ここでは、大学留学を検討している人のために、海外の大学留学の制度、メリットや国ごとの大学の特徴や学べる学部を解説します。
大学留学を実現するには大きく分けて
- 海外の大学に直接入学するか
- 留学制度を設けている日本の大学に入学するか
の2つの道があります。この記事では、それぞれの方法についてご紹介していきます。
大学留学に興味はあるけれども、するべきか迷っている人、大学留学をするにはどんな方法があるか知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
どんな選択肢がある?大学留学制度について

海外大学には高校からストレートに進学する人だけでなく、社会に出たあとに学び直す人がいるのが当たり前。人種や出身国も多彩で、ダイバーシティに富んだ環境で大学生活を送ることができます。
大学制度も日本よりも柔軟なため、大学留学するうえでもいろいろな選択肢があります。
大学留学する方法を大きく分けると、現地の大学に入学する方法と、日本の大学に入学して大学の留学制度を利用する方法があります。それでは、大学留学の基本的な方法についてご紹介していきましょう。
4年制大学(国によっては3年)
日本の4年制大学進学と同じように、海外の大学へ入学する方法です。卒業すると学士号という学位が取得できます。海外の大学を卒業した実績が欲しい人、専門的な勉強をとことんしたい人に向いている方法です。
アメリカやカナダの大学は日本と同じく4年間です。多くの場合、2年間で一般教養、2年間で専門課程を学びます。
イギリスやオーストラリア、ニュージーランドは3年制です。一般教養課程はなく、3年間すべてが専門課程です。そのため日本人学生で最終学歴が高校の場合は、大学に出願する前に『ファウンデーションコース』という準備コースで一般教養課程に相当する科目を履修することが必要になります。
いずれの国も、出願時に高校または大学の成績、語学力のスコア(TOEFL®やIELTS、大学によっては英検など)の提出が必要です。そのほか、大学によっては推薦状や論文提出、英語力スコア以外の学力テストスコア(例:SAT)などが必要です。
人気のある大学ほど入学に高い成績が求められるので、成績やスコアが満たない場合は2年制大学の編入コース→大学に編入という方法もあります。
2年制カレッジ(コミュニティカレッジやTAFEなど)
日本の教育制度に置き換えると、短期大学や専門学校に相当する教育機関です。卒業すると准学士号という学位が取得できます。
アメリカやカナダではコミュニティカレッジ、イギリスでは主に公立のカレッジ、オーストラリアではTAFE、ニュージーランドではポリテクニックなどが相当します。
2年制カレッジのコースは
- 職業に直結したスキルを学ぶ職業コース
- 大学への編入を目指す編入コース
のふたつに分かれています。将来、4年制大学に入って卒業したいのか、それとも2年制大学卒業後すぐに仕事に就きたいのかで判断するのが良いでしょう。
大学へ編入したい人にとっては4年制大学よりも入学基準が易しいというメリットがあります。語学力が足りていないうちにいきなり4年制大学に出願するよりも、2年制大学を経由することで難易度の高い大学への編入を目指すこともできます。
また、4年制大学に比べて学費が安いことがほとんどなので、留学費用をおさえたい人にもおすすめです。
交換留学制度を利用する
日本の大学で設けている留学プログラムのひとつです。大学が協定を結んでいる海外の大学(協定校)に留学できます。
留学先は、日本の大学、海外の大学双方が協定する「大学間協定大学」、大学の学部や学科で協定している「部局間協定大学」のいずれかです。大学間協定大学は大学に所属している正規の学生が利用でき、部局間協定大学はさらに特定の学部や学科に所属している学生のみが利用できます。
留学期間は1学期~1年以内です。滞在費や渡航費は自己負担ですが、留学先での授業料が免除される場合が多くなっています。成績や留学計画、面接などを踏まえた学内選考をクリアした学生のみが、交換留学制度での留学が可能です。
休学して留学する
日本の大学を1学期~1年間休学して、海外の大学に留学することもできます。交換留学と異なる点は、自分の好きな大学を選び現地大学の授業を聴講できることです。
ただし、現地大学での授業は日本の大学で単位として認められるとは限りません。単位認定を希望する場合は、日本の大学ともしっかり協議をしておくのがおすすめです。
海外短期研修を利用する
海外短期研修も日本の大学で設けている留学プログラムのひとつです。春休み、夏休みなどの長期休暇を利用して海外の大学へ留学します。語学研修、異文化体験、専門分野の講義受講、フィールドワーク、インターンシップ、海外大学のサマーセッション履修など、短期間で大学留学できるさまざまなプログラムが用意されています。
交換留学のように校内選考がないため、気軽に参加できるのがメリットです。
大学留学をめざす4つのメリット

海外留学のなかでも、大学留学は期間も費用もかかります。一方、ほかの留学では得られない多くのメリットも得られます。大学留学をすると得られる4つのメリットを紹介します。
単位や学位が取得できる
海外の大学に進学した場合、日本の大学と同様大卒資格である学位が取得可能です。
交換留学や休学留学の場合、海外の大学で受講した科目も取得単位として認められるケースもあります。
日本の大学のなかには『海外の大学で1~2年』+『日本の大学で1~2年』=『トータル4年』といったカリキュラムを持つ学部もあります。(例:国際教養学部、グローバル教養学部など)
そのような学部には、海外の大学と日本の大学両方の学位が取得できる「ダブルディグリー」という制度もあります。
将来のためのスキルや知識が身につく
海外の大学には、日本とはくらべものにならないほど多彩な学部や分野があります。
すでにやりたいことや興味にある分野、挑戦したい仕事の知識やスキルを学ぶのもよいでしょう。
まだやりたいことが決まっていない人も大丈夫です。海外の大学では途中で学部を変えたり、他の大学へ編入するのは当たり前です。興味が複数にまたがっている人なら、2つのコースで卒業を目指すこともできます。
新しい発見や知見が広げられる
日本人留学生から現地学生について聞かれる代表的な感想には
「勉強量が多く熱心」
「政治や社会に対する問題意識がある」
「歴史認識が深い」
「将来への課題を持っている」
といったものがあります。もちろん、日本の学生のなかにもさまざまな人がいますが、現地大学生に対して驚きとリスペクトの念を強くする人が多いのが実情です。
海外で暮らし、海外の大学で学ぶことで新しい知識やスキルを得るだけでなく、発見もあります。現状に満足していない、将来やりたいことが分からない高校生や大学生が新しい何かを発見したり、知見を広げたりするきっかけにもなるでしょう。
現地の大学卒業後、現地で働くという選択肢もあります。海外就職や、グローバル職種への興味がある人にとっても海外大学留学は大きなチャンスをもたらします。
語学や異文化に触れる機会が得られる
知識やスキルを身につけるだけなら、日本の大学や専門学校などでもできます。海外の大学留学をすることで、外国語に多く触れる機会が得られるのが最大のメリットです。
ほかの学生や留学生と触れ合うことで、異文化交流の機会も得られます。グローバルな視点や考え方を身につけたいときや、将来的に英語を使った仕事を目指したいとき、海外への移住を考えているときにも、大学留学は選択肢に入ります。
国ごとの大学の特徴と学べる学部を紹介

大学留学先の国はいろいろな選択肢があります。ここでは、大学留学で人気の国をピックアップし、国別の大学の特徴と、どんな学部で学べるかを解説します。
アメリカ
アメリカは大学のレベルも学部も多彩です。転籍や編入も当たり前なので柔軟な学び方ができます。
入学時期は9月または1月です。4年制大学と2年制大学(コミュニティカレッジ、ジュニアカレッジ)のいずれかに入学することになります。
入学試験はなく、書類提出による出願で合否が決まります。求められる英語力は大学により異なりますが、最低TOEFL(r) iBT61点以上を目安にしておくとよいでしょう。
英語力が入学基準に達していない人は、語学学校に入学して英語力を身に付けることを条件に合格が出されることがあります。
カナダ
カナダの大学は基本的にアメリカと同じシステムです。カナダは大学間のレベルの差がなく、いずれも教育の質が高くなっています。アメリカにくらべるとやや学費が安いのも魅力です。
入学時期は9月が多く、4年制大学と2年制大学があります。
入学試験はなく、書類提出による出願で合否が決まります。入学にはTOEFL(r) iBT80~100点の高い英語力が必要です。卒業すると最長3年間の労働ビザを申請できるので、将来カナダへの移住を考えている人の選択肢にもなります。
イギリス
イギリスの大学は一般教養課程がなく、ほとんどの大学が3年で卒業できます。留学生の場合、一般教養課程の代わりにファウンデーションコースを1年履修してから大学に出願します。
入学時期は9月です。
イギリスの大学は学問研究に主眼を置いた「アカデミック系」と、職業に直結するスキルを学ぶ「キャリア系」とに分かれているのが特徴です。
芸術、建築、開発や国際関係に学部、環境、平和、海洋、園芸などの学部、博物館学、英語教授法など、伝統と独自性、さらに最先端技術が融合した分野の学びに向いています。
入学試験はなく、書類提出による出願で合否が決まります。大学ごとの出願ではなくUCASという一括出願窓口へ提出します(一部の大学には例外あり)。IELTSで6.0~6.5、TOEFL(r) iBT80~93程度の英語力が必要です。
イギリスには1年間のみで学部の聴講ができる「スタディー・イヤー・アブロード」プログラムがあります。このプログラムは日本の大学を1年間休学して受講するのが一般的です。
オーストラリア
オーストラリアの大学はイギリスと同じく一般教養課程がなく、ほとんどの大学が3年で卒業できます。
留学生の場合、一般教養課程の代わりにファウンデーションコースを1年履修するか、公立の専門機関TAFEを経由して編入するのが基本です。ただし近年は、ファウンデーションコースを経ずに直接入学できる大学も増えてきています。
入学時期は2月と7月です。
言語学、観光、環境、スポーツ、福祉分野の学部のほか、健康、ホスピタリティ、海洋学、航空学なども人気が高いです。オーストラリア国内での編入や転校もフレクシブルです。
入学試験はなく、書類提出による出願で合否が決まります。英語力はTOEFL(r) iBT 80~96以上が求められます。
ニュージーランド
ニュージーランドの大学制度はオーストラリアとほぼ一緒で、入学時期は2月と7月です。言語学、地質学、農学、園芸、ホスピタリティの学部が多くなっています。物価や学費が安いのも魅力です。
入学試験はなく、書類提出による出願で合否が決まります。TOEFL(r) iBT 80~96以上の英語力が求められます。公立の職業訓練校であるポリテクニック(Polytechnic)を卒業してから大学に編入するコースもあります。
大学留学は語学力以外の経験や知識、見聞も身につけられる
海外の大学で学ぶ大学留学は、高校卒業後直接入学する方法と、日本の大学に入学し留学制度を利用する方法があります。留学先の国や留学の目的によって、留学する期間や学べる学部、費用は異なります。
- 学位や単位を取得したい
- 将来海外での就業や移住を目指している
- 大学の長期休みを利用して留学したい
など、目的に応じたものを選びましょう。
大学留学は英語や異文化に触れられるだけでなく、専門的な知識やスキルを身につけたり、見聞を広めたりできる機会でもあります。大きな経験となる大学留学で、実りのある学びを実現しましょう。