全米が奉仕をする日『マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの日』とは~ワイズりか(ライター、イラストレーター)


アメリカでは、1月の第3月曜日は『マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King Junior)の日』と定められている。この日は、グロッサリーストアやデパートを除き、学校やほとんどの勤務先がお休みとなり、各地でキング牧師を偲ぶさまざまなイベントが行われている。
 
また同時に、この日を『奉仕の日(Day of Service)』とし、アメリカ各地で一般市民向けの奉仕活動も盛んに企画され、多くの人が積極的にそれらに参加する。私もできるだけ、この活動に毎年参加するように努めているが、今回も家族とそのグループの一つに加わることにした。
 
ノーベル平和賞を受賞し、生涯、人種問題に立ち向かい、大きな功績を残したキング牧師は生前から、多くの人に奉仕の精神を常に説いていた。奉仕活動を通じて、その地域の人々の結束が強まることを信じていたのだ。この彼の意志を継いで、この日をDay of Serviceとしたと言う。
 
そのため、一見祝日ではあるが、休日を返上してなんらかの奉仕活動に参加するアメリカ人も多い。
 

自分の時間を誰かのために

今回私が参加したのは、隣町にある小学校での奉仕だ。
 
どの国に住もうと、子供たちによりよい教育環境をサポートしてあげることは、自分に子供がいてもいなくても大人たちの責任だと私は思う。子供たちの将来を支え、いずれ支えられる立場へと移ってゆく。やがてそのサイクルは、国の成長へとつながってゆく。私はアメリカに来て、子供たちの教育環境のサポートに特に支持してきたので、今回の奉仕にも力が入った。
 
集まったボランティアの人々は、さまざまな年齢の子供や大人たち。朝8時30分に集合した。一通り挨拶が済んだら、校内のグループと校庭のグループに分かれた。校内グループは、教室内の掃除、ガラス拭き、本の整理、ペンキ塗り等。校庭グループは、ガーデンの草むしりと花植え、そして、ガーデン周りの掃除などだ。
 
アメリカの小学校でボランティア活動
 
私の場合、前回は学校内の窓拭きを担当したが、今回は校庭のガーデニングワークをすることにした。まず、草むしりをして、いらない雑草を除く作業を終え、散らかった雑草を片づけた。そして、土を鍬でならし、春にむけて新しい花を植える作業に取り組んだ。
 
ちょっと興味深かったのは、子供たちの様子である。普段、携帯ばかりに集中している子供たちも、この時ばかりはそんなことをしてられないようだ。皆、この活動に興味しんしん、そして手いっぱいだからだ。
 
草むしりなどしたことがないのか、どうやって抜くのかを父親に尋ね、恐る恐る抜いている子供がいる。また、土の中から姿を現した水仙の、小さな葉っぱを子供に見せて、何か説明している親もいた。
 
アメリカの小学校でボランティア活動
 
雑草を掘り起こしては、ミミズや、気持ち悪い虫が出てくるのを見て、キャーキャー言いながら子供たちが走り回っている。なんだか微笑ましい光景だ。急に昔の子供時代に経験した、なつかしい光景がよみがえってきた。
 
和やかな時間のおかげで、初めて会った人々とも、ジョークを交わしながら、あっという間に作業が終了した。

奉仕の機会は、明るい未来へのブリッジ

「奉仕をしてみたい」と思っている人は、世の中に結構多いのではないかと思う。ただ、その機会を見つける時間がなかったり、見つけ方がよくわからない場合もあるかもしれない。
 
アメリカに長年住んでいて特に印象的なことのひとつは、奉仕活動の機会の多さである。私も、過ごしてきたアメリカ生活を今振り返ってみると、、さまざまな場面が浮かんでくる。特に、張り切って「さあ、奉仕活動をやろう」と思ったわけではない。ただ、そのような機会に自然と「運ばれた」と言ったほうがぴったりくるかもしれない。なぜなら、そのようなチャンスが、ごく身近にあるからだ。アメリカ生活の中では、貴重な経験だったと言える。
 
「奉仕の日」とされたこのアメリカの祝日が設定されているおかげで、この国の多くの人は少なくとも年に一度、奉仕の機会に恵まれる。この日、老若問わず、また人種を超えて、誰かのために自分の時間を使って奉仕する姿は実にすばらしい。
 
知らない者同士でも、同じ目的で集まると何かしら強い心のつながりが築かれるとも感じる。誰かがゴミを集め始めると、もう一人の誰かがゴミ袋を差し出す。あるいは、重い工具を運んでいると、誰かがすぐ横に来て手助けしてくれる。たった数時間の短い時間だけでも、そこに互いの強いチームワークが確立されてゆく。これがよいコミュニティを築く基盤となってゆくのだろう。
 
キング牧師が私たちに残した精神は本当だ。この奉仕活動を通じて、私はそう確信した。
 
文:ワイズりか(ライター、イラストレーター)
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