世界大学ランキング一位のオックスフォード大学で行われている教育とは

オックスフォード大学は言わずと知れたイギリスの最高峰の大学で、Times世界大学ランキングでは2年連続一位に選ばれています。

英語圏で最古の大学として、「Educating Leaders 800 Years(800年に及ぶリーダー教育)」を掲げ、長年に渡って世界のリーダーを輩出してきました。

(テリーザ・メイ、デーヴィッド・キャメロン、トニー・ブレア、マーガレット・サッチャーなどを含む27人のイギリス首相の他、各国の指導者やノーベル賞受賞者などを多数輩出しています。)

多数の世界的なリーダーを生み出すオックスフォード大学で行われている教育とはどのような教育なのでしょうか。

筆者は現在、オックスフォード大学の経営大学院のMBA課程に在籍していますが、その中での気づきなども合わせてオックスフォード大学の教育をご紹介したいと思います。

▼オックスフォード大学の図書館 ラドクリフ・カメラ

いやでも学問が身に着く「チュートリアル」

オックスフォード大学のユニークな教育として、「チュートリアル」と呼ばれる個別指導があります。

主に学部生が対象なのですが、学生は毎週学んだ事について論文を書き、チューターと呼ばれる教授と1対1で議論しなくてはなりません。教授が学生の言う事に対して容赦なく批判し、学生はそれにしっかりとした答えを返さなければなりません。

1対1なので逃げ場もなく、学生は毎週打ちのめされることになるので、準備不足の学生にとっては毎週が恐怖の時間。しかし、このおかげでいやでも学問が身に付きます。

講義には出席しなくても良かったりする場合もあるのですが、チュートリアルには必ず出席しなければなりません。もしチュートリアルをちゃんとした理由もなく欠席すると厳しく叱責され、最悪の場合、退学にもなります。

そのくらいチュートリアルは大切で、オックスフォード大学の根幹をなす教育であると言われています。

私の在籍するMBA課程には良くも悪くもチュートリアル制度はありません。その代わり、MBA課程においてはアカデミックアドバイザーとカレッジアドバイザーと呼ばれる2人の教授が各学生につくため、定期的に学業や生活の事を相談したりしていました。

オックスフォード大学はこのように過保護ともいえる教育が行われているのです。

「カレッジ制」による強固なネットワーク

オックスフォード大学の特異性を示すシステムのひとつに「カレッジ制」があります。

日本人には耳慣れないシステムなので、まずはその「カレッジ制」のシステムとメリットをご紹介しましょう。

先ず、「オックスフォード大学」という建物は存在しません。

オックスフォード大学は38ある「カレッジ」からなる特殊な大学で、オックスフォード大学に入るには、オックスフォード大学に入学許可を得ると同時にいずれかのカレッジからも入学許可を得なければいけません。

日本にはないシステムなので少し分かりづらいですね。簡単に言うと学寮、寄宿舎のようなものでありながら、単なる居住スペースとしての機能を超えて大きな役割を果たしているのがカレッジです。

それぞれのカレッジは図書館、学生用の共用スペース、食堂、バー、スポーツジム、音楽スタジオ等を有しています。学生の大半はカレッジが所有する寮に住み、大学教育の根幹を成す個別指導であるチュートリアルはカレッジで行われ、カレッジ内の図書館で学校から帰った後に自主学習をするため、必然的に生活や学習の基盤がカレッジの中になります。

他にもカレッジ・寮内で毎日のように何かしらのイベントや講義などが行われています。その結果、学生同士の距離が非常に近く、一緒に過ごす時間も非常に長いので、学校を卒業してからも在学中に築いたネットワークは消えません。

カレッジにはそれぞれ歴史があり、規模も違い、それぞれに特色があります。あるカレッジは数学が強い、またあるカレッジは歴史が強いといった特色があり、また大学院生のみを受け入れるカレッジなどもあります。

オックスフォード大学の学生は、オックスフォード大学よりも各カレッジに所属しているという意識が強く、オックスフォードの学生同士が自己紹介をするときは必ず、名前を言った後に、「私は〇〇〇カレッジです」と言います。

▼グリーン・テンプルトン・カレッジ

オックスフォード・ユニオンでのリーダーとの対話

「オックスフォード・ユニオン」とは伝統的なディベートクラブで、毎日のようにディベートやゲストスピーカーによる講演が行われています。

ディベートや講演に来るゲストが非常に豪華で、どこかの国の大統領、グローバル企業の経営者、ハリウッドスターといった著名人がスピーチを行い、元CIAエージェントや政府高官などが学生とディベートを行っているのです。

そして、多くの場合スピーチやディベートの後に隣接したパブで直接ゲストとビールを飲みながら会話をすることができます。

私もたまに顔を出していますが、例えば、スターウォーズ新シリーズの監督のJ・J・エイブラムスやレッド・ツェッペリンのギタリストのジミー・ペイジ、デザイナーの山本耀司氏(ヨウジヤマモト)、その他多くの大物達とパブで直接会話をすることができました。

こうしたリーダー達との会話や議論を通じて自身が抱いている疑問やアイディアを直接彼らにぶつける事ができるし、自身が目標となるようなリーダー像を見つける事ができるのです。

ちなみに、このディベートクラブ「オックスフォード・ユニオン」の歴代会長は往々にして政治家や政府の高官になったりします。

教養・人格を磨くフォーマルディナー

オックスフォード大学では、「フォーマルディナー」と呼ばれる食事会が定期的に開催されています。

ハリーポッターの映画のような食堂(実際にハリーポッター映画のロケ地になっています)にブラックスーツなどのフォーマルな服装で赴きます。学生や教授達と食事を共にすることで、社交性や知性を磨き、信頼関係を築き、人格を鍛えるのです。

カレッジのディナーホールに入る前に、プレドリンクとしてバーでシャンパンなどが振舞われます。そしてディナーホールに入って、基本的に3品~4品くらいのコースディナーを頂きます。、ディナーの味はカレッジによってまちまちです。

ちなみに私の所属するグリーン・テンプルトン・カレッジのディナーはオックスフォード大学で一番美味しいと評判でした。

隣に座る人は、大抵は優秀な学生や研究者であるので、こういった食事の場での会話はリーダーに必要な教養や人格を養う場として機能しています。

▼ベリオール・カレッジのディナーホール

「利益よりも社会的価値」共創型のリーダー教育

最後に筆者が所属するMBA教育におけるユニークな点をご紹介したいと思います。

MBA(経営管理学修士)と聞くと、誰しも経営学やビジネスを学び、会社の利益を最大化する術を学ぶ場だと思いがちなのですが、オックスフォード大学のMBAプログラムでは、明確に「利益よりも社会的価値を重視しろ」と教えています。そうすれば利益は後でついてくるという考え方なのです。

MBAプログラムの中で、事あるごとにソーシャルインパクト(社会的影響)を与えるリーダーになれと繰り返し言われます。

事業を行うときには、「多くの人が抱えている課題か」、「社会的意義はあるか」といった観点で社会・人・環境などに貢献するソリューションを考えるように言われます。

この社会起点で考える思想が多様な考えを生む源泉になっていると同時に、同級生・卒業生の間ではもはや共通言語となっていると感じます。

あらゆるプロジェクトを行う際、「社会的な課題は何か」という根源的な問いを最初に問いかけて課題解決をしていく姿勢は同級生・卒業生に定着しているといってよいです。その為、卒業後は社会起業家になったりする人が多いです。

アメリカ式のリーダー教育は「アメリカが世界のリーダー」と教え、強い「個」を生み出すというような印象です。例えば、ハーバードビジネススクールなどでは生徒同士を競争させ、厳しいスパルタ式の教育で知られています。

アメリカのビジネススクールはアメリカ人がクラスの半分以上ですが、オックスフォードではイギリス人は6.7%しかいません。

オックスフォードでは多様性の中で「他の人の能力を引き出す」のがリーダーの役目だと教えるので、互いに人の良いところを引き出す「共創型」のリーダー教育だと感じます。

そのせいか、学生同士で競争しているという意識は全くなく、色々なバックグラウンドの学生と協力しながらアウトプットを出していくようなスタイルでありました。

MBAには「スタディグループ」と呼ばれる、一年を通して一緒にプロジェクトや勉強をする仲間がいます。私のグループは、アメリカ人の社会起業家、南アフリカ人の会計士、カザフスタン人の研究者、ケニア人のファンドアナリスト、中国人の国際機関職員というこれ以上ないくらいの多様性に溢れたチームでした。

他にもイギリス貴族やオリンピック選手などと一緒にプロジェクトをやったりもしました。

以上のように、オックスフォード大学では歴史と伝統を生かした、他では真似できないユニークな教育方法や学習の仕組みによって世界的なリーダーを生み出しているのです。

世界ランキング1位のオックスフォード大学に入学するのは、「自分には無理」としり込みする方もいるかもしれません。しかし、もしこの記事を読んで、オックスフォード大学に興味を持ったのなら、ぜひチャレンジしてみてください。

私は元々英語・勉強が得意ではありませんでしたが、独自の方法で勉強をして苦手意識を克服し、オックスフォード大学に留学することができました。

効率的な方法で学習をすればオックスフォード大学に入学するのは不可能ではないですし、オックスフォード大学での学業・生活は間違いなく人生を変えるほどの経験になると思います。

筆者

西垣和紀
高校中退後、仕事を転々としながら荒んだ生活を送るが、とあるきっかけで人生を変える。
経営コンサルタントになることを志しアメリカに渡り、西海岸の名門カリフォルニア大学サンディエゴ校に入学。卒業後、グローバル・コンサルティングファームで念願の経営コンサルタントとして働く。その後、Times世界大学ランキング1位のオックスフォード大学大学院MBA(経営管理学修士)課程に入学。
現在はMBA課程に在籍するかたわら、ロンドンのテック系企業で戦略担当シニアバイスプレジデントとしても活動している。
著書:オックスフォード大学MBAが教える人生を変える勉強法

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