「外国語をマスターする秘訣は『興味』のカギを開けること」スウェーデン出身経営者が語る多言語習得の魅力とヒント

「英語だっておぼつかないのに、多言語なんてムリムリ。」

そんな声が聞こえてくることがありますが「彼」に言わせると多言語習得で大事なのはたった2つのカギなんだそう。

一つは興味のカギ。
そしてもう一つは経験のカギです。

この「彼」の正体は、世界50都市以上で語学学校を展開するイー・エフ・エデュケーション・ファースト語学学校 代表取締役のヤコブ・トーレン(Jacob Toren)さん

3言語以上を使う人の割合が高いヨーロッパや、外国語学習熱が高いアジア各国のトレンドに詳しく、スウェーデン人であるご自身ももちろんマルチリンガルです。

多言語を効率よく習得するためのヒント、なぜ外国語を学ぶのか、AI翻訳ツールとの付き合い方などをお聞きしました。

ヤコブさんに加え、EF Education First 日本支社長のリーナス・ジョンソンさん、同社の伊丹麻衣子さんにも飛び入り参加してもらって、途中からは座談会に!

他国と日本は文化も教育事情も違うから一概に比較はできないけど、いろんな言葉が話せたら楽しいし、可能性が何倍にも膨らむのではないかな…

「外国語を楽しみたい」
「お子さんにも外国語を自在に操って世界を広げてほしい」

そんな想いを持っている方はぜひ読んでいってください!

人生を変えるのは、外に出て練習するとき

ーー日本では英語教育には熱心ですが、第二外国語まで真剣に学ぶ人はまだまだ多くありません。海外の語学学校はそこに行くだけでいろんな言語が飛び交う環境だと思いますが、EFでは多言語を学ぶ人も多いのですか?

ヤコブさん:はい。とても多いですよ。多言語を学ぶためのプログラムも充実していますし、様々な国の学生が参加しています。

いろんな言語を学ぶことは、世界を開くことなんです。EFではこれを「Live the Language(言語を生きる)」とよく言ってます。

ーー「Live the Language(言語を生きる)」?

そうです。学校の授業で言語を学ぶことはできます。でも、それだけだったらあなたの人生に大きな影響を与えることはないでしょう?

もしあなたが外の世界に出て、違うコトバで生活し、生涯のうちに第二言語だけでなく、第三言語でも生活してみたら、世界をもっとたくさん見ることができます。友情も生まれます。

言語を学ぶと、人を全く違った方法で理解することができる。それがポイントなんです。

ーー「Live “with” the Language(言語とともに生きる)」とも違うのですね。

ヤコブさん:そう!違います。「Live the Language(言語を生きる)」です。言語はボキャブラリーや文法以上のものです。話し方であり、ボディランゲージであり、方言です。

ーーなるほど…
実は、私スペイン語を細々と習っていて、先生に「文法じゃなくて会話をやりたい」って言ってこっぴどく叱られたことがあるんです。
「文法はその国の文化そのものだよ。スペイン語の文法を知ることで、スペイン人の習慣や考え方を知ることにつながるんだ。」って。ヤコブさんはこの意見、どう思いますか?

ヤコブさん:文法は大切です。言語の重要な側面のひとつだと思います。

でも、重要なのはそれだけではなく、世界を経験することに大きな価値があると思っています。外に出て新しい言語を学ぶのは怖いことだからです。それは、いっとき自信を捨てることでもありますよね。

でも、コミュニケーションを取るのが怖くて文法だけを勉強しているのなら、それはクローゼットの中に閉じこもっていたってできることです

(クローゼットにいたって)人生は変わらない。人生を変えるのは、外に出て練習するときです。だから、文法は確かに大事だけど、それがすべてではないと思います。

I agree!

うん、うん。

スペイン語の先生も納得してくれそう!

その国の言葉を学ぶ姿勢=リスペクト

ーーEFの社風はとても多様ですよね。スタッフの多くの方はマルチリンガルだと思います。EFのようなグローバル企業で働く上で、マルチリンガルであることの利点にはどんなことがありますか?

ヤコブさん:主に2つあります。

まず1つには、EFでは他の言語を学ぶ努力をすれば、より評価されます。いくら英語が世界で一番通用する言語だからと言っても、どの国に行っても英語だけ話していればそれでいいということはありません。

たとえば、リーナスは日本に住んでいて、日本語を上手に話します。周りの人はそのことを称賛し評価します。だってその国の言葉を学ぼうとすることは、リスペクトの表れでしょう?

ーーたしかに!もうひとつは何ですか?

ヤコブさん:2点目は人と人との間に生まれる絆です。

言語は、異なる文化と価値観を反映していると思います。言葉を学ばなければ、違いを完全に理解することはできません。そしてその違いによって、人々の間に絆が生まれるんです。

EFでは同僚同士でそういうことが起きていますが、それは世界で起きていることと同じです。

世界は今、人々の間にもっと多くの理解を必要としています。

言語は誰か1人の成功や1人の欲求を満たすためだけでなく、実は国にとっても重要なことです。日本のような国が世界に出ていって、日本の美しいところを説明することは重要だと思うんです。

興味の鍵を開けて能力を解き放つ

ーーヨーロッパは多言語環境を持っている国が多いと思いますが、中国や韓国をはじめアジア各国でも外国語への熱がとても高まっています。アジア出身の学生が多言語を学ぶ傾向は見られますか?

ヤコブさん:そうですね。アジアの親たちの間では、子どもたちに言語をどんどん学ばせたいという傾向が見られます。なぜならそれが将来、競争優位を生み出すことを知っているからです。

ーー子どもたちですか。

ヤコブさん:多言語に関して言えば、早ければ早いほどいいからですね。私もさまざまな国で生活してきたので、私の子供たちもさまざまな国で育ちました。子供が習得するスピードといったら…驚くべきことです(笑)

子どもたちを見ていると、どれだけ多くの言語を取り入れることができるんだろうか、それも同時に…!と、驚愕します。

だからつい、大人になってからでは遅すぎると思ってしまいます。でももちろん、そんなことはないです。

ーーそんなことはない?

ヤコブさん:ないです!

私たちは上海に住んでいたことがあったんですが、そのとき私の母は「私が知らない言葉を孫にしゃべらせるわけにはいかない」と。母はすでにドイツ語、スペイン語、スウェーデン語を話せるのですが、それに加えて中国語も勉強し始めたんです。

すごい!

結果、彼女は今、中国語がとても上手です。しかも彼女はまだ勉強中なんですよ。

ーーすばらしいお母さまですね!ほんとにすごい。

ヤコブさん:ポイントは、彼女は必要に迫られて学んだんじゃないということ。重要なのは、学ぶことへの興味なんです。

“If you unlock your interest, then you unlock your ability.“

興味を解き放てば、能力も解き放たれるのだと思います。

すべての人がその気になれば2カ国語、3カ国語を学ぶことができます。でもそれは自分の意志で知識を解き放てば、という条件付きです。誰かに強制されたら学べません。

ひとつの言語を学んだ経験が次の言語を学びやすくする

ーーお母さまのお話にもありましたが、ある言語を習得すると、その言語を習得する方法をすでに知っているため、他の言語を習得しやすくなるという話を時々耳にします。本当だと思いますか?

ヤコブさん:間違いなくそうです。

言語にはさまざまな系列があります。だから、ある系列の言語を学べば、他の言語との類似点が多くなり、それを学習に生かすことができます。

また別の言語を学べば、文法規則は異なったとしても基礎となる部分には多くの類似点があります。

学ぶ経験をしたら、それを引き出しに入れておくんです。次の言語を学ぶときは、その引き出しのカギを開けるだけでいい。経験のカギです。

日本の価値ををもっと世界に知ってもらうべきだ

ーー日本では、英語の勉強に関しては一生懸命やっていますけれど多言語となるとさほど熱が上がらないという面がみられます。日本の言語教育についてどんな印象をお持ちですか?

ヤコブさん:日本特有の状況として、まず島国だということがあると思います。1億2330万人が暮らす大国です。この国のなかでは、わざわざ多言語を話さなくても地位の高い役人になることができます。会社の偉い人になることも、取締役や社長になることもできます。

一方、私の母国スウェーデンでは、英語は生まれたときから日常のなかにあります。これは、人口の少なさと関係があります。

たとえば、映画を見にいったとします。映画はどれも字幕版でスウェーデン語への吹き替え版はありません。スウェーデンは人口が少ないから、吹き替えをする経済的な意味がないんですよ。

テレビ番組も同じです。だから英語は日常のなかで常に聞こえてきます。

それに英語の音楽の影響も大きいと思います。スウェーデンには、英語で歌ってスターになったアーティストがたくさんいます。ABBA、ロクセット、アヴィーチー…彼らはみんなスウェーデン出身で、英語で作品を作ってきました。

彼らが英語での音楽作品で成功したのは、英語に限界を感じていないからだと思います。母国語で歌うのは自然なことだけれど、英語で歌うのも母国語で歌うのと同じくらい自然なことなんです。

日本では、ロックスターとして超売れっ子になっても、英語で歌う必要はない。だから、日本が国として非常に成功していることを認識することも重要だと思います。

ーー環境はだいぶ日本と違いますね。

ヤコブさん:でも、日本の多くの人は世界とつながりたいという願望を持っているように感じます。そして世界ともっとつながることは、日本にとっても、日本の学校のシステムにとってもいいことだと思います。

現在、日本政府は50万人の学生を海外留学させるという大きな目標を掲げていますよね。これは次のステップにとって重要なことだと思います。

僕からもひとつ付け加えていいですか?

もちろん!ぜひぜひ。

リーナスさん:僕は日本に住んでいます。日本が大好きです。文化的にも経済的にも日本は貴重な財産をたくさん持っていて、これをもっと世界に知ってもらうべきだと思っています。

ーーおお、ありがとうございます!

今、世界を見てみると、日本は非常に多くのソフトパワーを持っています。特にアジアに対するソフトパワーと影響力です。日本からのリーダーシップが必要です。そして、ひとつのボトルネックはコミュニケーション、言語だと思います。

日本の政府を見ても、一部をのぞいて多くのトップリーダーは英語しか話せないと思います。言語には多くの文化が組み込まれていて、学びと連動して異文化理解につながるということが重要だと考えています。

僕はスウェーデンのヨーテボリで日本語を学び始めました。そこでKEIGO(敬語)についても学んだんです。

スウェーデンは最も平等な国で、スウェーデンの国王に会えばファーストネームで呼ぶこともあります。

日本には行ったことがなかったときはただ知識として学んだだけの敬語文化を、日本に来て目の当たりにしました。レストランでも、マクドナルドでさえ敬語を使いますよね?

言語、文化、理解。この3つは密接につながっているんです。

ファーストフードで敬語が使われる光景に慣れ切っている私たち。たしかにこの異文化理解は興味深い!

AIツールは自力で泳げるまでの「浮き輪」

ーーAIの急速な発展で、翻訳ツールもどんどん進化しています。もう、自分自身の語学力を上げるために努力しなくてもAIツールがやってくれるんじゃないかと思うときもあります。これからも人間の語学力って必要だと思いますか?

ヤコブさん:ええ、これからさらに重要になると思います。自分自身を満たし、世界を探検し、新しいものを見たいという内なる欲求を満たすためには、現実に人とつながる必要があります。新しいツールを使うのは素晴らしいことだが、私たちは外に出て人々と話をする必要もあります。

私たちは言葉を残したいのです。

AIツールは素晴らしいけれど、実際に他の人とつながりたいという欲求を奪うものではないと思います。世界を探検したいという欲求や、理解を生み出したいという欲求を満たすには、誰かに会うこと以上の方法はないんです。

AIツールは素晴らしいものです。私たちもテクノロジーに大きな投資をしています。

AIツールは水泳の補助用具があるようなものだと考えています。補助用具は浮くのを助けてくれる。でもその道具を手放し、自分の力で泳げるようになったとき、ひとは大きな充実感に包まれるものです。

ーーAIツールの進化は、語学学校や海外留学といった学び方への影響はありますか?脅威に感じることは?

ヤコブさん:現代のリーダーは「将来的にAIをどう使うか」という話をしているだけではもうだめだと思っています。今すぐAIを使い始めなければなりません。AIが人間に取って代わるのではありません。AIに取って代わられるのは、AIと一緒に働かない人間なんです。

多くの言語が脳をより機敏にする

ーー興味のカギを開けること、言語を学んだ経験を次の言語でも活かすことなど、多言語を習得するのにいろんなヒントを頂きました。EFではマルチ・ランゲージ・プログラム(1年の間にいくつかの国/都市に移動して複数言語を学べるコース)がありますが、どんな国の人たちに人気がありますか?

ヤコブさん:いろんな国の人が参加していますよ。このプログラムでは、たとえばまず最初の都市で集中して英語力を上げ、次の都市に移ったら今度は新しい言語を学び始めながら、すでに高いレベルに到達してきた英語をさらに完璧なまでに向上させられます。

日本人学生の参加はまだあまり多くないと聞いています。理由はなんでしょう?

日本人の完璧主義が理由だと思います。まだ英語さえできてないのに、まずは英語をやらなきゃ、という真面目さが出てしまっているかもしれません。

ヤコブさん:近年、日本だけでなく世界から多くの人が韓国に留学して韓国語を学んでいます。韓国ソウルEF校に通う学生たちはもちろん韓国語を使うのですが、同時に英語がとても流暢です。

多くの言語が脳をより機敏にし、異なるメガネを使い、異なる方法で物事を見ることができます。異なる文化圏の考え方を使って、自分のいる文化圏の問題を解決することができれば、既成概念にとらわれない考え方ができるようになると思いますよ。

日本の価値をもっと世界の人に知ってもらいたい。
日本の中にいる私たち以上にそう言ってくれるヤコブさんとリーナスさんのお話には気づかされることが多くありました。

私ももっと学びたくなりました。
ヤコブさん、リーナスさん、伊丹さん、いろんな示唆に富んだ座談会、ありがとうございました!

(協力:EF Education First Japan

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