クラシック音楽の本場ドイツに、現地での就職も視野に入れて音楽留学をする場合、どのような仕事の選択肢があるのかは気になるところでしょう。
ドイツ語圏にある劇場はほぼ全てが国公立なので、そのシステムや役職の種類も、大まかなラインでは各劇場で同じです。
この記事では、ドイツ語圏で音楽家が就くことのできる役職とその業務内容についてご紹介します。
1.GMD
GMD(ドイツ語読みでゲー・エム・デー)とは、Generalmusikdirektor(ゲネラル・ムズィーク・ディレクトール)の略称です。
日本語に訳すと音楽監督、音楽総監督といったところで、ドイツ語圏にある劇場における音楽関連の役職の中で、最も高い地位にある役職です。
主な業務はオペラやシンフォニー・コンサートの企画、運営、そして実際の公演での指揮です。
2.オーパーン・ディレクトール(Operndirektor)
オーパーン・ディレクトールはドイツ語で「オペラ監督」という意味になります。劇場の演目内で、特にオペラの企画・公演に従事する役職です。音楽学や音楽史の専門家など、自身では演奏に携わらないタイプの音楽家が就くことの多い役職です。
小さな劇場ではオーパーン・ディレクトールがいないケースも多々あります。その場合、GMDがオーパーン・ディレクトールとしての役割も果たします。
3. シュトゥディーエン・ライター/ゾロ・レペティトール(Studienleiter / Solorepetitor)
シュトゥディーエン・ライターとゾロ・レペティトールは、ほぼ同じ役職だと思っていいでしょう。指揮者兼ピアノ伴奏者が担う役職です。
主な業務はオペラ歌手たちの個別指導と、リハーサルでのピアノ伴奏、指揮の代行などです。音楽関連の企画・運営にもGMDと共に携わります。
その他の指揮者が就くポジションとは異なり、ピアノ演奏の技術、特に新曲能力(下準備なしで新しい楽譜をその場で弾ける能力)が重要になります。
4.カペッル・マイスター(Kapellmeister)
指揮者が担う役職です。若手の指揮者はまずカペッル・マイスターとしてキャリアをスタートさせます。GMDの下で経験を積みながら働く、といったスタンスで、若者が低いお給料で契約するケースも多くみられます。
5.コレペティトール(Korrepetitor)
稽古やリハーサルでピアノ伴奏をしたり、シュトゥディーエン・ライターの下請け的な仕事をします。ソロ歌手たちはシュトゥディーエン・ライターの指導で最初の譜読みをし、音楽的な方向性を確認した後、コレペティトールの伴奏で練習を重ねます。
6.合唱指導(Chordirektor)
合唱の指導が主な業務内容です。劇場によっては、小さなプロジェクトの指揮を任されることもある役職です。ヨーロッパの音楽院には合唱指導専攻のコースもあるので、合唱指導を専門的に学んだ人が就きます。ピアノ伴奏の腕も確かでなくてはいけません。
7.ソロ歌手
1シーズンに4つ前後の役を任されます。フリーランス歌手とは異なり、劇場側に求められれば主役・脇役のどちらもこなします。
ドイツ語圏の劇場では、通常長期雇用のソロ歌手は1年もしくは2年ごとに契約更新になります。上層部が入れ替わるタイミングで満期終了となるケースが多いため、劇場総監督やGMDの任期に雇用機会が大きく左右されます。
8.合唱、オーケストラ
ドイツ語圏の劇場には通常、常設の合唱とオーケストラがあります。主要メンバーは終身雇用なため、上層部の入れ替わりなども影響しない、安定したポジションです。
一般的に、オーケストラメンバーの方が合唱メンバーより忙しい傾向にあります。その分お給料にも若干の差があります。
▼フランクフルトのオペラ座内部
ドイツ語の求人サイトなどをチェックする際には、上記の役職名がトップに来ていることが多いので、やりたい仕事がある方は是非、役職名を覚えておきましょう。
オーケストラメンバーはドイツ語があまり出来なくても、演奏技術が確かであれば採用されます。その他の役職では流暢なドイツ語は必須項目です。しっかり準備をしてから願書を送りましょう。