クラシック音楽を本場ヨーロッパで学びたいと渇望する音楽関係者や学生にとって、自分が留学に具体的に何を求めているのかをはっきりと見定めるのも大切なことです。
単純に経験としてその後の活動に活かしたいのか、海外で通用するレベルのスキルを身につけたいのか、海外就職に繋げたいのか、思い描く将来設計はひとそれぞれでしょう。
ここでは、留学を海外就職のチャンスに繋げたいと考えている人に向けて、ドイツの音楽院内で見つけることのできる様々なチャンスをご紹介します。
▼ミュンヘン、バイエルン州立歌劇場
各都市の音楽院と歌劇場の繋がり
ドイツの国公立の音楽院(Musikhochschule)は、その町の劇場やオペラ座と強い繋がりがあります。例えば、劇場勤務の音楽家が音楽院で教鞭をとっていたり、音楽院の生徒が劇場にピアノ伴奏者や合唱のメンバー、オーケストラのエキストラとして駆り出されていたりします。
そうして学生のうちからプロの環境に入り込んで経験を積み、人脈を広げることで、就職に繋がる情報収集がしやすくなります。また、すでに内部で働いた経験があるという事実は、正式な応募の際に大きなアドバンテージになります。
大きな都市の歌劇場にはオペラ研修所が併設されている場合が多く、この研修所に入るのにも、その町の音楽院出身者が圧倒的に有利です。オーケストラのインターンなども同様です。
内部の生徒のみが受けられるオーディション
ドイツの音楽院には、オーディションやコンクール情報が張り出される掲示板があります。エージェントのオーディションや音楽系のフェスティバル出演者の募集など、時にはインターネットで調べても出てこないような情報もあり、内部の学生でなければ知り得ない貴重なチャンスになります。
音楽院の先生が関わっている場合も多いため、詳細情報も入手しやすくなります。
例えばライプツィヒのオペラ座は、自身のオペラ公演の中で、音楽院の生徒用に特別枠の役を用意しています。
「若者にチャンスを」というコンセプトで、敢えて脇役のキャスティングに学生を登用します。オペラ座はギャラを安くおさえられ、学生は舞台経験が積めるという、両者にとって有意義なシステムです。
教師からの斡旋
音楽院の教師が、将来に繋がるようなチャンスを生徒に与えることもあります。例えばオペラ研修所への応募に口をきいてくれたり、推薦文を添えてくれたり、コンサートや音楽フェスティバルへの出演などの小さな仕事を斡旋してくれることもあります。
どこの世界も人脈はとても大事なもので、時に大きな力を発揮します。
▼ミュンヘンの公園
不況の波に押される近隣のヨーロッパ諸国に比べて、ドイツではまだまだ若い音楽家たちにチャンスが転がっています。
そのチャンスをものにするには年齢もひとつの大きなポイントになります。もちろん若ければ若いほど大きなアドバンテージになります。
経験を積むという目的で一定期間限定の海外留学を考えている人は焦る必要はありませんし、経済的にもしっかりと計画を立てて準備ができると思います。とはいえ、海外での就職を視野に入れている人はそうも言っていられません。
留学を迷っている時間の長さに反比例してチャンスが減っていくという事実を念頭に置くことはとても大切です。日本に帰ることはいつでもできます。まずは思い切って最初の一歩を踏み出してみては?