夏休みにアメリカで有給アルバイトが経験できるワークトラベルとは 〜大川彰一(国際教育コンサルタント)

留学先として人気ナンバーワンの国、アメリカ。一度はそのアメリカで働いてみたいと考えたことがある人もいるのではないでしょうか。カナダやオーストラリアでは「ワーキングホリデー制度」というものがありますが、アメリカには残念ながらその制度はありません。ただし、大学生には「ワークトラベル制度」というものがあります。

アメリカで有給アルバイトが可能

夏の時期にアメリカを旅行していると、現地のホテルやレストランなどで大学生くらいの若者が働いている姿を目にすることがあります。実は彼らは、「ワークトラベル制度」を利用してアルバイトをしている学生であることが多いのです。

ワークトラベル制度は、国務省が監督をしているJ-1(交流訪問者)ビザを活用したプログラム。。J-1ビザとはアメリカでの交流を目的としたビザの一種で、交換留学やインターンシップ、オペア留学など10種類以上に分かれます。ワークトラベル制度はその中のカテゴリーの一つで、学生を対象にした就業体験プログラムとなっています。

参加できるのは大学生もしくは大学院生(1セメスター以上終えている必要があります)で、日本から渡航する場合は夏休みのみ参加が可能です。

実はこの制度、海外ではすごく人気があり、毎年ヨーロッパ、アジア、オセアニアなど世界中から15万人が参加して、英語力の向上だけでなく、アメリカの就業経験を通じて自己成長する機会を得ているのです。

社会のグローバル化に伴い、日本からも近年、大学生の参加が増えています。今までに参加した学生の中から二人のケースを見ていきましょう。

ケース1 東京の私立大学生 Mさんの場合

都内の大学に通うMさんは外国語学部2年生の夏休みにワークトラベルに参加しました。

行き先は、世界自然遺産にも指定されているモンタナ州のイエローストーン国立公園にある大きなホテル。そこで彼女はフロントデスクのアルバイトを6週間経験したのです。

▼イエローストーン国立公園

外国語学部では英語を専攻していましたが、周りの帰国子女のクラスメイトに比べて英語に自信がなかったMさんは、以前高校時代に短期ホームステイをしたアメリカ人のホストファミリーから、自然いっぱいの国立公園でアルバイトができることを聞き、日本でも参加が可能なことを知って応募したと言います。

4月下旬に雇用主とのスカイプ面接や書類審査があり、アメリカ大使館での面接を経て、無事にJ-1ビザを取得、8月初旬から9月中旬まで参加することにしました。

アメリカには以前ホームステイで来た経験があったものの、今回は基本的にすべての行程を自力で動かなくてはなりません。飛行機の乗り継ぎ、空港からホテルまでの移動、アルバイト関係の書類の手続きなどをこなし、ホテルでもアメリカ人の上司の指示の元で働くといういわば「武者修行」的な要素に最初は戸惑いを隠すことができませんでした。

ただ、海外から来ている同じ大学生のホテルの同僚は、その何でも「自分でこなす」ということを当たり前のようにやっていたので、自分もやるしかないという気に成らざるをえなかったそうです。同僚も中国やスイス、イタリアなど全く違うバックグラウンドを持った大学生が集まってきていて、バイトが終わった後には食堂で話したり星を見に行ったりして、お互いの国のことや将来について語り合ったのも素晴らしい経験となりました。

▼イエローストーン国立公園

もともと大人しめな印象の方でしたが、6週間のプログラムが終了し帰国した後は、自分の意見をはっきり論理的に説明が出来、軸を持った人生観を持った素敵な女性に成長されていて驚きました。現在は旅行会社に就職され、チームリーダーとして活躍されています。

ケース2 沖縄の私立大学生 Kくんの場合

沖縄の国際系の大学に通うKくんも2年生の夏にワークトラベルに参加しました。彼は英語が大の苦手。ホテル業界への就職を志望していた彼は、このままでは就職も厳しくなると、英語の克服と自分の殻を破りたいという動機でワークトラベルへの参加を希望しました。

彼が渡航先として選んだのは、ワシントン州シアトル郊外にあるピザ屋さん。出発初日からかなり波乱含みでした。

空港にはついたものの、そこから先の移動方法がわからず、唯一の移動手段である長距離バスは明日しか出発しないということ。結局、知っている英語の単語を並べて、近くのホテルに宿泊して翌日に移動することになりました。

翌日からピザ屋さんでのアルバイトがスタートしたのですが、夏のピーク時期のため、彼が最初に担当したテイクアウトの会計係は目の回る忙しさ。ランチタイムには行列ができるほどです。ここで「英語の壁」にぶち当たりました。お客さんの注文が聞き取れないのです。「I’m sorry」と「one more time?」を何回も繰り返してしまい、上司にも怒られてしまいました。

いつもは前向きな彼もその日は落ち込んでしまったと言います。翌日からはよく聞かれるパターンの注文を紙に書いて、Q&Aを作ってから臨むことにし、徐々に周囲の信頼も取り戻していくことに成功しました。

彼も6週間の参加でしたが、彼本来の明るい性格も現地のアメリカ人にも好かれて、短期間ながらローカルの友人もできて充実した夏休みを過ごしたようです。ちなみに翌年も同じプログラムに参加し、今では流暢な英語を話すまでに成長して沖縄のホテルで活躍しています。

専門家の視点で考える成功のポイント

ワークトラベルはJ-1ビザの他のインターンシップと比べて、夏のピーク時期の業務でありアルバイト的要素も強いため、気力・体力ともに充実させて臨む必要があります。筆者も現地の就業先を訪問した際、最初の1週間は疲れている学生の様子を目にしました。ただ、2週間目あたりからは、仕事にも現地の生活にも慣れてアメリカ人の上司や同僚からの信頼度も増してきたようでした。

英語力に関しては、「なんとかなるさ」という気持ちだけで参加してしまうと、Kくんのケースのように現地で困ることになりかねません。雇用主との面接にも対応できるように、しっかり英会話の練習をしてから臨むようにしましょう。

最後に、社会人でも参加可能なワーキングホリデーと違い、ワークトラベルは学生の間だけ参加可能な制度となります。通常の語学研修だけでは経験することができない海外でのタフな経験を積むことで、就職活動にアピールして外資系企業に就職する学生の例も出てきているようです。

トランプ大統領は就任前にJ-1ビザについて言及していて、今後のビザの動向も気になるところではあります。興味がある方はなるべく現行の制度が実施されている間に挑戦してみてはいかがでしょうか。

文:大川彰一(国際教育コンサルタント)
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