TAFEとはオーストラリアの公立(州立)専門学校のこと。高校卒業後に入学できる教育機関で、即戦力として活躍できるスキルを徹底的にトレーニングしてくれます。
▼TAFEはこんな人にとってはメリットの大きい学校です。
・留学経験を就職や転職につなげたい人
・専門資格/国際資格を取得したい人
・卒業してすぐキャリアを発揮したい人
日本での就職に限らず、オーストラリアでの就職や永住権を目指す人にとっても選択肢のひとつとなります。
大学に比べて学費が安いことも大きな特長です。日本人留学生もたくさん学んでいます。
ここではTAFEについて、特徴やメリット・デメリット、学べる専攻内容、入学方法と条件、学費などを徹底解説します。TAFEの一覧もご紹介します。
特に、留学を仕事に活かしたいと思っている人はぜひ参考にしてください!
TAFEの意味
オーストラリアでは高校以降の教育を次の2つに分類しています。
①Further Education → 職業教育・継続教育
②Higher Education → 大学・大学院教育
TAFEの正式名称は「Technical and Further Education」です。つまり2つの教育のうち「①職業教育=Furthur Education」を学ぶための専門教育機関ということです。
TAFEの特徴は即戦力の育成です。そのため、学内には実践練習を重ねられるように仕事現場を再現した施設があり、さながら現職のようにトレーニングができます。
また、地元企業との連携が深く、TAFEの多くのコースではインターンシップが組み込まれています。
TAFEの特徴
職業スキルを身につける
オーストラリアの専門学校はVET(Vocational Education and Training)と呼ばれています。VETには私立専門学校と州立専門学校の2種類があります。
TAFEは州立専門学校で管轄しているのは州政府です。
オーストラリアは教育や留学についての法律が厳しく定められているため、私立でも州立でもしっかり学ぶことができますが、TAFEには州立ならではの次のようなメリットがあります。
・州立のため、学校がなくなる(つぶれる)ことがない
・州の予算がふんだんに使われていて施設が充実している
・私立専門学校よりも現地オーストラリアの学生が多い
大学に編入する
TAFEでコースを修了すると、そのまま大学に編入ができます。何年次に編入できるかはコース内容により異なります。
TAFEからの大学編入には次のようなメリットがあります。
・大学より学費が安めのため、トータルの学費を節約できる
・大学より入学難易度が低いため、直接入学できなかった難関大学へのチャンスが広がる
・日本からの高校卒業生の場合、ファウンデーションコースの代わりにTAFEを活用できる
学生は多種多様
TAFEには高校を卒業してそのまま進学する若い人だけでなく、社会人も学び直しやキャリアチェンジを目的に通っています。そのため、年齢層は10代から60代まで幅広く、さまざまな友人ができるのが特徴です。
オーストラリアは他民族国家で、学生のバックグラウンドも多様です。TAFEでのキャンパスライフでは、今まで出会ったことのない国の考え方や文化に触れることになるでしょう。
TAFEでは何が学べる?
TAFEには星の数ほどたくさんのコースがあります。すべてを挙げることはできませんが、たとえば日本人留学生に人気の高いコースの一部をご紹介しましょう。
- ホテル/観光
- 料理(調理)/製菓
- ビジネス/経営
- マーケティング
- 健康(ヘルスケア)/看護
- 幼児教育
- 会計
- 動物ケア
- 航空学
- デジタルメディア/IT
- 美容(エステ、ネイル、メイクetc.)
- 音楽ビジネス
- アニメーション
- ファッション
- インテリアデザイン
- etc.
TAFEはオーストラリア全土にキャンパスがあるため、その地域の特性を活かした分野もあります。たとえば海に近いTAFEでは造船や海洋学が盛んであったり、国立公園に近いTAFEでは動物保護や環境などが充実しています。
TAFEのメリット
オーストラリア人学生が多い
多くのオーストラリア人学生は、私立専門学校よりもTAFEへ進学する傾向にあります。州立であるTAFEは州民の学費をかなり安く設定しているからです。
専攻にもよりますが、私立の専門学校とTAFEを比べると私立は外国人留学生割合が高めの傾向がみられます。地元オーストラリア人に交じった学生生活を送りたい人はTAFEの環境のほうが適しています。
付属の英語コースがある
全てではありませんが、多くのTAFEには付属の英語コースがあります。同じキャンパス内にあり、TAFEの充実した設備を本科専攻の学生と同じように利用できます。
本科専攻へ進みたい場合、付属の英語コースで一定の成績をおさめればIELTSなどの英語試験免除で入学できるというメリットもあります。
TAFE付属英語コースには進学を目指す留学生がたくさん在籍していることから、真剣に学ぶクラスメートと一緒に切磋琢磨できるという面もあります。
また、TAFEの英語コースは学生の出身国のバラエティが豊かという面も持っています。その理由はビザにあります。
日本は裕福で安全な国のため、日本国籍を持っている人はスムーズにオーストラリアの学生ビザを取ることができます。しかし、どの国の人でも同じようにオーストラリアの学生ビザが取れるわけではありません。
オーストラリアでは各国の経済事情や治安状況によってビザ取得の難易度を定めており、なかには私立語学学校ではビザが出ず、大学やTAFEなど政府お墨付きの教育機関でなければ留学自体ができない国もあるのです。
そのため、TAFEには私立学校では出会えないような出身国の学生も在籍しているというわけです。
最短で半年からできるコースがある
TAFEのコースは最短で6か月のものから4年のものまで多岐にわたります。留学予算や終了時期が限られている留学生の場合、たとえば「英語コースを半年間+本科で半年間=トータル1年の留学」といった具合に留学計画を立てることもできます。
国際基準の資格が取れる
TAFEで取得できる資格は、イギリスやニュージーランドと同じ教育システムのもとで確立されています。たとえばイギリスやニュージーランドのワーキングホリデービザを取得して働きたい人の場合、TAFEで取得した資格を履歴書(職務経歴書)に記載してアピールすることもできます。
また、国家資格や国際的に認知された協会資格をカリキュラム内で取得できるコースもあります。
たとえば、TAFEの通訳・翻訳コースのなかには「NAATI」という国家資格を目指すものがあります。NAATIは通訳家/翻訳家としてオーストラリア政府に公認されていることを示す資格です。
TAFEの通訳・翻訳コースについてTAFE出身者の記事を読む >
都市部だけでなく郊外キャンパスもある
私立の専門学校は、そのほとんどが都市部にあります。近年、オーストラリアの都市部は物価が高くなっていることから、生活費を安く抑えたい人にとっては都市部よりも郊外のキャンパスのほうが節約になります。
「せっかくオーストラリアに留学するのだから、自然が豊かな環境で暮らしたい。」という留学生にとっても、TAFEの郊外キャンパスはとても魅力的な選択肢です。
永住権を取得したい人にはプラスになる
オーストラリアで永住権を取得したい人は学歴や年齢などの総合ポイントで申請基準を満たすことが必要です。TAFEで得た資格でも永住権ポイントの一部を稼ぐことができます。
ただし、永住権に有利なポイントを稼げるかどうかはコース次第です。オーストラリアでは永住権を取得できる職業が決まっています。この職業リストと関連のない資格を取得しても、永住権取得には有利になりません。
またTAFEで学んでいる間に、政府の方針変更によって望んでいた職種が職業リストから外されてしまうこともあります。そのリスクはあらかじめ覚悟しておきましょう。
TAFEのデメリット
入学には英語力が必要
TAFEではオーストラリア人学生と同じように学ぶため、入学には英語力が必要です。コースによって異なりますが、最低でもIELTSで5.5が必要になるのが一般的です。看護や通訳などのコースでは、さらに高いIELTSスコアが求められます。
英語力に自信がない人は付属の英語コースへ入学するのがおすすめです。内部規定を満たせばIELTS免除で本科へ進むことができます。
しっかり勉強しなければならない
留学生が多めの私立専門学校と違ってTAFEはローカルのオーストラリア人学生が9割です。授業のスピードや試験の難易度は、留学生だからといって大目に見てもらえることはありません。
専攻によってはキャンパスがド田舎
広い国土を持つオーストラリアでは、都市部から一時間車で離れるだけで大自然に囲まれた環境になります。田舎暮らしが苦にならない人にはこの上ない環境ですが、「来豪したアーティストのコンサートが見たい」「劇場でミュージカルが見たい」といった人は不便も覚悟したほうがいいでしょう。
TAFEで取得出来る資格
TAFEで取得できる資格には以下のようなものがあります。
資格 | コース期間 |
修了証 I (Certificate I) | 約0.5年 |
修了証 II (Certificate II) | 約0.5~1年 |
修了証 III (Certificate III) | 約1年 |
修了証 IV (Certificate IV) | 約1年~1.5年 |
準学士 (Diploma) | 約1.5~2年 |
準学士 (Advanced Diploma) | 約2~3年 |
学士 (Bachelor) | 約3~4年 |
短期(Certificate)資格の活用法
6か月~1年の短期間で取れるCertificateについては、たとえば既に調理人としての基礎がある人が自分へのプラス技能としてパティスリーや製パンのコースを履修する、といった活用法がおすすめです。
長期(Dipoma、Advanced Diploma)資格の活用法
ゼロからスキルを身につけて即戦力として活躍したいなら、Diploma以上を取得するのがおすすめです。また、DiplomaやAdvanced Diplomaを取得すれば、学部によりますが一般的には大学2年次またはそれ以上への編入が可能です。
学士(Bachelor)資格の活用法
「あれ?TAFEで学士(Bachelor)が取れるの?」と思った人もいるかもしれません。オーストラリアでは大学へ行かなくてもTAFEで学士(大学卒業資格)が取れます。
メリットとしては大学に比べて学費がかなり安く抑えられること、大学に比べると小規模クラスでの授業がメインのため、クラスメートや教師からのサポートを得られやすいといった点が挙げられます。
もし、卒業する大学名などにこだわりがないのであれば、TAFEで大学卒業資格を目指すのも選択肢のひとつになるでしょう。
たとえば「最終目標は大学院で修士を取ること」と定めている人であれば、最終学歴は大学院になります。知名度は大学院で得ると割り切って大学卒業資格はできるだけ安く取得しておくという選択肢もあります。
TAFEの入学時期
TAFEの入学時期は2月と7月です。出願時期やIELTSスコアの取得期限、英語コースの開始時期などは2月と7月からさかのぼって計画を立てるのがおすすめです。
ただし新年度の開始(日本で言えば4月)は2月で、多くのコースが2月から始まります。本格的にTAFEで学びたい人は2月スタートを基準に考えておくほうがいいでしょう。
TAFEへの入学方法
TAFEへの出願書類には以下のものがあります。
・最終学歴の卒業証明書
・最終学歴の成績証明書
・IELTSやTOEFL®スコア(付属英語コースから進む場合は免除)
「最終学歴の成績が悪いのだけれど、合格できるだろうか?」という懸念を持っている場合、極端に悪いケースを除いてTAFE留学ではさほど心配しなくてもいいでしょう。大学のような足切りは基本的には行わないので、まず規定の英語力を満たすことを考えてください。
著しく成績が悪くて心配なのであれば、留学エージェントなどを通して自分の成績をTAFE側にあらかじめ打診してもらえる場合もあります。
TAFE留学の費用
TAFE留学のメリットのひとつは、比較的リーズナブルな費用で留学できるということです。
TAFEはオーストラリア中にたくさんありますので、どのTAFEに行くか、また何を専攻するかによって授業料は異なります。
参考までに、ここでは西オーストラリア州のTAFE Western Australiaの学費を例としてご紹介します。
都市によって物価や家賃は異なりますが、年間の滞在費として約200万円を見積もった場合、年間の留学費用は約250万円~300万円となります。オーストラリアの大学や他英語圏で専門学校に通うことを考えると、TAFEがリーズナブルであることがわかります。
さらに、オーストラリアでは学生ビザでのアルバイトが認められています。勉強に差し支えないのであれば、アルバイトで生活費に余裕ができる人もいるでしょう。
オーストラリア国内のTAFE一覧
ここではオーストラリア全土にあるTAFEを一覧でご紹介します。TAFEと名がつかない機関や、大学が「職業教育セクション」としてTAFE機能を運営していることもあります。
留学エージェントを通してTAFEに出願する場合、TAFE認定のエージェントである必要があります。どのエージェントでも手続きを代行できるわけではないので、依頼する場合には確認をしておきましょう。
TAFEで実践に使えるスキルを身につけよう
TAFEでは国内外で使える資格がとれるほか、即戦力としての力を徹底的に鍛えてもらえます。永住権申請にプラスになることもあります。
TAFEを卒業するころには現場レベルで使える高い英語能力も備わっていることでしょう。留学費用が比較的リーズナブルに済むのも魅力のひとつです。
オーストラリア全土に、たくさんの魅力的なTAFEがあります。もし、留学を仕事に活かしたいと思っているのであれば、ぜひこれを機にTAFE留学を選択肢のひとつに加えてみてください。