音楽家の卵がヨーロッパで仕事を得ていくにはどうすればよいか知っていますか?せっかく音楽で留学までして実力をつけたのだったら、やはりヨーロッパで仕事をしていきたいもの。
オペラ歌手として仕事をしていくうえで、エージェントの存在はとても大切です。この記事ではドイツに焦点を絞り、クラシック音楽家のためのエージェント、特にオペラ歌手にとってのエージェントの役割と、その実態をご紹介します。
▼ミュンヘン、バイエルン歌劇場内部
エージェントとは
ドイツにおけるクラシック音楽の業界には、数多くのエージェントが存在します。その役割は、端的にいえば日本の芸能事務所によく似ています。所属する音楽家たちの売り込みや宣伝、マネージメントが主な業務内容です。
ドイツの劇場では、一般に広くソリストを募集することはほぼ100%ありません。音楽家専門の求人サイトや劇場勤務者に配られる雑誌等にも、ソリストの募集広告が載ることはありません。
特別な人脈がある場合を除けば、ドイツの劇場でオーディションを受けるにはまず力のあるエージェントに所属する必要があります。個人的に就職活動をしようにも、エージェントが付いていなければ願書すら出せないのが実情です。
私立のエージェント
ドイツ国内に私立のエージェントは無数に存在します。しかし、十分に機能しているといえるのは残念ながら一握りです。
何社ものエージェントを渡り歩いてようやく仕事を取れるようになる歌手も大勢います。専属契約を結ぶケースは稀なので、1社目が尽力してくれないようなら迷わず他を探しましょう。
具体的なエージェントの見つけ方としては、以下のものが挙げられます。
・恩師や先輩、身内など人脈を頼って紹介してもらう
・自分が出演した舞台を観たエージェントからのスカウト
・ホームページなどからオーディションの申し込みをする
自らオーディションの申し込みをする場合、例えば50社に願書を送った場合、返事があるのは10社以下と覚悟しましょう。そのうち実際にオーディションに呼んでもらえるのは2、3社、その他は返事すら来ないのが当たり前です。
実力レベルに関わらず、落とされるのが当たり前の世界です。そこには様々な理由やバックグラウンドがあります。卑下することなく、誰にとっても狭き門であることを忘れずに、根気よくチャレンジしましょう。
国立のエージェント
ドイツにはZAVという国が経営する舞台音楽のエージェントが存在します。ベルリン、ハンブルク、ハノーファー、ケルン、ライプツィヒ、ミュンヘン、シュトゥットガルトに支社があり、それぞれの管轄の劇場と連動して業務が行われています。
ソリスト部門と合唱部門があり、定期的に開催されているオーディションは無料で受けることができます。
ZAVが一番に重視するのは受験者のドイツ語力です。どんなに演奏が素晴らしい人でも、ドイツ語が喋れなければ採ってはもらえません。
▼ドイツでは教会での演奏会も数多く催されます。
まとめ
エージェントに採ってもらった後に待ち受けているのが各劇場への応募です。この壁が一番の難所となります。エージェントが尽力してくれようとも、履歴書を受け取った時点で「アジアンは必要ありません。」と一刀両断する劇場も存在するのが実情です。
不合格の知らせが続くと自信が揺らぎはじめたり、前進するエネルギーが弱まってしまったりするものですが、仕事を始めてからも多くの壁が立ちはだかっているのが現在の舞台芸術業界の実態です。
実力以上に気力と根性が必要となることを忘れず、前だけを見て突き進みましょう。
文:金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)
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