電気自動車しか買えなくなる国ってどこ?エコ超大国オランダのエコ暮らしとは。~ドルトマンス泰子(オランダ在住ライター)

国土の4分の1が海抜0m以下という土地柄から、温暖化の影響を受けやすいオランダは環境への関心が非常に高い国です。そんなオランダでは2025年以降、電気自動車以外の自動車に乗れなくなる法案が審議されています。本記事では、オランダの環境問題への取り組みのなかでも交通に焦点を絞ってその実情を紹介します。
 

オランダ鉄道は100%風力エネルギー利用

オランダでの名物に風車があります。風車は古くから干拓などに用いられてきました。今オランダでは、この風が電車のエネルギー源として人々の輸送にも役立っています。
 
都市間の電車移動に欠かせないオランダ鉄道の全列車を 、2017年の1月から100%風力エネルギーで走行させているのです。
 
▼NSの列車
NSの列車
 
オランダの電車の大部分は、旧オランダ国鉄を承継した「オランダ鉄道(Nederlandse Spoorwegen、以下NS)」が運営。国内各都市に路線を張り巡らせています。
 
オランダのEneco社と共同で2015年に始めたこの風力エネルギープロジェクト、2018年を目標としていた計画が1年前倒しとなって今年実現しました。
 
NSの列車は1日あたりおよそ60万人が利用し、約5500本の列車が毎日運行しています。年間に使用するエネルギー量は首都アムステルダムの全世帯が一年間に消費する量に相当し、それだけのエネルギー量を風力でカバーすることになります。
 

主要都市では3割が自転車移動

オランダは自転車大国です。街を歩くと、あらゆる場所で、とにかくたくさんの自転車を見ることが出来ます。オランダでは自転車の保有台数が車台数の2倍で、一人当たり1.1台保有しているのです。
 
オランダの主要4都市での移動手段において自転車を主に利用する人の割合は、アムステルダムで33%、ロッテルダム22%、デン・ハーグ26%、ユトレヒト36%。実に、都市部では約3割が自転車移動です。
 
人々が自転車を多く利用するのは、国の文化であることに加え、健康によいこと、ガソリン代が掛からず手軽であることなども関係します。そのうえ何よりも、サイクリストのために整備された自転車道路やルールがあるからこそ、安心して子供から大人まで自転車を利用できます。
 
オランダ人が何気なく利用する自転車も、排気ガスを出さないエコな交通手段なのです。
 
▼自転車道路
オランダの自転車道路
 

2025年から電気自動車しか買えなくなるかもしれない?

世界各国が自動車の燃料規制を強化させる中、オランダは欧州でノルウェーに次いでEV(電気自動車)のシェアが高い国です。充電インフラも設備が進んでおり、公共充電器はノルウェーよりも多く国内に設置されています。
 
そして、去年はEVに関して驚くニュースがありました。2025年以降、電気自動車以外の車の販売を禁止するという法案が可決の見込みであるというのです。
 
現在市民が保有する自動車は引き続き走行可能で、新たに販売する際にガソリン車やディーゼル車、ハイブリット車などが禁止される見通しです。
 
しかし、欧州で2番目に高いEVシェアであるといっても、オランダの全乗用車のうちEV保有率は1.1%と未だ少ないことや、車体の重いEVは税金面でも不利なことなどを考えると、実際に法制化されるのは簡単なことではありません。とはいえ、このような法案が議論されることからもオランダの環境問題への意識の高さを伺うことができます。
 

しかし、課題は残る

温暖化対策に力を入れているオランダ。しかし課題はあります。未だ石油や天然ガスなどの化石燃料の利用は9割以上であり、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの利用が少ないのが現状です。
 
現代社会において、温暖化を完全に食い止めることは容易ではないかもしれません。しかし、オランダ人は自分たちの国土を守るためにも環境問題に意欲的に取り組んでいます。市民レベルで取り組めるヒントが、そこにあるのかもしれません。
 
文:ドルトマンス泰子(オランダ在住ライター)
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