英語学習時の脳活動には男女差アリとの研究報告~英語学習法への新しいヒント

同じ英語授業を受けても、男女で習熟結果が異なるとしたら、それは『脳』によるものかもしれない。
 
このたび、日本の小学生の英語学習において、英語テストの点数や発音の正確さが同等であっても、脳における言語処理には男女差がある可能性が示唆されました。この研究は、小学校における効果的な英語学習や、脳科学的な根拠に基づく英語学習法の開発へ道を開くものと期待されています。
 
英語学習時の小学生の脳活動に男女差
 
この研究成果を報告したのは首都大学東京大学院人文科学研究科/言語の脳遺伝学研究センターの萩原裕子教授と杉浦理砂特任准教授らの研究グループ。484人の小学生(年齢:6~10歳)を対象に英語を復唱するときの脳活動について調べたところ、脳活動に違いがみられるようになるのは学習初期ではなく、学習が進んで習熟度が向上する過程だそうです。
  
性差が見られたのは、脳のなかでも音韻処理に深く関わると考えられている頭頂葉の角回・縁上回の活動。男子は英語復唱時に角回・縁上回を含む言語に関わる広範な脳領域を活動させたのに対し、女子においては角回・縁上回の活動は殆ど見られず、言語に関わる限局的な脳部位を使用。このことから、同等のパフォーマンスを得るために女子に比べて男子は、頭頂葉の領域に大きな活動を促すような処理の負荷を掛けている可能性があることが分かりました。
 
この脳の性差は、大人になってから選択する英語学習方法に影響を与えているとも考えられます。
 
これまでの成人を対象とした行動研究では、英語学習時の男性と女性は違う学習方法をとる傾向があることが判明しています。例えば新しい英単語を学ぶ際に、女性は実際に声に出して覚える方法を多く用いるなど、『音』を軸とする聴覚的な方略を利用する傾向があるのに対し、男性は暗記したい言葉を空間(場所)に配置して覚えるなど、視覚的な方略を利用する傾向があることが報告されています。一方、長期記憶の一部である宣言的記憶についての研究結果では、男性に比べて女性の方が課題の成績がよいという報告が多数あります。
 
小学生の英語復唱時の脳活動の性差は、特に音韻に関する長期記憶の違いによる可能性があります。男子と女子のそれぞれが外国語学習に有利な方略を活かした学習スタイルを身につけて、その学習スタイルの違いにより、習熟度と共に英語処理時の脳活動の大きさやパターンの性差が顕在化した可能性があります。
 
今後、小学校の英語授業や教材に、男女脳の違いを意識したカリキュラムが生まれる時代が来るのかもしれません。
 
(留学プレス編集部)
 
■本研究成果は、2015年7月3日(米国 現地時間)に、米国科学誌「Human Brain Mapping(ヒューマン・ブレイン・マッピング)」のオンライン版で公開されました。
 
●論文発表の概要
題名:“Effects of Sex and Proficiency in Second Language Processing as Revealed by a Large-Scale fNIRS Study of School-Aged Children”
(第二言語の習熟度と処理時の脳活動との間に見られる性別の影響:小学生を対象にした大規模研究)
著者:Lisa Sugiura*, Shiro Ojima*, Hiroko Matsuba-Kurita, Ippeita Dan, Daisuke Tsuzuki, Takusige Katura, and Hiroko Hagiwara ( * は同等の貢献をした筆頭著者)
雑誌名: Human Brain Mapping (ヒューマン・ブレイン・マッピング)
公表日:2015年7月3日(オンライン版)
 
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