オペラ歌手のオーディション・流れと審査のポイント【ドイツ編】~金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)

オペラの本場と言うと主にイタリア、ドイツ、フランスの三か国が有名です。本場でオペラの舞台に乗りたいと願う若手歌手のために、オペラ歌手のオーディションの流れと審査のポイントなどについて解説します。

この記事はドイツ編のご紹介です。

▼ベルリン、コミシェ・オーパー内部

1.オーディションの流れ

■受付
受付は基本的に指定された時間の一時間前を目安に済ませるとちょうど良い時間配分になります。

大抵の場合は会場入り口の監守室に応募者のリストが渡されているので、オーディションの約束があることと自分の名前とを伝えて、指示を仰ぎます。

■発声
受付を済ませると、お手洗いの場所と発声のために用意されている小部屋の場所を教えてもらえます。

「本番までまだ時間があるから発声はもう少し後で」とは考えない方が無難です。大抵のオーディションでは小部屋の取り合いになるので、部屋が空いているうちに使っておくべきです。

ドイツに限らず、周りに気を遣わず長時間小部屋を占領する歌手というのはどこにでもいます。「10分交代と言われた」と主張しても「あと5分だけ」などと言って引き伸ばされ、充分に発声が出来ないまま本番に向かうことになってしまう候補者もいます。

歌い手の世界で「慎ましさ」は役に立ちません。しっかりと自分の権利を主張することが大切になってきます。

■伴奏合わせ
伴奏合わせはとても短い時間しか与えられないのが普通です。候補者が多い場合だと、しっかり合わせても本番では全く違うテンポで弾かれてしまうこともあります。伴奏の良し悪しに左右されずに歌いきる精神力が必要です。

■本番
多くの場合、一曲目は自分の意思で選ぶことができます。緊張した状態でも確実に歌える曲を選びましょう。

2.審査のポイント

ドイツでオーディションを受ける場合、ドイツ語が流暢であることが大きなアドバンテージになります。受け答えはハッキリと大きな声ですることが大切です。

ドイツでは、歌唱力以上に役に合ったルックスを求められるケースが大半です。自分の容姿と役柄を考慮して選曲をしましょう。

持ち声、歌唱技術はもちろんですが、ドイツの劇場は小技を利かせられる歌手を好みます。これでもかというくらい強弱で遊び、ピアニッシモでサプライズを演出し、言葉捌きで演出を加えるなどして詳細まで料理する必要があります。

3.服装、注意点

ルックスも審査される、というのは本番だけの話ではありません。オーディション会場に近づく時点から審査は始まっていると思いましょう。

例えば音楽監督が出入り口でタバコを吸っているかもしれないし、演出家が立ち話をしている脇を通り過ぎることになるかもしれません。会場入りの時点で身なりを整え、背筋を伸ばし、女性はヒールの高い靴をキレイに履きこなし、劇場関係者だと思われる人には片っ端から挨拶をしながら受付に進むようにしましょう。

▼ヴィースバーデン、マルクト教会でのコンサート前の様子

ドイツではオペラは「総合芸術」と見なされています。音楽だけではなく、演技力、ルックス、全て含めて考慮され、舞台が作られます。

そのため、充分な歌唱技術を身につけただけでは足りない部分が出てきます。様々な需要に応える柔軟性が必要とされます。

ルックスに関しては努力だけでは解決できない部分もありますが、「できる努力はすべてやる」という姿勢がチャンスに繋がります。

文:金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)
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