イタリアでは大小様々なコンクールが年間通して数多く開催されています。オペラの本場、イタリアで声楽を学ぶならば、コンクールにも積極的に参加すると良いでしょう。
日ごろの鍛錬の成果を試すため、周りの実力を知り自分の目標を定めるため、場数を踏んで精神面を鍛えるため、刺激を受けモチベーションを高めるためなど、実に様々な側面で得るものがあるからです。
基本的なコンクールの流れ
1. 申し込み
イタリアでコンクールに参加するにはまずメールで必要書類を主催者に送付します。通常提出を求められるのは、指定の用紙に必要事項を記入しサインをした願書、上半身のアーティスト写真、書式自由の履歴書、身分証明書のコピーです。
願書には、コンクールで自分が歌う予定の曲名を記入する欄があります。4曲から5曲の提出が求められるケースが多くなります。
稀にプレ・セレクションを行うコンクールもあり、その場合はデモ録音もしくは録画の提出が求められます。基本的に、数か月以内に録音もしくは撮影されたものを提出しましょう。
2.当日の服装
イタリアのコンクールは、日本のコンクールと比べるとずっとシンプルな服装で参加できます。特に予選ではゴージャスなドレスなどは浮いてしまうので避けましょう。女性はシンプルなロング・ドレスもしくはひざ丈のワンピース、男性はスーツなど、普段より少々シックな服装で充分です。ファイナルだけはコンサート用の服装が求められます。
3.予選
通常一次予選では、願書で提出した曲目の中から自分が最初に歌いたい曲を選んで歌うことができます。審査員の注意をひくことができれば、2曲目をリクエストされます。
予選で歌う曲は、なるべくシンプルで確実に仕上がっているものを選びましょう。なぜなら、事前に伴奏者との合わせが満足にできない場合がほとんどだからです。
込み入った曲や知名度が低い曲を選んでしまうと、伴奏者に足を引っ張られることになりかねません。どんなピアニストでも知っているような曲、もしくは伴奏が途絶えようともテンポがずれようとも歌いきる自信のある慣れた曲を選びましょう。
通常、参加者の3分の1から4分の1程度の人数がセミ・フィナーレに進みます。セミ・フィナーレでは、伴奏者との合わせが事前にしっかりとできるので複雑な曲でも対応してもらえます。
4.本選(フィナーレ)
本選には10名前後がコマを進めます。一般客に開放されてコンサート形式で行われることが多く、お客さんの投票によって決まる観客賞を設けているコンクールも多くあります。
予選はピアノ伴奏ですが、フィナーレはオーケストラによる伴奏というケースも多々あります。そのため、オーケストラの譜面が入手しにくいような曲は好ましくありません。
観客を盛り上げてしまえば審査員の心象に大きく影響するので、圧倒的に美しいメロディラインの曲が有利になります。マイナーな曲で超絶技巧を披露するのはセミ・フィナーレで済ませておいて、フィナーレでは有名どころを歌う方が勝率が上がります。
▲イタリア、ルーゴの歌劇場
まとめ
日本で声楽コンクールを受けると、高額な参加費プラス伴奏者への謝礼が必要となり、大きな出費になります。その点イタリアでのコンクールは、参加費も割安で伴奏者もコンクール側が用意してくれているので気軽に受けることができます。
最初は結果がついてこなくても、フィナーレを見学するだけでもとても良い勉強になりますし、自分が今現在どの程のレベルにいるのかを認識するいい機会にもなります。是非有効活用して、自身の成長へ繋げていきましょう。
文:金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)
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