クラシック音楽家にとって、日本で言う芸能事務所のような役割を果たしてくれるエージェントとのコラボレーションはとても大きな力になります。
プロの音楽家として仕事を得るために、様々なエージェントの種類や特色を知り、自分に合った一社を見つけることが出来れば、キャリアへの道はぐんと近づきます。
ここではイタリアに多数存在する、クラシック音楽家のためのエージェントについてガイドしていきます。
▼マントヴァの劇場外観
1. エージェントの種類
イタリアには大小様々なエージェントが全国各地に点在しています。バロック音楽を主に扱うエージェント、現代音楽に強いエージェント、オペラ歌手専門、コンサートパフォーマンス専門など、それぞれの強みとなるジャンルが異なります。各エージェントによって扱う音楽家の種類や傾向が違うので、コンタクトを取る前によくリサーチしておくことが大切です。
また、各劇場との繋がりの強さも違います。大きな劇場に強いエージェント、小さな劇場に多数強いコネクションのあるエージェント、イタリアだけでなくヨーロッパ諸国の仕事に強いエージェントなど、様々です。
2.エージェントの見つけ方
エージェントを探す際、やはり一番スムーズに話が進むのは知人、友人、身内、恩師からの紹介です。ディナーの席でエージェントと一緒になり、話をしているうちに「今度歌を聞かせて」と言われるケースもあります。
定期的にオーディションを開催しているところもありますが、受験するのに料金が発生する場合は注意が必要です。若い才能を見出すためではなく、資金集めのためのイベントに過ぎない場合が多々あります。
地道で現実的な方法として、自分の舞台にエージェントを招くという手段があります。きちんと機能しているエージェントは、新しい才能を発掘すべく各地の劇場に足を運んでいます。事前にエージェントを探している旨を伝え、公演に招待し、本番後に会えばうまく話が進むことがあります。
▼マントヴァの劇場 舞台からの眺め
3.仕事の仲介
大きな劇場で活躍している音楽家でも、仕事に結びつく良いエージェントに巡り合うまでに何社も渡り歩く人もいます。
音楽家のプロフィール内でエージェント欄に何社もの名前が連なっていて、そのうち機能しているのは1社だけというパターンも珍しくはありません。
エージェントは、劇場やフェスティバルへ音楽家を派遣したり、オーディションの仲介を行います。そうして所属音楽家が得た仕事のギャラの一部を仲介料として受け取ります。
プロモーションのためと称して音楽家から直接多額の手数料などを取ろうとするエージェントには注意が必要です。夢の実現のための自己投資と信じて、無駄な出費をすることは避けましょう。
4.まとめ
多数のエージェントが存在する中、きちんと機能しているのはほんの一部分なのが現状です。しっかり下調べをして、信用できる1社を見つけて、キャリアアップを目指しましょう。
文:金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)
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