海外大学の日本校、そのメリットとデメリットとは?~テンプル大学の事例より~ミカ・シスラー(留学アドバイザー)

アメリカの大学の日本校として、1982年に設立されたテンプル大学ジャパンキャンパス。これまで30年以上にわたり、日本国内で英語での高等教育を実施してきました。

海外大学への進学というと、海外に滞在して教育を受けることを考えがちですが、日本に居たまま教育を受ける日本校の価値はどういったところにあるのでしょうか。

今回、海外大学の日本校の役割や課題について、テンプル大学ジャパンキャンパス副学長の加藤智恵氏に伺いました。

▼テンプル大学ジャパンキャンパス副学長 加藤智恵氏

写真提供:テンプル大学ジャパンキャンパス

日本にいながら手に入る「異文化交流」

テンプル大学ジャパンキャンパスの留学生の割合は63%(内、アメリカ国籍40%、その他の国籍23%)。日本国内の四年制大学への長期留学生の割合が2.3%であることを考えると、日本にいながらも、密度の高い異文化交流をしやすい環境があります。

--海外大学の日本校が持つメリット、そしてデメリットにはどんなものがあるのでしょう?

加藤氏:「メリットとして、東京近辺に住んでいる学生にとっては住居費がかからないことや、生活環境が既に整っていることから学業に集中できることが挙げられます。さらに、日本国内の企業の長期インターンシップや就職活動が進めやすいですね。

デメリットとしては、海外留学をすることに比べて、英語漬けの環境を実現しにくいところだと思います。英語環境もそうですが、海外での『生きる力』を鍛えることができるのは海外留学の強みですね。」

--日本の高校からそのような環境に入学した場合、すぐになじめる学生もいる一方で、カルチャーショックを受ける学生もいるのではと思いますが、学生サポート体制に特徴はありますか?

加藤氏:「コンセプトとして、学生が本学に入学する前から卒業した後まで、一貫してケアし続けるということを重きに置いています。具体的には、学生募集、入学、学生サービス(レクリエーションや在学中の留学相談など)、就職サポートなどの段階において、それぞれの部門がコミュニケーションをうまくとり、学校全体としてより良い連携ができるように協力し合っています。」

テンプル大学ジャパンキャンパス公式ホームページの情報によると、2018年度の学位取得を目的としたプログラムの学生数は約1500人。数万人の学生が在籍する日本の大規模な大学と比べると、学生数が限られているからこそ可能なケアであることが伺えます。

海外大学日本校の未来とは?

--今後、どのように成長させていきたいか教えていただけますか?

加藤氏:「ここ10年ほどで、世間から認められる大学として評判が上がってきたと感じています。

しかし、マーケットリサーチをすると、関東にお住まいの方のうち、約30%の方しか本学を知らないという状況があります。いずれは、二人に一人の方に知っていただくのが私の個人的な目標ですね。卒業生、先生方、学生達にとって、知名度からも誇れる学校にしていきたいと思っています。

海外大学の日本校に通うことで、日本人の良さを保ちつつも、意見を言える人材に成長していくことができます。文化的な背景が異なる学生が多いため、積極的に授業に参加していく必要があるためです。

日本人が国際感覚を持つことは、日本人が存在感を持つことに繋がります。今後も、テンプル大学ジャパンキャンパスから卒業する方に国際社会を引っ張っていってほしいですね。」

--海外大学日本校への進学を検討している学生は、どんな心構えを持つとよいでしょうか?

加藤氏:「入学前に将来の目標が決まっていなくても良いと思っています。

ですが、こうなりたいと思ったら頑張ることのできる意思の強さがないと、卒業は難しいと思います。入学するためには、TOEFL iBT79点相当の高い英語力が必要ですし、授業で求められる課題量や貢献度がとても高いですからね。

これまでの偏差値や学歴のプライドがある方よりも、やる気のある方に入学してほしいです。」

▼今回のインタビュー当日はオープンキャンパスも行われていました。加藤氏は副学長の立場としてだけではなく、以前担当していた学生募集部門の立場としても参加者に語りかけていました。

▼オープンキャンパス参加者

経済協力開発機構(OECD)の統計によると、海外の大学等に留学する日本人は、ピークであった2004年から減少し続けています。家族との別れ、金銭面や英語力の不足、日本の就職活動との兼ね合いなど、海外の大学に進むことに不安要素はつきません。

日本の一括採用の就職活動を例にとると、大学3年時の3月には企業エントリーが開始され、10月の内定式まで長期間にわたって試験や面接が続きます。そのため、海外の大学に籍をおきながら、日本のシステムに則り就職活動を行うことは難しいですが、日本での大学生活であれば授業と並行できます。また、アメリカの大学の学費は上昇傾向にあり、名門私立校であれば年間約300万円する学費や生活費は家族の負担となり得ます。

日本に居たまま海外大学に通うことは、上記の例のような不安や障害をある程度取り除くことが可能です。

今後、海外大学の日本校への進学の意義がますます重要視されてくるかもしれません。

文:ミカ・シスラー(留学アドバイザー)
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