ドイツ人女性は人生のステージごとに働き方を変える~クリューガー量子(ハイデルベルク市公認ガイド)

人生には、いくつかのステージがあります。学生時代、就職、家族構成の変化。人は年を重ねるごとに、身の回りの環境や、考え方、大切に思うものが変化していくものでしょう。
 
とりわけ、女性にとって人生のステージ変化で悩みとなるのが「仕事と家庭の両立」。ドイツは、この女性の悩みを解消するため時短勤務を上手に活用している社会です。
 
今回は「ドイツ人女性は人生のステージごとに働き方を変える」をテーマにお伝えします。
 

出産後1年間:両親休暇を利用

出産は家族にとって大きな喜び。人生の新たなステージが始まります。
 
出産までは、人生の決定基準は「自分が幸せかどうか」であったのが、結婚出産を経て、その基準が「自分と家族にとって幸せかどうか」に変化していくのではないでしょうか。
 

 
現在ドイツでは子供が生まれると、多くの女性が1年間休暇をとります。この1年間は両親休暇制度により、国から手当が受けられます。
 
両親休暇制度とは、育児休暇をとる一方の親に手当が最長12ヶ月間支払われる制度です。両親が 育児休暇をとる場合は、両親ともに更に2ヶ月延長することができます 。支給される金額は、両親手当を受ける親の最近12ヶ月の平均純所得の65%で、月額1800ユーロが上限。父親が両親休暇をとる場合は父親の所得で、母親が両親休暇をとる場合は母親の所得で計算します。所得が無い親にも月300ユーロ支給されます。
 
この制度により、男性も育児休暇が取りやすくなりました。
 
2007年に両親休暇制度が導入されてから、2000年に2.4%であった男性の育児休暇取得率が、2011年には25%に上昇しました。その内の75%は2ヶ月の取得、7%の男性が12ヶ月の取得です。
 
筆者の周りでも最近、多くの男性が育児休暇を取っています。職種は様々で、皆30代から40代の働き盛り。総合病院に勤める外科医の友人は2か月の両親休暇を取り、家族でブラジルでバカンスを過ごしました。近所のエンジニアの家族は、両親休暇を使ってアルプスの山小屋で1か月の旅行を楽しみました。
 
男性が両親休暇を取ることは、キャリアや職場での評価においてマイナスにはなりません。その逆で、家族を大切にしていることの証、2か月程休暇をとっても生活に支障がないというステータスの証と考えられています。
 
最近ドイツで、友人に赤ちゃんが生まれると必ず交わされる会話は、「彼は育児休暇をとるの?どの位の期間?」です。
 

子供が1歳~3歳:育児休暇を取得し、週に15時間から30時間の時短勤務で働く。

 
育児休暇は計3年間ですが、そのうち、24か月間までは子供が3歳から8歳時に取得することもできます。ドイツの学校は昼まで。子供の小学校入学に伴う生活リズムの変化や家庭の事情に合わせて仕事量を調整できるようにするためです。
 
育児休暇中、従業員数が15人以上の企業では週に15時間から30時間までの労働が認められています。これを利用して、子供が3歳になるまでに時短勤務を利用して育児をしながら職場に復帰する女性も多くいます。
 
子供が3歳までの期間は、母親にとって一番大変。でも、子供は可愛いさかり。この生後の貴重な3年間、子供とずっと一緒にいたい母親もいれば、育児をしながら自身のスキル維持、スキルアップ、社会との交流、より良い家族の経済状況を求めて、仕事復帰をする母親もいます。
 
母親の思いは十人十色。個々の希望を叶えるのが時短勤務制度です。
 

子供の入園入学:時短勤務制度を使って職場復帰

子供が3歳になり幼稚園に入ると、更に多くの女性が職場復帰します。育児休暇後の職場での部署及び仕事内容は、育児休暇取得前のものと同じとは限りませんが、ポジション、勤務待遇は維持されます。
 
そして、ドイツには6ヶ月以上同じ機関でフルタイム勤務をした人は、男女とも理由を問わず時短勤務への変更を要求することができるという法律があります。
 
2015年のドイツ統計によると、6歳未満の子供がいる20歳から49歳までの女性の時短勤務の割合は73.1%。6歳以上の子供がいる女性の時短勤務の割合は65.6%です。
 
子供が小学校に上がり、成長していく過程で、自身の仕事の状況、家庭の状況は変化していきます。時短勤務制度があることで、女性は育児をとるか仕事をとるかの選択をしなくてもいいのです。自分自身が雇用主と話合いをして、最良の選択をしていきます。
 

50代:趣味、体調維持、介護、家事のために時短勤務制度を使って仕事を続ける

子供が独立する50代。時短勤務を選ぶ人の理由は様々です。
 
・子供も大きくなった。これからはもう少し自分のための時間が欲しい。
・年老いた両親の介護をしたい。
・子供も独立して、パートナーも十分稼ぎがある。金銭的に自分がフルタイムで働く必要は無く、家事、趣味、体調維持のためにゆとりを持って仕事をしたい。
 
時短勤務を選択する上で、理由が問われることはありません。
 

時短勤務制度は、生活の幅を広げる制度

自分だけの一度きりの人生。
 
仕事を続けながら家庭も持ちたい。やらなくてはいけないこともあるが、いろいろ挑戦したいというのが女性の本音です。これを可能にする制度が、ドイツの「時短勤務制度」です。
 
女性の活躍推進、働き方改革が進められる日本でも、多彩な時短勤務制度がひとつのヒントになるかもしれません。
 
文:クリューガー量子(ハイデルベルク市公認ガイド)
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