夏休み留学で学べるオランダ・ハーグでの国際法研修~松本美子(翻訳者)


風車やチーズのイメージが強いオランダ。実は重要な国際機関が集まる場所でもあります。そんなオランダでは、国際機関で体験できる短期留学「ハーグ国際法アカデミー(The Hague Academy of International Law)」サマーコースがあり、国際法に関心のある学生や実務家が世界中から集まる人気のプログラムとなっています。この記事では、実際に参加してきた筆者の目線から紹介をします。
 
ハーグ国際法アカデミー
 

国際機関の集まる都市、ハーグ

オランダの首都はアムステルダムですが、王宮や国会などの重要な国家機能はハーグに集中しているため、ハーグが事実上の首都と言われています。また、国家の機能だけではなく、国際刑事裁判所(International Criminal Court)や常設仲裁裁判所(Permanent Court of Arbitration)など、多くの重要な国際機関が拠点を構える都市でもあるのです。こうした国際機関の積極的誘致は、ヨーロッパの小国であるオランダが存在感を示すための、一つの外交戦略と言えるかもしれません。
 

国際司法裁判所~平和の王宮~

それら国際機関の中でもひときわ美しい建物が、国際司法裁判所(International Court of Justice)。国家間の法的紛争を解決し、国連とその専門機関に勧告的意見を提供することを目的とした国連の主要な司法機関です。2014年には、オーストラリアから日本が訴えられた捕鯨に関する裁判の判決が下されたので、ニュースで耳にした方も多いでしょう。
 
建物は平和宮(Peace Palace)と呼ばれており、ハーグの人気の観光スポットになっています。敷地にはバラなどの様々な草花が咲き乱れており、サマーコース参加中に池のほとりでランチをしていると、まさに平和の王宮、という気分になってくる素晴らしい環境です。建物の内部に入るにはツアーに参加する必要があり、ツアーで訪れるジャパン・ルームという部屋は、日本政府が寄付した圧巻の西陣織で装飾されていて、一見の価値ありです。建物内では写真を撮ることは禁止されていますので、是非一度実際に訪れていただきたい場所です。
 

サマーコースの内容

さて、そんな観光気分も味わえるサマーコース。コースは2つに分かれており、毎年7月初めから始まる「国際公法(International public law)」コース、続いて「国際司法(International private law)」コースが8月中旬まで、各3週間ずつ開講されます。
 
申し込みは、インターネットの公式ページからすることができます。申し込みから受講まで全て英語ですので、基本的な英語の読解力は満たしていることが前提となります。
 
授業は同時通訳付きの英語またはフランス語で行われます。講師がフランス語で講義をする場合には、機材を使って英語で聞くことができるという訳です。逆も然り。アジアからの多くの参加者は英語ですが、国際的には、フランス語は英語と並ぶ国際公用語。特にアフリカ大陸からの参加者はフランス語で受講する人が多いです。筆者は、フランス語は全く分かりませんでしたが、フランス語ができる知人はアフリカ圏の友人もできていて羨ましく感じました。
 
授業の構成は、各コースとも、午前中に実施される必修の一般講義(General Course)と特別講義(Special Courses)で構成されています。また、任意のセミナーも午後に行われていて、こちらはよっぽど関心のあるテーマが取り扱われる場合か、最終的にディプロマを取得しようという場合に参加することが多いです。実際にはディプロマの試験を受けない参加者が殆どで、コースを修了すれば、素敵なデザインの参加証明書がほぼ全員に授与されます。
 

参加するメリット

決して受講料は安くないですし(参考:2017年の各コース1100ユーロ=約13万円(2016年11月現在で換算)、ヨーロッパなのでそれなりの滞在費がかかります。
 
しかし、筆者にとっては、コストを上回るメリットがあると感じました。
 
まず、コース受講中、同じく参加している各国の法律家と一気に知り合いになることができます。筆者は、スウェーデン人、スペイン人、フランス人、ベトナム人、そしてタイ人など実に多様な国の参加者と知り合うことができました。もちろん全員法律家で、博士課程在籍中の人、司法省や外務省の職員、更には最高裁判所判事まで、普通に大学・大学院等に留学したらなかなか出会えないような実務家とも、同じコースの受講生という非常にフラットな立場で仲を深めることができます。
 
また、仕事を通じた出会いとも異なり、美しい夏のヨーロッパで、講義中だけではなくビーチパーティやショートトリップを通じて楽しみながら仲を深めることができ、その後も同期生として繋がりを持ちやすい環境と言えます。筆者は、その後日本に出張するから会おうという誘いを受けたり、今でもSNSなどを通じて繋がりを持っています。
 
特に研究者にとっては、研修施設に併設されているライブラリーのデータベースを使うことができるのは大きなメリットのようです。実際、毎年この時期にデータベースを使いたいがために、何度も参加しているという研究者にも出会いました。
 
また、資料の探し方について、ライブラリアン(司書)が親身になって相談に乗ってくれますし、単に閲覧スペースでパソコン作業をすることも可能です。筆者はイギリスの大学院の留学中に参加したのですが、夏の終わりに提出しなければならない修士論文をライブラリーの閲覧スペースで仕上げました。
 
このように、通常の大学・大学院への留学とは一味違った経験ができるハーグ国際法アカデミーのサマースクール。社会人にとっては正規の留学は一大決心が必要ですが、こうした短期留学なら、比較的気軽に参加できるのではないでしょうか。また、夏休みをヨーロッパで過ごしたいけど、ただの観光では物足りない、という人にとってもおもしろいのではないでしょうか。
 
文:松本美子(翻訳者)
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