ヨーロッパには数多くの劇場付属のオペラ研修所があります。各都市の劇場が、若手歌手育成のためのプログラムとして運営しているこれらのオペラ研修所は、プロのオペラ歌手への近道であり、豊富な経験を積むことのできる貴重なチャンスとなっています。この記事では、そんなオペラ研修所の概要と、応募に際しての注意事項などをご紹介します。
▼リエージュ歌劇場内部
オペラ研修所とは
若手歌手の登竜門となっているオペラ研修所は、主にドイツ語圏にある中規模以上の劇場やオペラ座で古くから運営されてきました。近年ではイタリアなどのヨーロッパ周辺諸国でもこのシステムを取り入れる劇場が増えてきています。
ドイツ語でOpernstudio、イタリア語でOpera Studio、フランス語でAtelier Lyriqueと呼ばれます。
高い倍率のオーディションに合格した歌手たちは、1年もしくは2年の研修プログラムに参加します。多くの場合、研修期間中いっぱいをカバーする奨学金が付与されます。研修内容として各種レッスンはもちろんのこと、所属する劇場の本公演にて端役を担ったり、メイン・キャストのカバーとして主役級のパートも一緒に勉強させてもらうことができます。
ヨーロッパで有名な研修所
・バイエルン州立劇場
ドイツには数多くのオペラ研修所がありますが、最も有名でレベルが高いのはミュンヘンにあるバイエルン州立劇場付属のオペラ研修所でしょう。この研修所を卒業した歌手の多くが、華々しいキャリアを築いています。
※参考リンク
https://www.staatsoper.de/en/operastudio.html
・ロイヤル・オペラ・ハウス
ロンドンにあるロイヤル・オペラ・ハウスの若手歌手育成プログラム、Jette Parker Young Artists Programmeも大変有名です。日本人ソプラノの中村恵理さんが研修中に、アンナ・ネトレプコの代役としてロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立ち、一気にスターダムに駆け上がったことから、日本でもその名が知られるようになりました。
応募要項にも明記してある通り、このプログラムは学生を対象としたものではなく、プロとしての資質を既に備えている若手歌手の更なる飛躍を目的としています。世界中からレベルの高い歌手たちがオーディションに集まります。
※参考リンク
http://www.roh.org.uk/about/jette-parker-young-artists-programme
その他にもイタリアのミラノ・スカラ座や、パリのナショナル・オペラ付属のオペラ研修所も知名度が高く、毎年数多くの応募者がオーディションに挑んでいます。
ひとつ注意すべきなのは、「オペラ研修所」と名前がついているにも関わらず、生徒から授業料をとるスタイルの、いわゆる普通の「学校」形式のものも存在するという点です。募集要項をよく読み、研修生の待遇をしっかりチェックしましょう。
応募書類を揃えよう
各研修所が発表している募集要項に沿って、必要書類を準備する必要があります。オペラ研修所への応募の場合、推薦状が2枚必要になるケースが多いので、師事している先生やお世話になったことのある指揮者などに、時間に余裕をもってお願いしておきましょう。
推薦状は時としてかなり重要なポイントになります。受けようとしている研修所にパイプのある先生にお願いできるかどうかは、大きなポイントになります。
オペラ研修所には毎年若手歌手からの応募が殺到します。そのため、書類で落とされるケースも非常に多く、オーディションまで漕ぎつけられればそれだけで非常に大きなチャンスになります。
規模の小さい劇場付属のオペラ研修所は、地元の音楽院との繋がりがとても強く、ローカルな歌手を優先的に採用する傾向があります。遠方からの応募は不利です。それでも、年度によって求められている声種や歌手のタイプが異なるため、運次第でチャンスはあります。書類だけで落とされても気落ちしない精神力が必要になります。
▼ウィーン歌劇場内部
オペラ歌手としてのキャリアを目指すなら、オペラ研修所が一番の近道だと言えるでしょう。レパートリーを膨らませ、人脈を広げ、経験を積むのに最適な環境が整えられています。それ故に非常に狭き門となっているのも事実ですが、ヨーロッパでの留学生活中に出来る貴重なチャレンジとして、検討してみてはいかがでしょうか。