会議や映像、記者会見、スポーツやエンタメ、芸術イベントなど多彩な国際場面で必要な存在が通訳者です。グローバル化に伴って、優秀な通訳者はますます必要になっています。
日本では観光案内を外国語で行う際の「通訳案内士」資格以外、特に資格がなくても通訳者として活動することができます。しかし海外に目を向けてみると、国家資格を取得していない場合は通訳者として仕事ができない国もあり、通訳者はプロフェッショナルで専門性の高い仕事とみなされています。
通訳の仕事には語学力はもちろん、コミュニケーション力や臨機応変な判断力などが求められます。この記事では、通訳スキルを学べる海外留学のコースやその内容、留学費用などを解説します。「留学して高いスキルを持った通訳者になりたい!」という人はぜひ参考にしてください。
通訳留学ではどんなことを学ぶの?
通訳留学には3か月程の短期コースから大学院での修士プログラムまで様々なものがあります。
内容や到達度はそのプログラムによって異なりますが、ここでは例としてオーストラリアのモナッシュ大学で行っているコース構成をご紹介します。
基礎編 | 通訳の最新理論と方法論のベースを学びます。 |
実践編 | オーストラリアの国家資格(NAATI)で求められている内容に沿って、言語固有の伝達スキルの練習を集中的に学びます。理論に加えて、プロの通訳の実践に不可欠な談話分析や、倫理、専門的な構造を学びます。 |
応用編 | 目指す専門分野における高度なスキルを身につけます。 |
専門編 | 目指す専門分野に必要な特定の知識やスキルを強化し、キャリアにつなげていくためのスキルを構築します。 |
留学しなければ通訳にはなれないの?
国内の通訳専門学校や大学の外国語学部などを卒業して、通訳になっている人もいます。
しかし実際には海外留学経験者や帰国子女なども多く、「国内の学校のみ」というよりは何らかの形で世界で学ぶ経験をしています。
通訳者に求められるのはリスニング・スピーキングともにネイティブと同じレベルの語学力です。年代によって言葉遣いが異なるため、聞きなれた語学教材や外国語教師の話すわかりやすい言葉が聞き取れるだけでは十分とは言えません。
また、同じ言語であっても地域によって発音や表現が異なるため、それらに対応できるだけの耳を持っていなければなりません。海外で生活し様々な国から来た留学生や移民系住民と過ごすことでその耳を育てることができます。
通訳者に有利な世界の資格
通訳者として働くのに必ずしも資格は必要ありませんが、資格があればプロの通訳者としての信用につながり、特に新規の取引先と仕事をする際にプラスに働くこともあります。
また、通訳者の活躍の場は必ずしも日本に限られているわけではありません。世界中のビジネス、政治、IT、メディア、スポーツ、エンターテインメント、司法、医療など幅広い分野で活躍できるチャンスがあります。
拠点とする国によっては資格を持っていないと公的な仕事を得られない場合もあります。
ここでは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス、中国、韓国の代表的な通訳者資格をピックアップしてご紹介しますね!
1. アメリカ
ATA Certification (American Translators Association)
アメリカ翻訳者協会が認定している資格です。翻訳の資格となっていますが、多くの通訳者がこの資格を取得しています。日本語ペアの認定が可能です。
State Court Interpreter Certification
アメリカの州ごとの法廷通訳資格で、日本語を含む多言語ペアの認定が可能です。法廷での通訳として働くために必要な資格です。
2. カナダ
CTTIC Certification (Canadian Translators, Terminologists and Interpreters Council)
カナダの翻訳、用語学、通訳の全国組織であるCTTICによって提供される州ごとの資格。日本語を含むペアで認定を受けることができます。
Provincial Court Interpreter Certification
カナダの各州が提供する法廷通訳者の認定資格です。日本語ペアでの資格取得が可能です。
3. オーストラリア
NAATI Certification (National Accreditation Authority for Translators and Interpreters)
NAATIは、オーストラリアの主要な翻訳・通訳者認定機関で、日本語を含む多言語ペアでの通訳資格認定を行っています。認定レベルには、Certified Interpreter(認定通訳者)、Certified Specialist Interpreter(認定専門通訳者)、Certified Conference Interpreter(認定会議通訳者)などがあります。
4. ニュージーランド
NZSTI Membership (New Zealand Society of Translators and Interpreters)
ニュージーランド翻訳者・通訳者協会(NZSTI)が提供する資格で、日本語ペアでの通訳者としての認定が可能です。
NAATI Certification
オーストラリアと同様、NAATIはニュージーランドでも認知されており、日本語ペアでの通訳認定が可能です。
5. イギリス
CIOL Diploma in Public Service Interpreting (DPSI)
イギリス言語学者協会(CIOL)が提供する公共サービス通訳の資格で、日本語ペアでの認定が可能です。法廷、医療、地方自治体での通訳業務に必要な資格です。
NRPSI (National Register of Public Service Interpreters)
イギリスの公共サービス通訳者を登録する全国登録簿で、資格を取得した通訳者は日本語を含む多言語ペアで登録されます。
6. スペイン
Intérprete Jurado
スペイン司法省が認定する法廷通訳者資格で、日本語ペアでの認定も可能です。
7. イタリア
Interprete Giurato
各地方の裁判所によって認定される法廷通訳者資格で、日本語ペアでの認定が可能です。
8. ドイツ
Staatlich geprüfter Dolmetscher
ドイツの各州が認定する通訳者資格で、日本語ペアでの認定も可能です。特に公式な場での通訳に必要です。
9. フランス
Interprète Assermenté
フランスの裁判所が認定する通訳者資格で、日本語ペアでの認定が可能です。公的機関や法廷での通訳が可能です。
10. 中国
CATTI (China Accreditation Test for Translators and Interpreters)
中国外文局が提供する資格試験で、日本語ペアでの認定が可能です。複数のレベルがあり、特に公式通訳としての活動に適しています。
11. 韓国
KATI (Korean Association of Translators & Interpreters)
韓国翻訳者協会が提供する資格で、日本語ペアでの通訳認定も可能です。
通訳留学ができる国や学校は?
アメリカ
アメリカでの通訳留学は、専門学校と大学院でできます。アメリカにはTAALS(The American Association of Language Specialists)という通訳・翻訳のスペシャリストだけが登録できる協会があります。最低100日以上の会議での同時通訳(または逐次通訳)の経験や現役正会員との仕事実績や複数会員からの推薦が必要なプロフェッショナルな団体です。
短期コース | 基礎力が学べる3週間~の短期留学 本格的な翻訳・通訳のトレーニングを受ける際に必要となる基礎力を養うための準備コースです。 |
専門学校 | 英日/日英に特化した専門学校(6か月~1年) 東京にある日本映像翻訳アカデミーのロサンゼルス校です。英日・日英に特化していることと帰国後のキャリアについて相談できることが魅力です。 |
大学院 | ミドルベリー・インスティテュート・オブ・インターナショナル・スタディーズ・アット・モントレー(Middlebury Institute of International Studies at Monterey)※旧モントレー国際大学院 日英通訳の修士号を取得できる大学院です。 通訳と翻訳の修士号(MA in translation and interpretation)と会議通訳の修士号(MA in conference interpretation)があります。 |
カナダ
語学学校や専門学校、コミュニティカレッジ(2年制大学)などで学ぶことができます。カナダにはCTTIC(Canadian Translators, Terminologists and Interpreters Council)の認定通訳者資格があります。2年に1回行われる試験や州単位の通訳者協会を通じてチャレンジすることができます。
語学学校での通訳コース(8週間~) | 一部の語学学校には短期の通訳コースがあります。通訳や翻訳のテクニックのほか、専門英語や時事英語などが学べます。 |
専門学校での通訳コース(2か月~) | バンクーバーの専門学校、アビュータスカレッジでのコースです。6カ月以上のコースの場合、実習(インターンシップ)も含まれています。 |
イギリス
イギリスでは大学院で日英通訳の修士課程があります。
リーズ大学 | ・ビジネスと公共に特化した修士号(MA Business and Public Service Interpreting and Translation Studies) ・会議に特化した修士号(MA Conference Interpreting and Translation Studies) |
ロンドン・メトロポリタン大学 | 通訳修士課程(MA Interpreting) |
オーストラリア
オーストラリアは日英通訳が学べるコースがもっとも充実している国のひとつです。公立専門学校(TAFE)、大学、大学院で学ぶことができます。いずれのコースも国家資格のNAATI(National Accreditation Authority for Translators & Interpreters)を取得することを目指しています。
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通訳留学の費用
通訳留学に必要な授業料目安をご紹介します。国や物価によって異なりますので、ここではコース別に一校ずつを例にあげて解説します。
短期コース | アメリカ専門学校での基礎コースの場合(3週間~):約13万円 カナダ語学学校での通訳コース(8週間~)の場合:約25万円~ |
専門学校 | アメリカ専門学校での専門コースの場合(6か月~):75万円 カナダ専門学校での専門コースの場合(2か月~):42万円 |
大学/大学院 | 豪ウェスタンシドニー大学・学部課程の場合:年間約230万円 豪モナッシュ大学修士課程の場合:年間約280万円 米国ミドルベリー・インスティテュート・オブ・インターナショナル・スタディーズ・アット・モントレー修士課程の場合:年間470万円 |
通訳留学は目的に合わせて選ぼう
通訳留学は短期コースから専門学校、大学や大学院まで幅広いコースがあります。
今の業務で時々通訳をしなければならない人や留学するなら語学だけでなく通訳についても学びたいという人なら短期コースで、本格的にプロの通訳者として国内外で仕事をしたい人は専門学校や大学/大学院で、それぞれ目的に合わせて留学先を選ぶことが大切です。
通訳は、単に言語を置き換える仕事ではありません。その言語や国の背景にある文化や、発信者の人となりを尊重しながら、言葉とともに伝える大切な役割を持っています。やればやるほど奥が深く、追求したくなる仕事です。通訳という仕事に興味がある人は、ぜひ留学でそのキャリアを手に入れてください!
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