世界的に有名なオペラの祭典、バイロイト音楽祭。ワーグナーの故郷、バイロイトで毎年夏に催されるこの音楽祭では、ほぼ毎日ワーグナーのオペラが上演されます。
会場となるのは、ワーグナー自身が建築設計から関わったバイロイト祝祭劇場。この劇場は世界でも他に例を観ない、建設されてから現在に至るまで、ワーグナーの作品上演のためだけに使用され続けている劇場です。オペラに興味のある人なら誰しも、一度はバイロイト祝祭劇場でワーグナー作品の上演を生で鑑賞してみたいと願うものではないでしょうか。
しかし、バイロイト音楽祭には毎年世界中から多くのオペラファンたちが足を運ぶため、公演のチケットを入手するのは極めて困難です。一部では「コネが無ければ観賞は不可能」とまで言われているのが、この音楽祭の特徴でもあります。
しかし、ドイツ在住の若い音楽家や音楽を志す学生には大きなチャンスがあります。それが以下に紹介する奨学制度です。
▼オペラ公演開演直前のバイロイト祝祭劇場前。着飾った観客たちが写真を撮ったりアペリティフを楽しみます。
バイロイト音楽祭奨学制度への応募
ドイツの各都市にはワーグナー協会(Wagner Verband)と呼ばれる組合があります。この協会を通してバイロイト音楽祭が主催する奨学制度に応募することができます。
自分の居住地または居住地近くの都市のワーグナー協会のホームページからコンタクトを取り、願書を提出しましょう。折り返しオーディションの連絡があります。
応募時期は各都市によって若干変動するものの、基本的には9月が目安になります。とはいえ、早めに願書を提出しておくと、急遽キャンセルが出た場合などに代理として8月の研修に参加できるケースもあります。「遅くとも9月までには応募する」と考えてください。
奨学生の待遇
奨学制度と言っても、交通費とバイロイトでの宿泊費は自腹になります。奨学生に与えられるのはバイロイト音楽祭でのオペラ公演のチケット3日分、過去の奨学生代表によるコンサートのチケット、食事チケット、バイロイトの観光案内のみです。
音楽祭の期間中、バイロイトの宿泊施設の相場は跳ね上がります。充分に時間に余裕を持って事前予約をしましょう。民泊などを利用すると出費が抑えられます。
現地での活動内容
バイロイト到着後、簡単な手続きを済ませると、研修期間5日間の日程表が渡されます。研修内容に含まれるのはオペラ観賞以外に、グリーティング、バイロイト祝祭劇場の内部見学、バイロイト市内観光などです。
祝祭劇場の内部見学では、ワーグナーがこだわり抜いて作ったオーケストラ・ピットやホールの音響の構造などを学ぶことができます。貴重な体験となること、間違いありません。是非参加しましょう。
まとめ
ドイツが誇る、オペラ界の革命児であるワーグナーの作品を味わうには、バイロイト祝祭劇場が間違いなく世界一の会場です。
ワーグナーが生きた時代そのままの姿、音響、上演作品を守り続ける、歴史的価値のある音楽祭に参加できる数少ないチャンスを、是非この奨学制度を利用して手に入れてください。
文:金子倫子(在ドイツ・メッゾソプラノ)
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