「苦手つぶし」よりも「得意伸ばし」を ~ キャッチポール若菜(映像翻訳者・通訳)

昔から言われている格言やことわざの中に、ここ10年くらいの間で、自分が心から「本当にその通りだ」と思えるようになったものがいくつかある。

特に自分がこれまでに好きだったことや携わってきた仕事などを考えると、「好きこそものの上手なれ」→だから突き詰めよう、というのが、現代の教育上、もっと広められていい考え方だと思えてならない。

私は、日英翻訳と英語を教えることを生業とし、自営業を営んでいるのだが、翻訳の中でも映像翻訳をやりたい、と思ったとき、その決心がかなり遅かったにも関わらず、周りはまったく驚かなかった。むしろ何でもっと早くそうしようと思わなかったのかというのが周囲の反応だった。
 

自分が好きな事は周りも知っている

実は自分以外はみんなが知っていた事実だったようだが、私は言葉が好きだった。国語はもちろん、外国語に対する興味も幼い頃から人一倍。あの自分がわからない文字は何が書いてあるんだろう。どうやって書くんだろう…など、5~6歳くらいから興味津々で、バイオリンを習っていたついでにドイツ語を、チェルノブイリの子供達を支えるボランティア活動に参加した際にはロシア語を、ほかにも何かのイベントの時にはスペイン語などを独学した時期もあった。
 
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英語は、小学生の頃好きだった、いがらしゆみこの「キャンディ・キャンディ」で英語が使われていたこと(物語の舞台がアメリカとイギリスだった)、アメリカのドラマや映画がやはり小学生くらいから好きだったこと、たまたま中学校で必須科目だったことなど、様々なことがきっかけで、実際にアメリカに行ってみたいと思うまでになり、高校の途中で渡米した。
 
アメリカの大学では、音楽専攻だったが、卒業のための単位の足しにもならない言語学を取ったり、駐在の日本人家庭向けに英語の個人レッスンを行ったり、英語という言語にはまっていた。
 

そんなの何になるの?というものでも・・・

更に、私は大のテレビ好きである。隙間時間を使ってでもとにかく何かしら観ている。友人に勧められて「Breaking Bad」を見たことがあるが、2週間ほどで全5シーズン見終わってしまったのに気付いたときには自分でもさすがに驚いた。今年アメリカに行った際にも行きの飛行機の中で、たまたまあった「半沢直樹」全エピソードを制覇。動画配信サービスが盛り上がりを見せているこの時代で、現在私がアクセスできるサービスはHulu、Netflix、U-Next、そしてもうすぐAmazon…と、こう書いてみるだけでもどうしてそんなに必要なのだろう?と頭をひねりたくなるくらいだ。
 
この英語とテレビ好きの組み合わせのおかげで、英語は長時間机に座って勉強した覚えもないのにリスニングは、特にアメリカ英語なら全く困らないし、会話表現も日常英語からビジネス英語まで、いろいろと頭に入っている。そして「そんな表現知っていて何になるの?」というようなジョークやセクシーなスラングも、映像翻訳ならどこかで役に立てることができるという嬉しい職を手にしたわけだ。
 

得意な科目は放っておかれる現実

さて逆に、私が「長時間机に座って勉強した覚え」があるのは算数・数学である。幼児期にひらがなやカタカナを覚えたように数字を読み書きしたのが最初だったが、文字と違ってそこに数の概念が存在することを意識せず覚えるだけだったためか、数と計算はどうしてもできなかった。
 
学校のテストでも点が悪かったため、学校でも苦手つぶしの補習、家でも予習・復習の時間を取らされていたと思う。(不思議なことに証明問題だけは得意だった。どうも使う頭が違うらしい。)
 
数学ばっかり一体、何時間勉強したんだろうかと思うが、はっきり言って全く身になっていないというのが、現在振り返っての感想だ。今、自分が子供を持ってみて、改めて思うが、日本の教育は苦手つぶしに注力していることがよくわかる。書店で売っている子供用のドリルなどを見ても、「好きな科目をもっとできるようにしよう」などと謳っているものはなく、どちらかと言えば「(わからないもの・できないものを)できるようになろう」系のものが多い。
 
学校では、ある教科が得意だったからと言って、更に難しいものが渡されるわけではなく、「これだけできれば合格!」そしてそこで待機というのが現実だ。
 

10,000時間の法則

 
さて、マルコム・グラドウェル氏が提唱した法則で、「10,000時間の法則」というのがある。世界的に有名なスポーツ選手や偉業を成した企業家など、何かの分野で天才と呼ばれるようになる人達は、それに10,000時間費やしてきているというものだ。(出典:『The Story of Success』(Malcolm Gladwell)『天才! 成功する人々の法則』マルコム・グラッドウェル著、勝間 和代訳

10,000時間も費やすのに、好きな事ほどぴったりなものがあるだろうか。好きな事ならばそれだけの時間を費やすのが苦にならないばかりか、それだけ費やしたことにも気づかないくらい打ち込めるだろう。
 

「得意伸ばし」に力を入れよう

もし、得意なものがあったなら、そこを徹底的にやらせるべきだと私は思う。一見、「そんなの好きでどうするの?」ということも突き詰めれば何に化けるかわからない。やはりテレビ好きで、テレビ番組専門のコラムニストとなり、本まで出る人もいるのだ。

「好きこそものの上手なれ」、だからとことんまで伸ばす、ということが、これからの時代には必要なのではないかと思う。「そんなの好きでどうするの?」という事でも日本一、いや世界一のレベルなら、そのしっかりした礎に建てられるものは大きいはずだ。
 
文:キャッチポール若菜(映像翻訳者・通訳)
 
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