「アメリカ人はペット好き」と言う話を、どこかで聞いたことがあるかもしれない。
ハリウッド映画の中にも「アメリカンファミリーにはペット」と、まるで決め事のようにペットを飼っている家族をよく見かけるだろう。実際、これらは何も映画用に見栄えよく作り上げられたものではなく、現実のアメリカンファミリーの典型的な姿である。
したがって、あなたが留学をする際、動物好きであれば問題ないが、そうでない場合はどうなるだろう?あくまで私の経験上でのことだが、典型的なアメリカの家庭では、(特に子供のいる家庭)なにかしらペットを飼っている場合がとても多い。
ところで、ペットとして即座に思いつく動物と言えば、やはり犬や猫だろう。もちろん、アメリカの多くの家庭で飼われているペットもこれらがメインだ。しかし、それ以外に種類の異なる動物も同じ家で同居しているのもめずらしくない。犬や猫だけでなく、まだ何かプラスアルファでペットを飼ってみたいと思っている家族が意外と多いのだ。
鶏が意外にもすばらしいペットに!
ウィキペディアによると、2000年代に入ってから、アメリカで鶏をペットとして飼う家庭が増えてきたと言う。鶏と言えば、肉や卵の生産に農家で飼われている家畜をイメージするかもしれない。しかし、最近は都会に住んでいる、ごく一般家庭で鶏がペットとして飼われるようになってきた。
実は、最近訪問する家庭に「え、鶏を飼っているの?」と思いがけず驚くことがしばしばある。私の知人の間でも、鶏を裏庭で飼っているのを見かけるようになってきた。 彼らは、他に犬や猫を家で飼っている場合も多いが、実際それだけでは満足がいかないのだろうか?いったい彼らが鶏を飼う理由はどんなことだろう。ちょっと興味深い。
私の親しい友人である、Shaw一家は、最近4羽の鶏を飼い始めた。日中は裏庭に放し飼いになっている。鶏のほかにも、猫が2匹、ペットとして飼われている。実はこの家庭ではかつてペットのヘビも見かけたことがあった。
話を鶏に戻そう。アメリカのペット事情として、鶏を飼うその理由とは、一般的にはどうやら新鮮な卵が一番のお目当てのようだ。鶏を飼っている友人たちが口々にそう言う。
もちろんShaw家も、鶏をペットとして飼う主な理由のひとつはそれだ。 しかし、もっとすばらしい理由がある。
夫はエンジニア、そして、妻は科学者と、すばらしいバックグラウンドを持つこの夫婦には10才から15才の息子2人と娘が1人いる。「鶏を飼うこと、それは子供たちに何かすばらしい教育のもととなる機会を与えること出来るかもしれないから」と彼らは話す。
この家族は、まず鶏を飼うにあたって、父親と一緒に鶏小屋(Chicken coop)をスクラッチから作った。写真を見るとわかるが、さすが、エンジニアの父親と一緒に作ったものだけあって、本当にすばらしい出来である!
▼主ケビンとこどもたちで作った鶏小屋
撮影:Kevin A. Shaw
▼次男イアン、鶏小屋の制作を手伝う
撮影:Kevin A. Shaw
さらに、子供たちは、猫と鶏を一緒に遊ばせたり、身の回りの世話をしたり。こうしているうちに、鶏の生態なども自然と知識として得ることが出来るようになるのだろう。
▼次男イアンと鶏
撮影:Kevin A. Shaw
彼らによると、鶏は家族のメンバーを覚えているそうだ。さらに、それぞれにパーソナリティもあると言う。ペットとして、なかなか興味深い。さらに雄鶏と違い雄叫びをあげることもないので、複数いても意外と静かに飼えるのだ。ひょっとすると、犬や猫よりもおとなしいのかもしれない。
▼長女ケイティ、鶏をペットの猫と遊ばせる
撮影:Kevin A. Shaw
▼次男イアンと鶏、ハンモックの上でくつろぐ
撮影:Kevin A. Shaw
子供時代に、動物と密着して過ごす日々は、確かにすばらしい子育ての一環となることは間違いない。実際には、これがすばらしい情操教育となるとも言われていると聞いたことがある。
さらに、産みたてホヤホヤの卵にもありつけるのだから、鶏は単なるペットどころか、何かプラスアルファを与えてくれるペットになるようだ。彼らの新しい4羽の鶏はまだ若いため、卵を産み始めるのにもう少し待たなければならない。
一度私も産みたての卵を、自宅近くの保育園で見たことがあったが、それは驚きと感動の経験だった。鶏の種類によって異なると思うが、卵の色が、通常スーパーで売られているものと違う。大きさもいろいろで、さらに薄い黄色がかったもの、薄青色、透き通るような薄茶色等。いままで見たこともない卵の殻の色に魅了された。産みたての卵は、こんなに美しいのかと思った。卵を見せられた子供たちも、目を丸くして、興奮していた。
もうすぐShaw家で飼っている鶏からも、このような卵を目にすることが出来るのだろう。
▼飼っている4羽のにわとり。どこにいくにも、4羽一緒に行動。色とりどりなので、卵もカラフルになるのだろうか?楽しみ!
鶏を飼うルールは住んでいる場所によって異なる
アメリカでは国単位、州単位、あるいは市単位など、それぞれ細かく法律が分かれているが、鶏をペットとして飼うにあたっても、いろいろなルールがある。
いくつか調べてみると、おおむね同じようなルールだが、やはりそれぞれの地区によって細かいところが異なっている。その理由は、住んでいるバックグラウンドによって、強調される条件が異なってくるからだろう。
例えば、先述のShaw家は、カリフォルニア州のサンマテオカウンティと呼ばれる地域に住んでいる。サンフランシスコの街までは、車で30分ほどであるが、この地域と大きなファイナンシャルディストリクトのあるサンフランシスコのようなシティとでは環境が異なるため、ルールも異なってくる。
ルールは鶏の数、小屋の大きさ、隣近所と鶏小屋の距離等、環境により少しずつ異なる。例えば、ペットとして保持してよい鶏の数が6羽までと示されている地区もあれば、他のペットとあわせた数で4羽までと制限されているところもある。さらに、場所によっては隣接する他の家とその鶏小屋の距離を細かく規制しているところもあれば、ただ単に音など隣近所の迷惑にならないように配慮するように指示されたものもある。
いずれにしろ、鶏をペットとして飼う際は、居住している地区のルールに従うことが大切である。
ホストファミリーとうまくやるには、ペットがキー!?
ペットを家庭で維持するのは、子供のお世話をするのと同じくらい、結構大変な作業となることは確かだろう。たとえ1匹であっても、結構手間がかかってしまう。
それでもアメリカ人家庭には、複数のペットがいて、異種類の動物同士が同居している家庭が多いのをたくさん見てきた。アメリカのペット事情はいまや「犬や猫がいるのが当たり前。それに加えて、何か他の動物もあり。」が常識なのかもしれない。
Shaw家のように鶏かもしれない。また、爬虫類や小さなハムスターなんてこともありうるだろう。なるほど、鶏もハムスターも犬や猫とまた違った経験を家人に与えてくれるのは確かだ。
我が家にはハムスターの「ジョー子」がいる。拙著「ハムスターのきもち-きっとつながる、あなたとハムスターの心」で綴っているが、「ジョー子」はときに異国の地で暮らす私の心理カウンセラーにもなってくれるアメリカ生活の良き相棒だ。
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他の友人でも、トカゲ数匹と犬、猫と犬そして鶏、犬とへぴ等、いろいろな組み合わせで飼っている友人たちを知っている。とにかく、アメリカ人のペット好きには、恐れ入ってしまう。
いずれにしても、ホームスティ先に複数のペットがいる場合、一緒にお世話をすることも、ホストファミリーとの親近感を増すひとつの方法となることは間違いないと思う。そう考えると、ホストファミリーとのつながりは、以外にもペットがキーになる可能性も否定できないだろう。
文:ワイズりか(ライター、イラストレーター)
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