アイルランドでラグビーが愛される理由:血の歴史を平和と団結へ。~ばあんのりこ(ライター)


ラグビーワールドカップ2019日本大会では、日本と死闘を繰り広げた強豪国アイルランド。アイルランドにとってラグビーは国の歴史と切っても切り離せない側面を持つ、大切な文化です。

かつてアイルランドに起きた悲劇の歴史。
それを、ラグビーが友好へ導いたことをご存じでしょうか?

アイルランドに平和をもたらしているラグビーの力とは?
そして、アイルランドを強豪たらしめている強さの秘密とは?

今日は、ラグビーとアイルランド社会との深いかかわりについてご紹介します。


 

『アイルランド合同チーム』とは?

ラグビーワールドカップのアイルランドは、アイルランド共和国と北アイルランド(※)の合同チームとして参加しています。(※英領北アイルランド=イギリスの構成国のひとつ。イギリスの構成国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド。)

サッカーワールドカップでは、それぞれの代表チームにわかれて参加しているのに、不思議ですよね。ラグビーやサッカーは協会単位で代表チームが作られます。サッカーを統括する団体は、アイルランド共和国と北アイルランドのそれぞれにありますが、ラグビーは一つのため、合同チームになっているのです。

しかし、アイルランド共和国と北アイルランドでは、国歌も国旗も違います。そのため、国家斉唱時には、1995年のラグビーワールドカップに作曲された「Ireland’s Call」という合同チーム用の歌を歌います。

そして、チームの旗には、北アイルランドがあるウルスター州(Ulster)、レンスター州(Leinster)、ムンスター州(Munster)、コノハト州(Connacht)の州旗とシャムロックが描かれています。

アイルランドラグビー協会の旗(外部リンク)
 

スポーツが対立緩和に一役。ラグビーとアイルランド独立戦争の関係。

ラグビーはアイルランド独立戦争の歴史、そしてその悲劇を友好へ導きました。ここではそのエピソードをご紹介しましょう。

アイルランドには、「ゲーリックフットボール(Gaelic Football)」や「ハーリング(Hurling)」といった独自のスポーツがあります。

ひと昔前までは、ゲーリックスポーツをするのはナショナリスト(アイルランド独立を支持する人)、ラグビーやサッカーをするのは、ユニオニスト(アイルランドがイギリスに属することを指示する人)とされていました。

ゲーリックスポーツの聖地で、最大のスタジアムがダブリンの北部にあります。それがクロークパーク(Croke Park)です。クロークは、独立戦争がらみでナショナリストの犠牲者を多数だした、悲劇の場所でもありました。

2007年、初めてクロークパークでゲーリックスポーツ以外のラグビーの試合が行われました。ラグビー場が使えなくやむを得ずの対応策だったのですが、この出来事はアイルランドの人々にとって大きな意味を持つものでした。

独立戦争で多くの犠牲者を出したこのスタジアムで、アイルランド共和国と北アイルランドが合同チームとして一緒に戦う姿。そんな姿を見られるのは、アイルランドの人々にとって、心から喜ばしいことでした。

ラグビーが、同じ島の中で対立しているナショナリストとユニオリストの関係緩和のきっかけに一役買うかたちになったのです。

▼クロークパーク(Croke Park)

 

アイルランドラグビーの強さの秘密

アイルランドでサッカーをしたい場合には、地元のクラブなどに属すのが一般的。一方、ラグビーの場合は、通称ラグビースクール(Rugby School)と呼ばれる、ラグビーに力を入れている学校に入学します。

日本の中学・高校をあわせた6年間の普通校ですが、体育の時間はもっぱらラグビー。設備も整っており、まとまった時間をラグビーに費やすことができるので、若年層のラグビースキルは上達に貢献しています。

また、アイルランドでは、ヨーロッパ圏からだけでなく、さまざまな国籍の人々が暮らしているので、海外から優秀な選手を集めやすいのでしょう。

国の歴史や治安、人々の考えとも密接にかかわってきたラグビー。アイルランドの人たちにとって、スポーツ競技のひとつという概念を超えた大切な存在であることをご紹介してきました。

スポーツに隠されたこんな背景を知ってみると、また新鮮な目で観戦できるかもしれません。4年に一度開催されるラグビーワールドカップをはじめ、国際試合がますます楽しみになりますね。

文:ばあんのりこ(ライター)
この執筆者の記事一覧
 

 
 
《これらの記事も読まれています》
■イタリア人は意外と心配症。イタリア特有の迷信事情。
■ 日本とは違うヨーロッパのお風呂(シャワー)事情
■海外でホームパーティを楽しむには
■知っておきたい欧米でのビジネスマナー・基礎の基礎
■ 女性に人気のある留学


関連記事