京都へ
今月に入りすぐ、京都へ早朝からの出張を強行してきた。フリーランスになる際に、翻訳関連のイベントにはできるだけ足を運ぼうと思っていたのだが、今回のように新幹線に乗ってまで出かけていくのは初めてだった。
会社勤めの時には出張とは会社が決めていくもので、特別な感覚はなかったが、フリーランスの出張となると、旅程や宿泊先、それにかかる費用や、イベントへの参加費そのものも自分で工面し、計画を立てて行くことになる。
そうなると「個人旅行と何が違うの?」と思われるかもしれないが、目的が観光ではなく、今後の個人事業の成長のためのカンファレンス参加ということで、完全なる「出張」なのである。
外国人翻訳者が多く集まるカンファレンス
さて、今回参加したのは、日本翻訳者協会が主催する「プロジェクト京都2015」というカンファレンスで、朝から1時間半~2時間ほどのレクチャーが4回あり、1回に4つのレクチャーの中から自分の興味に合ったものを選んで出ることができる。
レクチャーは日本語で行われたものも、英語で行われたものもあり、翻訳分野もメディカル、法律、特許、文芸、エンターテイメントなど、幅広くバランスよく網羅されていた。
夜には協会の30周年記念祝賀会があり、そこで、名刺交換など、同業者の交流ができる1日がかりのイベントであった。
これまでにも別に翻訳者が集まるようなイベントに参加したことがあったが、今回際立って違ったところが、欧米人の翻訳者の多さだった。日本語→外国語の翻訳者のため、もちろん日本語も堪能、しかも開催場所が関西だったため、関西弁を話す外国人も多く、関東出身の自分にとっては、新鮮に感じられた。
ただ、それよりももっと新鮮で、自分にとって大きな刺激となったのが、彼ら個人個人のビジネスパーソンとしての意識の高さである。
翻訳会社を運営している人も社内翻訳者もフリーランス翻訳者も、どの人にも「自分がその事業の顔である」という姿勢があった。
そして事業拡大のためには、とにかく市場を探る、聞く、聞く、聞く!
「自分はこういう分野で翻訳をしているけど、こちらの分野にも参入したい」
「どうやって参入したのか」
「現在どういうツールを使っているのか」
「どんなことに気をつけているのか」
「こうしようと思っているがどう思うか」
などなど・・・。
彼らはまさに、本サイト「留学プレス」で、キャリアコンサルタントの本橋氏が述べていたような「言葉ばかりでなく、生活習慣、価値観、常識が全く違う海外に飛び込み、思い通りにならない、ままならない」経験を積んできた人達で、人が一番成長できる環境に身を置いてきた人達なのだ。
実際に言葉を交わした全員から、何とも言えない迫力が感じられ、しかも一人ひとりが印象に残っている。
かつて自分も初めてアメリカに行った時は、「このチャンスは今しかないかもしれない」という思いが常にあり、その分ハングリー精神にあふれていたように思う。
そのアメリカも慣れてきてしまったため、帰国し、今度は逆カルチャーショックで学んだことも多い。今では帰国して既に長く、あまりに居心地が良くなってしまっていて、やや保守的になっている気さえする。
そこは自分への課題として改善策を考えたいところだ。
フリーランスの出張を終えて
さて、イベントは朝9時から1日中、ほかの翻訳者と出会い、業界のことを深く学んだり、仕事の仕方やアプローチを共有しあったりし、得るものばかりの濃い1日となった。
京都という場所だったことも良かったのかもしれない。いつもの仕事と子育てから100%離れなければ行けない場所だったので、頭がいつもの生活から完全に切り替わっていたと思う。
国内だったが、生活習慣や常識が違い、いつもの様には行かない場所に行ったのである。
変化を敏感に感じ取ることができたのは、今現在、居心地の良い環境にどっぷり浸かっているからだということで、それはそれで感謝なのだが、やはり更なる成長のためには環境をガラリと変えてみるのは一つの手だなと考える。
次の自分で選ぶ出張先は、これまでに行ったことのない場所にしたい。
文:キャッチポール若菜(映像翻訳者・通訳)
この執筆者の記事一覧
留学プレスの最新記事をお届けします
《More from 留学プレス》
■ 「苦手つぶし」よりも「得意伸ばし」を
■ 欧米型・海外リゾートでバカンスしながらプチ留学
■ StudyとLearnの違いって?英語習得の法則とフィリピン留学
■ 新卒の海外就職の現実とこれからの可能性
■ あなたが海外生活をすべきたったひとつの理由