「文化・健康」重視へ向かうイギリスの学校給食とは。英国の食育事情。~ディビス奈緒子(英国在住ライター/留学生生活サポートワーカー)


かつてのイギリスの給食と言えば、全て加工食品であることも珍しくありませんでした。給食内容はハンバーガー、チキンナゲット、ピザ等のファストフード、それもいわゆる冷凍品で温めるだけ、野菜は申し訳程度に緑の豆があるくらい。日本の様に栄養に気を使ったメニューは全く見受けられませんでした。
 

 
しかし、近年、その給食の様子が変わりつつあります。給食事情の改善に尽力したのは、TVセレブシェフのジェイミー・オリバー。そして、1人の少女の書いた給食ブログがさらにイギリスの世論を動かしました。本記事では、イギリス社会全体が目覚め、「健康」や「文化」を重視する方向に舵をきったイギリス学校給食事情をお届けします。
 

ジェイミー・オリバーの学校給食改善キャンペーン

TVセレブシェフのジェイミー・オリバーが、学校給食の質の悪さを見かねて2012年 キャンペーンを始めたのが2004年でした。キャンペーンでは「ジャンクフードやプロセスフードを学校食堂から廃止すること」を徹底し、新鮮な野菜や果物を採る事を奨励しました。
 
2005年、彼 は約27万人の署名と共にブレア首相と会談。国民意識が高まったこともあって給食改善の為に約564億円の追加予算がつけられました。アメリカ、でも同様な運動がありましたがこちらは成功しませんでした。
 
そんな折、スコットランドの少女が始めた、あまりに酷い給食内容に嘆くブログ「Never Seconds」が、社会の注目を浴びるようになりました。
 
彼女はブログで日々の学校給食を写真入りで紹介。もともとは開発途上国の子どもたちの食料支援募金集めが目的だったこのブログは、むしろ給食事情の面で注目されたのでした。
 
「今日のミートボールはミートボールの味がしたわ。ラム肉じゃなく。私の言いたい意味がわかるといいけど。」
 
「今日のローストポテトは家で食べるのと味が違う。むしろマッシュね。」
 
人気となったか彼女のブログには世界各国からそれぞれの学校給食の写真が届きます。彼女はそれらを紹介しました。日本の給食も紹介されています。当時のイギリスの学校給食とはバラエティ、量、栄養バランスすべてにおいて日本の給食に軍配があがる様子が見てとれます。
 
このブログの影響力が児童数減少や教育予算削減につながるのではないかと不安視した地方自治体と学校当局は彼女に給食の写真を撮るのは禁止だと言い渡しました。これが炎上の元。学校側及び地方自治体の決定を激しく非難する内容のSNSが飛び交い、スコットランド議会の政治家もマーサちゃんの擁護する事態に発展するほどでした。
 
2014年9月、レセプションから2年生までは政府の補助金で無料学校給食(スクールランチ)が供給されることになりました。上の学年は有料で行政区によって違いますが大体一食2ポンド~2.50ポンドになります。
 

イギリスでは肥満児の割合の多さが問題に

政府や栄養関係者の面々は、暖かく栄養のある食事をすることで学力もアップすると考え始めました。給食の改善は必須であり、2015年には政府が更なる大きな改革を行います。出される食事内容に厳しいルールが課せられるようになり、今までのメニューを改正しました。基本として飲み物は水を推奨し、良質タンパク質と炭水化物をバランス良く配分するようになりました。新鮮な野菜果物を1日に各1種類より多く提供し、パン、パスタは胚芽や全粒粉のものに変更をすると決められました。
 

給食の前の「スナックタイム」はとてもヘルシー


 
2時間目終了後の中休みに、フルーツや野菜スティックを食べるスナックタイムがあります。休み時間に皆で牛乳パック(もしくは水)片手に、皮付きで切られていない丸ごとのリンゴや洋梨、きゅうりや人参をぼりぼり齧ります。
 

メニューは年に二回更新され、日本の様に日替わりではない

イギリスの給食は選択メニューが3種類用意されています。一ヶ月分の内容は決まっており、毎月繰り返されるシステムです。このメニューは行政区内の小学校で全て同じになります。
 
筆者の娘の小学校のある日の給食3種類を紹介しましょう。
 
1.暖かい食事。ローストした肉と温野菜、ジャックポテト(皮付きのジャガイモをオーブンで焼いたものに、チーズやツナ、ベイクドビーンズなどをトッピングして食べる)、スパイスたっぷりカレーとライス等。
2.冷たい食事。サンドウィッチ類。
3.パスタ、ピザ等の軽食。
 
毎食後クッキー、アイスクリーム、ヨーグルト、フルーツのデザートがつきます。
 
これらの選択には必ず宗教上やベジタリアン用の為の菜食オプションも用意されています。
 
毎週金曜日は、イギリス名物フィッシュアンドチップス。キリスト教文化の名残だと言われていますが、必ず金曜日は魚料理が提供され、この曜日を楽しみにしている子供達も多いそうです。
 

給食は講堂かカフェテリアで


 
日本では殆どの学校は教室で給食を食べますが、イギリスでは講堂をダイニングとして使用したり、カフェテリアで食べるのが通常です。
 
時間になると最初に低学年からダイニングへ行き、先生や給食のおばさん(通称ディナーレディー)に配膳してもらって、席に着いた順にどんどん食べていきます。
 
日本のように給食当番がいたり、「いただきます!」とみんなで唱えることはありません。
 
また、席は全校生徒の分がないので順番に待ち、入れなかった生徒は外で遊びながら空きが出るのを待ちます。空きが出ると先生が「次は5人どうぞ!」と順に呼びます。この様に先着順で食事を済ませていくので、日本の学校の様に配膳係が食器を片付ける事も、給食後に教室の掃除などはありません。
 

食事の選択は事前に親が決めるのではなく子供がその場で決める


 
偏食癖のある子供は下手すると毎日パスタの可能性もあります。親はこのメニューを元に子供にヘルシーな物を食べてとお願いをしていますが、実際は本当に食べているのかは全く見当がつかないのです。子供達が同じ物を毎日食べていようが残してしまっても先生や給食のおばさんは叱ったりしません。
 
イギリスの多くの学校でヘルシーな給食を目標にメニューを工夫しています。しかし、メニューのバラエティの多さで言えば、やはり日本の給食は優秀。イギリスの学校給食、まだ改善は途上のようです。
 
文:ディビス奈緒子(英国在住ライター/留学生生活サポートワーカー)
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