアメリカなんだ。」と想像を膨らませた方も多かったことだろう。高級住宅街、ビバリーヒルズをベースに繰り広げられるティーンエイジライフに、日本とは全く異なるリア充っぷりに若干の嫉妬を覚えつつも憧れた日本の学生は少なくないはずだ。
 
ところがこのドラマは放映された当初からある批判に晒された。それは実際のビバリーヒルズと全く違うじゃないかって事。本記事では、国勢調査から見えるアメリカ多文化社会の現実を考察してみたい。
 
ビバリーヒルズ青春白書
 

ビバリーヒルズの本当の姿

ドラマの主な登場人物のほとんどは、『ブロンド』で『白人』のアメリカ人学生とその家族であった。しかし、2000年に行われたアメリカの国勢調査によると、市の人口のうち、38%が外国生まれ。そのうち44%が1980年以前に渡米を果たしており、また外国生まれの人口のうち、62%がアメリカ市民ではなかった。
 
また、ビバリーヒルズ市で「典型的な」住人と言えばユダヤ系住民かイラン系住民、もしくはイラニアンジューと呼ばれる人たちなのだが、テレビドラマで登場したのはユダヤ人がたったの数人だけ。現実に2007年と2010年の二度ビバリーヒルズ市の市長を務めたのは、イラン生まれのユダヤ教徒で、1959年に渡米を果たした「典型的な」経歴を持つイラニアンジューだったのだけれど・・・。
 

イラニアンジューとビバリーヒルズ市

中東の大国、イランから8万人を超えるユダヤ教徒が逃げ出したのは1979年の事。革命によりイスラム教原理主義者のホメイニ氏が国家元首に収まったためだ。その多くの亡命者のうち、少なくとも3万人がビバリーヒルズやその周辺地区に移り住んだと言われている。
 
▼ビバリーヒルズ市の白人率は8~9割と高い比率を保っているが、これはイラン系住民が統計上では白人に区分される為だ。
ビバリーヒルズ多文化
 
1989年11月31日のロサンゼルスタイム紙には、『リッチなイラン人達がビバリーヒルズにペルシャ帝国を作っている』といった内容の記事が載っている。 (“A New Persian Empire:Immigrants:Thousands of Jewish Iranian settles in the Beverly Hills area during the revolution.Unlike other waves of immigrant, this was one of the richest”)」
 
高い教育とビジネスセンスを持つ彼らは、移民して間もなくビバリーヒルズ市のイメージを作り上げる。彼らは平屋にフロントヤードという典型的な西海岸の住宅様式に反し、「ペルジャンパレス」と時にアメリカ人から揶揄される2・3階立て、バルコニー付きの豪華な家を好んだ。
 
また映画プリティー・ウーマンで有名なロデオドライブを含むビバリーヒルズの繁華街を始め、ロサンゼルスの商業区に多くのビジネスを発展させた事からロサンゼルスはテヘランゼルスと彼らの間で呼ばれるようになる。
 
そういう訳で、ビバリーヒルズ市の人口統計では現在でもイラニアンジューと呼ばれる人達が構成員の多くを占めている。
 
実際のビバリーヒルズ高校(ドラマの中のウエスト・ビバリー高はフィクションの為、実際には存在しない)では、イラン人達の新年である「ノールーズ」の日は、職員研修の日と称し学校を休みにする事が恒例になっている程だ。
 

メディアと移民、そして現実のアメリカ

にも関わらず、ドラマ『ビバヒル』には市のイメージを作った立役者であるイラニアンジューの姿は一人として見られなかった。このようにメディアやエンターテイメント世界から移民や非白人の姿が締め出されるのはアメリカでは良くある事だ。2016年アカデミー賞にノミネートされた20人全員が2年連続で白人ばかりだった事が波紋を巻き起こした事件は記憶に新しい。
 
もし、あなたが海外ドラマやハリウッド映画に憧れ、実際に現地に赴いた時、もしかしたら現実との落差に驚く事があるかもしれない。ビバリーヒルズで出会うのは金髪のディランやブランドンではなく、アリーやモハメッドかもしれない。
 
だが、決してがっかりしないで欲しい。
 
多くの民族や文化、人種を受け入れる懐の深さにこそ、アメリカの本当の魅力が潜んでいるからだ。
 
文:イマニ由加利(ライター)
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2016-04-08 | Posted in アメリカ留学, コラム, 国別記事No Comments » 

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