アメリカに長年住んでいると、よく耳にする言葉がある。それは I love you と言う言葉だ。
特に英語が母国語でなくても、直訳して「愛している」と言う意味になることは、万国共通に理解できると思う。ただし、いま“直訳”と言ったのは、この言葉には、さまざまな意味あいが含まれていることがあるからだ。環境や背景によって、I love you には微妙な意味が潜んでいる。
今日は、実際私が経験した、ごく普通のアメリカ生活の中の I love you のシチュエーションについてお話ししてみたいと思う。
恋をささやく言葉だけではない
私も実際に日本で生活していた時があったので言えるが、日本人は人前でも、あるいは個人的にも、それほど「愛している」を連発することはないと思う。だからと言ってそれが悪いわけではなく、日本人には日本人の独特のボディランゲージや言葉の交わしあいがある。別に大きな問題ではない。
しかし、もし英語圏の人と係わりあいを持つ機会があるなら、この言葉にはさまざまなバックグランドがあることを知っておいたほうがいいだろう。
I love you と聞けば、すぐに思い浮かぶのが、恋人同士の愛の交わしあいかもしれない。もちろん、アメリカで恋人同士がお互いの気持ちを表現するために、この言葉は不可欠なものだ。ちょっとロマンチックな雰囲気になった時に I love you と言われれば、これはもう本格的な恋の始まりかもしれない。
しかし、この言葉を言われたものの、期待していたほどのロマンチックな言葉のつもりではないこともある。つまり、相手は、たくさんいる友人の中の一人として、「君は、僕のすばらしい友人だ」の意味で伝える可能性もあることを理解しておいたほうがいいだろう。
アメリカでは、夫婦だけでなく、子供たちに対しても I love you をしょっちゅう口にする。要するに、恋する対象と言うだけでなく、愛する対象への気持ちも表現できる言葉で使う。
夫や妻として、親として「何があっても、変わらぬ愛情」を示していることを伝えているのだ。例えば、朝家族を見送る時、「I love you. Have a good day!」。こんな光景は、アメリカの朝の典型的なシーンだ。あるいは、家族に電話で話をしていて、電話を切る間際に I love you は欠かせないだろう。
もし、あなたがアメリカ人家庭にホームスティをした際にも、自分に対して、ホストファミリーから聞く可能性もある。
友達への言葉にも使う
恋人同士、家族同士に使うのは、理解できたとして、それでは友達同士で使うのはどうだろうか? 実はアメリカでは、この言葉を友達同士でも使うことはよくある。
シチュエーションとして、家族同士で仲良くしている他の家族と夕食をした場合、帰り際にハグしあって We love you! を交し合うのは常である。この場合、Weを使うのが適切だろう。あるいは、とても親しい友達同士でお茶をして帰り際に、またね I love you! とハグし合うこともある。あくまでも明るく、親しさをこめて行う。その相手が異性である場合は、「家族一同あなたを愛しています」の意味をこめて、誤解を抱かないように We love you のほうがいいかもしれない。
アメリカ人とて、どういう意味あいで言ったのかわからなくなる
アメリカで Stress Buster と呼ばれるクリニックを開業し、幸福や愛について講演やプロジェクトを行い、バラエティ番組にも出演しているロバート・ホールデン博士が書いた記事を読んだことがある。その記事のタイトルは、ずばり『“I Love you”の本当の意味(The Real Meaning of “I love you”)』 だ。
この記事で述べられているのは、普段この言葉を頻繁に使っているアメリカ人であっても、どの意味なのかわからなくなるという内容のものだった。記事の冒頭で、次のように述べられている
“What do you mean when you say “I love you?” Are you sure? You may be 100 percent sincere when you say “I love you,” but what are you trying to say? Get a pen and paper, and complete the following sentence 10 times: “When I say ‘I love you,’ I mean…” Do this now before reading on.”
(邦訳)
あなたが I love you と言う時、それにはどんな意味があるだろう?その言葉が100パーセント真心をこめてのものかもしれない。しかし(その言葉で)何を言おうとしているのか?ペンと紙を用意して、次の文章を10回書いてみよう。「私が I love you という時、それはつまり・・・」 この(記事を)読み進める前に、まずそれをやってみよう。
(出典:OPRAH.COM The Real Meaning of “I Love You” Robert Holden, PhD 邦訳:ワイズりか)
記事によると、ホールデン博士のコースを取った受講生たちは「あらためて意識的にこの言葉の意味を考えてみると、その時々によって異なることに気づいた。」と答えたと言う。ある男性は、自分の奥さんにいままで何千回と言ってきたが、この言葉の意味を改めて考えさせられた、とも述べている。
つまりアメリカ人でさえも、微妙な言葉であることを改めて感じるようだ。また、このことから言えるのは、アメリカの日常で使われる I love you の言葉自体には、さまざまな意味合いがあることだ。
ただし、あまりよく知らない相手や、会ったばかりの人に使う言葉ではない。あくまでも、相手のことを知った上で、愛情ばかりでなく、尊敬も含めていることを忘れてはいけない。それは、恋心を抱いた言葉であり、家族愛的な、あるいは友達としての友情のこともある、考えてみると応用範囲が広い言葉なのである。
これから、アメリカに留学を考えている方は、実際生活をしていくうちに、この言葉がどれほどこの社会で口にされているのかを知るだろう。覚えておいてほしいのは、シチュエーションによって、いろいろな意味あいで使われることだ。その微妙な意味合いのシチュエーションを理解し、上手に使うことが必要だ。