トランプ政権発足後、日本人のアメリカ留学が8.1%減少。~若松千枝加(留学プレス編集長)


アメリカ合衆国でトランプ政権が誕生して約半年。入国禁止令をめぐる議論やロシア疑惑など、まだまだニュースの絶えない政権が続きそうですが、今のアメリカへの留学生数に変化が見え始めています。
 

 

「トランプ政権ならアメリカへは留学しない」回答60%の学生たち、その後は?

これまでにも、トランプ政権がアメリカ留学および教育に与える影響についてはたびたびお伝えしてきました。
 
勝利の報が流れた直後の2016年11月の記事「トランプ政権誕生で懸念されるアメリカ留学への影響」では、留学関連ビザの変更や制限、そして「トランプ政権ならアメリカへは留学しない」と回答した学生が60%にのぼった調査結果などをお届けしました。また、2017年1月の記事「トランプ大統領誕生でアメリカ留学「以外」を選ぶ学生たち」においては、アメリカ人学生がカナダの大学への出願数が軒並み上昇したことなどをご紹介しました。
 
これまではまだ漠然と、アメリカで教育を受けることに対して懸念を示す学生が目立っていたのみでしたが、具体的な留学生数の増減が見えてきています。2017年6月6日の『ワールド・エデュケーション・ニュース&レビューズ』で公開された2017年3月期の学生ビザ発給数から国別の傾向を見てみましょう。
 

米国留学トップの中国が2.2%ダウン

まずはトランプ政権発足後に留学生数が減った国を見てみましょう。中国、サウジアラビア、韓国、カナダ、台湾、日本、メキシコ、イギリス、トルコ、ドイツ、スペインなどからの留学生数がダウンしています。
 
なかでも顕著なのがサウジアラビアで7.4%のダウン。中国、インドに次ぎ世界第3位のアメリカ留学生数を持つサウジアラビアだけに、影響は小さくありません。ただし、減少の理由としてはトランプ政権誕生だけとは考えにくい事情があります。国費留学の多いサウジアラビアでは奨学金予算が大幅にカットされており、それがたまたまトランプ政権移行と重なったとも考えられます。
 
それよりも影響が大きいとみられるのが中国の2.2%ダウンです。米国への留学生のうち3分の1を占める中国だけに、現時点で2.2%の減少とはいえ、これが続くとアメリカの教育収入に与える影響は深刻でしょう。
 
もうひとつ目立つのがメキシコです。国境の壁問題で揺れているメキシコとアメリカ合衆国の関係が留学生数にも表れ、11.5%の大幅ダウンとなりました。
 
日本からの留学生数も8.1%ダウンしています。アジア全体でみると、韓国(2.7%減)、台湾(3.5%減)の他、ほぼ横ばいという国が多いなか日本の留学生数ダウンはやや目立つものと言えるでしょう。安定志向の日本社会にあって不安要素の大きい国への留学は二の足を踏んでしまうのかもしれません。トランプ政権の政治かじ取りがまだまだ安定しない今年後半にも影響が予想されそうです。
 

中東、アジア、南米には変化少

一方、留学生数を増やしている国もあります。ベトナム、ブラジル、ナイジェリア、ネパールなどです。また、ほぼ横ばいだった国はインド、イラン、クウェート、フランス、インドネシア、ベネズエラ、マレーシア、コロンビア、タイなどが挙げられます。
 
こうして見ると、南米やアジアの場合、引き続きアメリカ留学に対して希望を失っていない状況が見て取れます。またイスラム教を敵視する発言が目立つトランプ大統領ですが、意外にもサウジアラビアを除く中東において、あまり影響が出ていないことがうかがえます。
 
ヨーロッパ全体としては留学生数が減っています。フランス以外のドイツ、スペイン、イギリスなどで減少が顕著で、なかでもドイツの16.1%減、スペインの4.7%減が目立ちます。
 
アメリカ留学生数・第2位のインドは現時点でほぼ横ばいです。しかし、アメリカへの移住・就労意向が高いインドの場合、トランプ大統領の指示により、もはや審査厳格化が時間の問題となっている就労ビザ「H-1Bビザ」の動向によって今後大きく左右されることになるでしょう。
 

留学計画の時点で多様な選択肢を検討

全体としてみると1.8%減となったアメリカへの留学生数。現時点では、アメリカ留学が増えるようなポジティブな要素はどこにも見当たりません。
 
アメリカ留学が不安定な一方で、これまでアメリカと並ぶ英語圏留学先として人気を博してきたイギリスでもBrexitによる影響がまだ見えません。そんな時代に、米英以外の英語圏国は留学生受け入れ国としての施策を強化してきています。留学生の分布地図が、徐々に塗り替わりつつあります。
 
日本からの米国留学生数がアジア各国のなかでもっとも大きくダウンしていることは先述しましたが、日本人留学生の場合、2011年9月11日の米国同時多発テロやSARS等の先例を見ても社会情勢による影響を受けやすい傾向があります。私費留学が多い日本では、行先は自由に決められます。日本のパスポートは世界のどこよりも自由に国が選べるパスポートでもあります。だからこそ、これからの留学は、計画の時点で多様な選択肢があることを今まで以上に認識し、情報収集にあたるべきでしょう。
 
多様な選択肢がある今の時代。留学生は自分の目的を今一度見直すチャンスです。その国に何を学びに行くのか。もし見えていない人がいるのなら、このタイミングで考えてみるのも良さそうです。
 
文: 若松千枝加(留学プレス編集長)
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