あっという間にバイリンガルが育つ現代アメリカの一風景 ~ワイズりか(アメリカ在住ライター、イラストレーター)

バイリンガルという言葉は、日本社会にも長くから浸透していて、「2ヶ国語を話す人」という意味で知られているが、大人になってからそれをめざすには、かなりの時間と努力が必要になるのではないだろうか。実際、海外留学経験がまったくなかった私もそうだった。
 
いずれにしろ、アメリカで長く生活している間、小さな子供が短期間で信じられないくらい、言語の習得が早いのを目の辺りに見てきた。テキストなし、お手本もなしに、いったいどうやって?
 
私は、週1で日本人小学生の習う教科のサポート、そして週2で保育園のエイドもしている。その現場でみてきた環境を今日はご紹介しよう。不思議ではあるが、この環境下ではほとんど何の苦労もせずにバイリンガルになることが出来る。
 
バイリンガル教育
※イメージ
  

移民の多い環境で実証される、子供の語学力習得のすごさ

私が住む、サンフランシスコベイエリアは、とにかく移民の多い地域だ。当然、これらのどちらの学校にも、たくさんの移民の子が通ってきている。
 
子供たちは、最初英語の知識がほとんどない状態で入学してくる。その環境で、現地の子供たちとまったく同じ条件下で、一緒に授業に参加する。おそらく、それは誰もいない荒野にひとりぼっちで置き去りにされるような感覚なのかもしれない。
 
考えてほしい。クラスの子供、先生、そしてすべての教科書や資料が外国語だ。最初は、かなりのインパクトを経験するのは確かだ。
 
しかし、それほど大人が心配するほどでもない。小さな子供の環境の適応力にしばしば驚嘆するのである。語学を瞬く間に覚えてしまうからだ。
 
また、その後はバイリンガルとして2ヶ国語を難なく使い分けるようになるので、子供の脳の構造がどうなっているのか、うらやましくもあり、ある意味衝撃的でもある。
 

瞬く間に話し始める保育園の子供たち

保育園の子供たちは、わずか2歳から4歳の子供たちだが、この時期こそが語学の習得にはもってこいなのだと、つくづく思うのが常である。
 
地域がら、どこに行っても人々がさまざまな言語で話をしている光景が見られる。アラビア語、中国語、タガログ語、韓国語等。英語を母国語としない子供が大勢いるということだ。
 
保育園には、他国から移住したての家族がしょっちゅう入学してくるが、その時点では、子供たちは英語をまったく理解できない。
 
つい最近も、2歳の中国人の女の子が2ヶ月前に入学してきた。最初は、英語がまったく理解できなかったが、最近、ずいぶんとこちらが話すことが理解できるようになったと見ている。さらに、少ししてから片言の英語も話し始めた。わずか1ヶ月間である。
 
2歳という幼い年齢なので、机に座って、英語を勉強しているわけではない。ただ、この学校に通ってきて、先生の話しを聞いたり、他の子供と遊んでいる中で覚えだしたものだ。
 
私は、こういった光景をいままでに数多く見てきた。実際、幼児の語学習得パワーは、「すごい!」のひとことに尽きると感じている。年齢が幼いことで、逆にその環境で、そのまま丸ごと吸収していくのだろう。
 
もうすでに一年間、この保育園に通っている韓国から移住した女の子は、英語はすでに問題なく話せる、ネイティブに近いと言ってもいいかもしれない。
 
いずれにしろ、驚くことだが、この保育園に2ヶ国語を理解できる子供はざっと見積もっても半分以上いると見ている。
 

小学校には、「第2外国語としての英語」のクラスが設置されている

一方、小学校にも、移民の子供が多く入学してくる。保育園と異なり、移民の子供たちには、「第2外国語としての英語」のクラスが設定されている。小学校では、英語が第2外国語になっている子供は、このクラスを受講させる義務がある。
 
私は、週1度だけ、家の近くの小学校に依頼されて、日本人学生のサポートを行っている。
 
渡米したばかりの頃、彼らは英語がまったく理解できないし、そのためクラスで習う教科に従事するのも困難になる。そのため、各生徒の勉強や英語のサポートをしているのだ。
 
日本人の子供たちは比較的おとなしいため、最初語学力よりも先に、環境に慣れることに時間がかかるように思える。しかし、一度その環境に慣れると、語学力を瞬く間につけていく印象がある。とにかく、算数にしろ、国語にしろ、いままで会った子供たち全員ベースがしっかりしているためか、英語で書かれていることを、最初はっきりわからなくても、推測して解いてゆく傾向があるようだ。そのうち、英語の語彙にも慣れてゆき、瞬く間にバイリンガルになってしまう。
 
クラスで使う英語の語彙は、今日本の小学生が習っているものでは追いつかない。もっと難しいものもたくさん理解しなければならない状況にさらされる。しかし、この状態で3年いれば、間違いなく、すごい語学力がつくのだと実感している。
 
ただ、小学生の年齢になって英語を話始めたとしても、イントネーションはそのまま母国語のアクセントが残るようだ。英語は完璧に話しても、やはりこれだけは、なかなか消えないのだろうか?
 

どうやってバイリンガルになるのか?

これはあくまでも私がいままで経験した印象だが、かくして完璧なバイリンガルに育てるには、「完璧に母国語を話す環境」と「完璧に英語を話す環境」の両方が必要だと思う。
 
例えば、保育園の幼い子供たちでバイリンガルなのは、家庭の両親がどちらも母国語を話すことによって子供もその母国語の環境で育っている。
 
そして、学校に行けば、どんな母国語を持とうと先生や友達とは英語で話す。あるいは、さまざまな課題の本を読まされ、論文を作り、英語で書かれた問題を解いているうちに、英語は日常言語としても養われてゆく。
 
しかし、もし両親のどちらかが英語だけで、もう一方は他の言語を話す場合、完璧なバイリンガルに育てるにはかなりの努力が必要になるだろう。実際、私の息子はその環境にあるので、日本語は私によって小さい時から理解していても話すことは困難を要する。家族皆で話すときは、どうしても英語になってしまうから、英語の環境に浸ることが多いことがあげられるだろう。
 
つまり、日本語環境は、とかく中途半端になりがちになる。母の日本語は耳で聞いていて理解しても、子供は英語のほうが楽なので、実際は英語で応える。この環境では、日本語のスピーキングのほうはおぼつかない。つまり、日本語をしっかりキープしたいのであれば、徹底して日本語を使う環境が必要なのだ。
 
以前知り合いになった日本人で、最初会った時、日本からの移民だと思っていた人がいる。しかし、後で彼女がアメリカ生まれだと知ってびっくり。あまりにもしっかりした日本語を話していたからだ。
 
彼女いわく、子供の頃、学校から帰ったら、家では絶対に日本語をしゃべると言うルールが作られていたそうだ。また、日本人学校に通って、読み書きも習っていたそうで、やはりこれこそがバイリンガルといえるお手本だろう。
 

バイリンガルにさせたい!?

もちろん、バイリンガルであれば、将来さまざまな可能性が広がり、子供にとっても、すばらしい財産となるのは間違いないと思う。「子供をバイリンガルにさせたい!」そう望んでいる親も実際多いのではないだろうか。
 
もし、あなたの家庭が日本語だけを話す家族であって、海外に移住、または一時的にでも暮らす予定があるのであれば、その夢は実現する可能性は高いと思う。
 
ただし、可能であれば、それをやるのは子供が出来るだけ幼い時に限る。
 
受験のために英単を覚えるのも苦労した時代を思い出すと、やはり子供であっても年齢が高くなるにつれて、適応力が衰えてゆくものだろう。
 
保育園の子供たちの語学習得力は目を見張る。実際はこのあたりの年齢から、英語の環境を整えるのが一番理想なのかもしれない。
 
文:ワイズりか(ライター、イラストレーター)
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