クラシック音楽家のドイツでの就労契約の種類~金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)


プロのクラシック音楽家として働き、生活していきたいと願う人の多くが、近年ではドイツを目指すようになりました。背景には、イタリア、スペイン、フランスなど周辺諸国では、深刻な芸術関連の経費削減などにより、昔と比べて音楽家たちの仕事は激減したことがあります。国からの安定したサポートを受け、数々の国公立の劇場がきちんと機能している数少ない国のひとつがドイツです。
 
ここでは、そんなドイツでの音楽家の就労形態についてご説明します。
 

▲ドイツ・レーゲンスブルク ドナウ川
 

1. フリーランス

ひと公演ずつの短期契約を結んで仕事をするのがフリーランスの音楽家たちです。国際的に活躍する、いわゆるスター歌手たちはみんなフリーランス契約で仕事をします。
 
そのメリットは、自分が得意とするレパートリーだけを演奏することができること。本意でない仕事は断り、自分の評価を高める仕事や興味のある仕事を選んで働くことができます。
 
ただし、長期間の安定した収入が確約されないのがデメリットです。
 

2. 長期契約

ドイツの劇場ではオーケストラと合唱のメンバーは基本的に終身雇用です。シーズン毎に決まった量の仕事を割り振られ、毎月定額のお給料を受け取って仕事をします。有給休暇も補償され、夏には40日ほどの長期休みが与えられます。
 
ソロ歌手やダンサーは1年から2年の契約を結びます。劇場の上層部が入れ替わるタイミングで契約終了となるケースが多いですが、勤続15年を迎えると終身雇用に切り替わります。
 
劇場所属となることのメリットは収入の安定ですが、自分のレパートリー外の演目への出演を余儀なくされることも多々あります。
 

3. フルタイムとパートタイム

オーケストラと合唱にはフルタイムとパートタイムの雇用があります。フルタイムの雇用契約をしている人が、何らかの理由で仕事量を調整したくなった場合、50%や75%の従事量に抑えて雇用形態を切り替えることができます。
 
結果として残りの50%もしくは25%の仕事を補うために人員が補足され、その雇用がパートタイム雇用となります。
 
その他にも、育児休暇や病気による欠員が出ると、期間限定でフルタイムもしくはパートタイムの人員募集がかかります。
 
歌手やダンサー、役者などのソロ契約には基本的にパートタイムはありません。フルタイム雇用もしくはフリーランスでの短期雇用になります。
 

▲ドイツ・レーゲンスブルクの劇場外観
 

まとめ

それぞれの雇用形態にメリットとデメリットがあります。とはいえ、まず最初に重視すべきは、劇場内に入り込むこと。雇用形態については、その後でよりよい環境を求めて改善を検討してもらうことは可能です。
 
まずは業界内の人脈を構築することが大切です。募集広告を見つけたらあまり深く考えずに願書を送ってみましょう。
 
文:金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)
この執筆者の記事一覧
 

 
 
《これらの記事も参考にしよう!》
■ オペラの本場イタリアで声楽を学ぼう
■ イタリア音楽留学からプロの音楽家への道のりを近づける3つのヒント
■ 欧州で音楽家として仕事を得るなら。「エージェント」活用法《ドイツ編》
■ 若い音楽家や学生を支援するドイツの『バイロイト音楽祭』奨学制度とは?
■ 女性に人気のある音楽留学 


関連記事