『個』の自立を目指す教育とは?デンマーク教育に見る子どもの自立と親の自立~田中亜季(北欧研究所シニアコンサルタント)


『 親離れ』『子離れ』というのはどこの家庭でも常に抱えている課題でしょう。また、厳しいグローバル社会に対応する人材が不可欠な現状で、自立した個人を育てる学校教育というのも大きな課題であると言えます。

ここデンマークでは一般的に、小さい頃から自分自身で決断し、行動することを求められます。そして何を学び、将来何になるかは、自分で決断する「自立した個人」となることが理想とされています。家庭内の教育は日本と比較すると、自由放任主義で、親も子供から自立しています。

本記事では、徹底して『個』の自立を目指すデンマーク教育を紹介します。2020年の教育改革も目前に迫る今、自立を促す教育についてヒントを探してみます。
 

デンマークの学校では怒られない

デンマークでは一般的に、小さい頃から自分自身で決断し、行動することを求められます。そして何を学び、将来何になるかは、自分で決断する「自立した個人」となることが理想とされています。

そのため、幼いころから個の自主性が重んじられます。その一例が、学校での発言風景です。

教師が「教える人」で、生徒たちが「教えてもらう人」という日本のよくある構図とは少し異なります。教師が生徒に怒る、といった授業風景はあまり見られません。

教師はあくまでファシリテーターであり、生徒の意見は常に尊重されます。生徒たちはたとえb答えを知らなくても、答えを間違えていても躊躇がありません。それを「恥ずかしい」と思わないし、思わせない環境のなか育ってきたため、どんな場所であっても賢い質問や、発言をしようとする気負いがないのです。

さらに日本のような上下関係の感覚もありません。役職や立場などがいわゆる「偉い人」であっても下の名前で呼び合い、フラットに対話をするのがデンマーク人です。
 

18才になれば完全に自立する

デンマークでは、家庭内の教育は日本と比較すると、自由放任主義です。自由放任といっても、わが子を子ども扱いせず、意見を備えた一個人として扱うかが重要だと考えられています。

デンマークでは基本的に夫婦共働き。そんな忙しい日々の中でも子供を頭ごなしに叱らず、感情的にならずに、粘り強く子どもにメッセージを伝え続けること、そして「選択の自由とその責任」を感じさせるしつけが推奨されています。

わかりやすい例をひとつ挙げましょう。子供たちはブッフェや大皿で出される料理の中で、好きなものを好きな分だけ自分で取れる代わりに責任をもって残さず食べることが求められます。

デンマークの教育は基本無償ですが、さらに18歳以上の高等教育に進学するデンマーク市民は全員がSUと呼ばれる給付奨学金がもらえます。

その額は両親と同居しているかどうかなど学生の条件によって異なり、両親と同居していない場合は、毎月6,090DKK(約10万5000円)が支給(※2)されます。

これは国外の大学へ留学する際にも適用されます。デンマークでは18歳以降は完全に成人扱いとされ、学生の大多数が親からの仕送りなどは受けずに一人暮らしを始めます。

付加価値税(VAT)25%で食費も高く、コペンハーゲン市内の家賃の高いのでルームシェアや共同寮で生活をするのが一般的です。
 

子供の自立と親の自立

同時に、親も子供から自立しています。老後の介護や支援などは子供に頼らず、自立した生活を望む高齢者が多いです。

医療費も税で賄われるため、無償です。年金で生活し、二世帯同居は一般的ではありません。年金受給者が住むことのできる公共の高齢者住宅地もあります。生活に必要なすべての設備が整っており、家賃(平均で月に2万5千円ほど)は、住居者の受給した年金から自動的に支払われます。

子供の自立と親の自立が成り立つのも、高福祉社会制度のおかげであるのはもちろんですが、同時に、国からの社会保障に頼り切らない「『個」の自立」が育まれる教育があるのは、至極まっとうな社会システムのように思います。

▼コペンハーゲン市内にある図書館では毎日学生が勉強しています

もちろん、ここまで手厚い支援があるために不正受給問題はないわけではありませんし、実はデンマークの社会問題の一つでもあります。最近は移民問題で予算がひっ迫もされ、これまでのような手厚い支援が受けられなくなってきているのも事実です。

しかし、「学力競争」ではなく「主体性」に重きをおいた教育制度は、次世代の考える市民を育てます。こういった個の意見が尊重される教育制度が、現在のデンマークの若者の政治参加率の高さと、未来の社会を自分たちの意見で変えてゆけるという実感を支えているのかもしれませんね。

出典
(※1) デンマーク教育省/Private Schools in Denmark
http://eng.uvm.dk/primary-and-lower-secondary-education/private-schools-in-denmark/grants
(※2) デンマーク高等教育・研究省/Grants and Loans amounts
http://www.su.dk/english/grants-and-loans-amounts/

文:田中亜季(北欧研究所シニアコンサルタント)
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