イギリスの英語学校から見た日本の英語教育への懸念と提言~星野達彦(国際教育事業コンサルタント)

小学校での英語授業教科化と3年時からの授業開始、中学での英語を英語で教える授業の開始、入試英語のスピーキングを含む4技能試験化など、今後5年間で日本の英語教育は大きく変わろうとしています。そこでのキーパーソンは、英語を教える教師たちであることは間違いありません。筆者は、現状を把握するために、現役の英語教師10名近くにヒヤリングしました。その結果は、これだけ大きな改革を推進するためのキーパーソンの育成プランは、正直大変心もとないものになっているのが現状だということがわかりました。
 

英語教育の本場の英国の英語教師育成のための学校を視察してきました

日本の英語教育に対して問題意識がある筆者は、先月、英国政府機関Visit UKと英国英語学校協会English UKの招待による英国教育機関視察ツアーに参加した際、England南部の都市BournemouthにあるITTCという非英語ネイティブ向けのコースも充実している英語教師養成学校を視察してきました。今回はITTCとその運営元のBeet英語学校の日本人スタッフの花木さんから紙上インタビューという形で、学校の様子やグローバルに通用する英語教師向けの資格やテストなどを紹介します。
 
▼英国BournemouthにあるITTC
ボーンマスの英語学校ITTC
 
ボーンマスの英語学校ITTC
 

まず花木さんのことを教えてください

英語を上達させたいという単純な目的で、大学卒業後に13年前に渡英。イギリス南西部ボーンマスで1年間の英語を学んだのちにカレッジを経て、ボーンマス大学に進学。その後2009年にBEET Language Centreに就職しました。現在フルタイムで勤務しています。

▼Beet英語学校とITTCの日本人スタッフ花木さん
Beet英語学校とITTCの日本人スタッフ花木さん
 

英語教師養成学校ITTCについて教えてください

1984年設立のITTC(International Teaching Training Centre)がBEET Language Centreの一部となったのは2001年の事で、これまでに6000名以上の卒業生を輩出してきています。CELTA, Delta, CTESOL, Refresher, Refresher CLIL, ICELT, TKT といったバラエティーに富んだコースを提供しています。
 
日本の英語教師の方々にお薦めのコースは、国際的に認められた資格が取れるCELTA, Delta, TKT試験向けコースなどです。またITTCから独自に授与される資格であれば、実践的なスキルを学びながら自身の英語力の向上を図るRefresherコース、英語で授業を行わなければならない方に適しているCLILコースとなります。
 

CELTAやDeltaとはどんな資格ですか?またTESOLとどのような違いがありますか?

CELTADeltaは英国ケンブリッジ大学認定の国際英語教師資格です。ケンブリッジ大学ESOLから認定を受けた学校、センターのみが授業を運営する事が認められています。Certificate in TESOLの資格は提供しているそれぞれのセンターが発行する資格になることが大きな違いになります。
 
ITTCでのTESOLコースはCELTAと同様の授業を受け、授業のプランニング、授業参観、実習、レポート課題が含まれています。ITTCのTESOLコースはケンブリッジ大学ESOL認定校だからこそできる特別なコースだと思います。他のCELTAコースとの大きな違いは、コース最後のテストの有無になります。また、実習で教えられるクラスレベルもCELTAであれば全レベル、ITTCでのTESOLコースでは低レベルのクラスのみの実習となります。TESOLコースは提供するそれぞれの学校が違った授業を提供している為、受けられる場合は下調べをして、自分の目標にあったものを提供する学校を選択される事をお薦めいたします。
 
CELTAやDeltaコースは入学条件に高い英語力を求められますが、TESOLコースは入学に必要な英語レベルが下げられている場合が多く、比較的参加し易いようにアレンジされていると思います。さらに高い質の英語指導を求められている方や、世界中で活用できる資格取得を目指される方にはCELTAやDelta資格取得をお薦めいたします。
 
Deltaは教授法コースのDiploma資格となり、イギリス国内ではMaster degreeに値する資格となります。CELTAの資格が必須という訳ではありませんが、CELTAを取得してからDeltaへ挑戦される事が望ましく、最低2年(1200時間)の実務経験が必要となります。更なるキャリアアップを目指される方や、英語教授での最高の資格取得を目指される方に適しています。
 

TKTとCLILについて教えてください

TKTとはKnowledge About Language、英語教師に必要な知識を測るテストのことです。例えば英語教授法、教育資源の活用法、クラスマネージメントなどの知識について問われるテストということになります。
 
CLIL(内容言語統合型学習)とは学習者の母語(第一言語)ではない言語を介してカリキュラム教科を教えるアプローチのことです。例えば日本人に生物や歴史などの授業を英語で教えるアプローチということになります。2つを併せた試験がTKT:CLILテストでCLILを理解するためのテストとなります。
 

日本の英語教育の現状と課題に関してどのようにお考えですか?

英語を英語で教える授業を行う事が、英語教師に強く求められて来ていますが、それができる英語教師の方は少ないと思います。担任や部活顧問等を掛け持ち、お休みも無いような状況では負担がとても大きく、英語教師の指導力や英語力の強化に、時間が費やせない所があります。指導者の為の留学制度やトレーニングの機会が増える事もとても大事な事だと思います。
 

貴校ではどのようなことが日本の英語教師に対してできますか?

ITTCの経験豊かな指導員は、日本人に見られる特有な癖や問題を理解し指導をします。レベルの違う生徒が集まるクラスの運営方法、クラス内でのアクティビティのアイデアや進め方、授業プランの作成等、それぞれの英語力向上も同時に図ります。色々なコースがありますが、2週間から参加が可能。こちらから日本へ指導員を派遣し、トレーニングする事も可能です。
 
▼ITTCの様子
ボーンマスの英語学校ITTC3
  

日本人の英語教師で貴校のコースに参加された方はおられますか?

幼児を教えていらっしゃる先生から高校の英語教師の方々がいらっしゃいました。ある中学生の英語教師の方は1年間のお休みを取って、BEET英語学校でのコースを組み合わせての参加でした。幼稚園の教員の方も、クラスアクティビティや運営の方法などを学べる短期のRefresherコースを選択、短期で教育委員会から派遣された高校の教師の方もいらっしゃいました。クラス内で沢山の課題を網羅しなければならないけれども、そのまま授業に使えるアイデア等が得られた事は新鮮との事でした。どの方も自身の英語力の向上が同時に図れた事に満足、更には自身の仕事に対してさらに自信が持てるようになったとの感想を頂きました。
 

最後に日本の英語教師に対してアドバイスをください

教師留学は他の国からの教師の方々との情報交換も可能にします。それぞれの国によって、指導スタイルが違いますが、違う角度から得られるアイデアやクラス運営はとても新鮮で興味深いものです。留学すると、このような環境に身を置いてトレーニングを行う事が可能になり、留学を通して得られる経験が自信に繋がり、帰国後の授業にも必ず反映されるはずです。急速に質の高い授業が求められる今だからこそ、この機会に是非教師留学に挑戦なさって下さい。
 
このように英語教師向けのグローバルに通用する資格が存在し、それを短期で勉強することができる学校が英国にはたくさんある。日本の教師や教師を目指す学生たちは、是非このような教育機関で世界の学生や英語教師と一緒に英語の実践的な教授法を学んで、日本人の英語力の向上により精力的に取り組んでほしい。
 
文:星野達彦(国際教育事業コンサルタント)
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ボーンマスの英語学校ITTC3
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