誰でも一度は、眼科で視力や色覚の検査を受けたことがあるでしょう。それらの検査をしてくれるのが視能訓練士。携帯電話をはじめ、デジタルデバイスの利用者が増えた現代、視能訓練士の役割はますます増大しています。
今日のレポートに登場するのは視能訓練士の戸張歩海(トバリ ホウミ)さん。北里大学で学び、視能訓練士の国家資格をとった後、現在オーストラリアのシドニー工科大学院でオーストラリアの視能訓練士資格取得を目指して学んでいます。
世界を舞台に専門職を目指すこと、難しい課題との向き合い方なども合わせて戸張さんのインタビューをご覧ください。
▼戸張歩海さん
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オーストラリアの永住権を。いずれは日豪両方に目を向けたい。
--戸張さんは日本で既に視能訓練士の資格を持っておられるんですよね。なぜ留学しようと思ったのですか?
戸張さん:母が英会話の先生をしており、昔から英語がある環境の中で育ち、英語も使って働きたかったからです。
--オーストラリアで視能訓練士資格を取得すると、どんな将来が待っているのですか?
戸張さん:シドニー工科大学を卒業するとオーストラリアでも正規の視能訓練士として働けます。オーストラリア人と同じ扱いで雇用されることになるので、オーストラリアで働きたいなと思っています。
いずれは永住権の申請をと思っています。今のオーストラリアのルールが変わらなければ、20代の間に申請できる予定でいます。きっとそんなに遠くない話だと思っています。そこまでいけたら、日本とオーストラリアどちらにも目を向けて生活していきたいです。
▼シドニー工科大学
授業は日本とは180°違う
--大学院の授業、日本とは違うなと思うところもありますか?
戸張さん:基本的には日本の大学で習ったことと同じような講義や実習です。ただ、日本では眼科医が行う分野もオーストラリアでは入ってきます。
たとえば、日本では眼科医が行う『細隙灯顕微鏡』という前眼部の検査、あと、直像鏡での眼底検査も難しいです。どちらも日本ではやったことがなかったので、なかなかコツがつかめません。練習あるのみです。
▼細隙灯顕微鏡を用いて前眼部検査練習中の戸張さん
授業のスタイルは日本とは180°違います。講義、実習の予習は当たり前、復習ももちろん当たり前。ほとんどの内容を頭に入れてから講義や実習に出席するのが普通なんです。この点は、本当に日本とは全く違いますね。
あと、英語は早口で話す文化。日本語と英語の言語の差が関係しているのだと思いますが、日本語で行われる倍以上早いペースで進みます。現地学生でも早いって言ってるくらいです。日本語は比較的、ゆっくり話す文化ですよね。
--戸張さんの典型的な1日について教えてください。
戸張さん:基本的に朝9-12時は講義で、午後が実習です。実習は1-3時、3-5時または1-5時です。週によって午後は違います。たまに午後は実習が無い日もあります。
授業が終わってからはジムにいくか、オペラハウスでジョギングすることが多いです。オペラハウスジョギングは最高すぎます。
▼シドニーの象徴、オペラハウス
▼世界屈指の水揚げ高を誇るシドニーフィッシュマーケット
--勉強は一日何時間くらいしてますか?
戸張さん:2時間くらいですね。本当に勉強はめちゃくちゃ大変です。
一応日本でいろんな試験という試験のために勉強してきた経験がありますが、比べ物にならないです。今、人生で一番勉強しています。
--大変なのはどんな点ですか?
戸張さん:課題がとても大変です。でも、やるしかないかなという感じで、とりあえず淡々とこなしてます。
先生と実技の個人レッスンをしてもらっている時に、一度、先生の前で泣きました。本当にわからなかったんです。やっぱり知らないことを一から学ぶ時はローカルスチューデントより遥かに時間がかかるかなと思いました。
その時は初めてオーストラリアで孤独を感じました。無言になっちゃいました。日本語話したくなりました。でも、先生、友達たちが優しくてまた泣けましたね。
でも、今人生で一番勉強が楽しいです。大学生の時はなかなか興味が沸かなくて、日々勉強しようなんて思ったことありませんでした。
日本人のありのままでいたい。日本の心を一生忘れずに生きる。
--友達や先生の支えもあって、留学生活の充実につながっているんですね。ご友人はみなさん、どんな目標を持っている方が多いのですか?
戸張さん:友達もみんな視能訓練士になる人たちなので、同志ですね。一緒に成長できたらいいなと思います。
友達はオーストラリア人ばかりです。でもバックグラウンドは様々で、国籍はオーストラリアだけど、見た目は完璧にアジア人という人はすごく多いです。2ヶ国語、3ヶ国語話せる生徒ばかりです。
海外に行くと「その国に染まらないといけない」みたいな考えを持っている人が多いかもしれませんが、オーストラリアではその考えは古いのかなと思います。特にシドニーは本当に異文化理解が進んでいるので、お互いの文化を尊重しあおうという風潮が強いです。言語、風習、食、宗教など、いずれも。
だから私も昔と変わらず、日本人のままでいますし、これからも日本人のありのままでいたいです。日本の心を一生忘れずに生きていきます。
▼シドニー工科大学
--戸張さんご自身が目指している世界について教えてください。
戸張さん:私は、視能訓練士という仕事が有名になればいいなと思っています。
世界中で。
私はOrthoptics/Orthoptistという学問、職業を通して本当に素敵な人たちに巡り会えました。日本でもオーストラリアでも。こんなに素敵な人たちがいる世界はきっと他にないって思うくらいです。
だから、多くの人にこの世界を知ってもらって、素敵な人たちに出会ってほしいなと。
私個人としては、日本とオーストラリアでOrthopticsを一から勉強し、両方の国でのルールをしっかり理解し、それぞれの国で資格を持っているということを生かして何かできればいいなと思います。日本でもオーストラリアでも心から恩返ししたい人たちがいるので、いつかその人たちに精一杯の感謝を届けたいです。
大事な人たちに出会えたこのOrthoptics/Orthoptistをずっと誇りに持って生きていきたいです。もちろん自分のことも仲間のことも。
参考:University of Technology Sydney, Master of Orthoptics
https://www.uts.edu.au/future-students/find-a-course/master-orthoptics
(留学プレス)