きらびやかで高いビルが立ち並ぶバンコク、にぎやかなスクンビット通りから車で15分ぐらいの所にそこスラムの中の子供たちの施設、シーカー・アジア財団があります。この施設は、日本とのつながりも深く、本記事ではそのボランティア活動の一コマを紹介します。
シーカー・アジア財団の活動
シーカー・アジア財団は、子どもや青年の教育支援を中心とした各事業に取り組んでいます。「コミュニティ図書館」「移動図書館」「奨学金」「保育園」「学生寮」といった事業、研修や交流プログラム、緊急救援活動、コミュニティ開発、スラム地区で暮らす女性に対する職業訓練、少数民族をはじめとした伝統文化継承活動も行っています。
学校を終えた子供たちはシーカ―・アジア財団に集まってくるので、日本の学童保育のような役割も担っています。
スラムの現状
シーカー・アジア財団のあるクロントイを訪れると、気さくな街の人に笑顔で声をかけてもらえます。スラムと言えば暗いイメージもありますが、クロントイからは明るさも感じます。
しかし、路地に一歩踏み込むと状況は一変します。道幅は、人が一人通れるほどの狭さです。すぐそばには、生活用水が流される溝がありそこには蓋はされていません。雨が降るとあふれ、悪臭がします。近くを通る線路のギリギリまで家が立ち並んでいます。タイの薬物問題はスラムにもあるため、暗がりの路地では、子供たちは怖い目に合うこともあります。
シーカー・アジア財団と日本のつながり
シーカー・アジア財団のルーツは、1979年に設立された曹洞宗東南アジア難民救済会議(JSRC)のカンボジア難民救済活動に遡ります。JSRCは、1981年12月に曹洞宗ボランティア会(SVA:現公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)に引き継がれ、同団体のバンコク事務所として1991年まで活動しました。その後、1991年9月に現地法人化されシーカー・アジア財団が誕生しました。日本とのつながりが深いこともあり、ボランティアに行くとよく日本からの見学者に会います。
図書館には、日本の本がたくさんあります。私も小さいときに読んだ絵本に出会います。つい、懐かしく絵本を読んでしまうこともあります。そこへやって来た子供たちに、日本語で読み聞かせても興味を持って聞いてくれます。タイ語、ミャンマー語などに訳されていますが、翻訳を待っている本もまだまだあります。
図書館では、人形劇シアターも行われています。人形劇シアターは、移動図書館と共に他の街に行くこともあります。
エプロンシアター「桃太郎」子供たちに大人気
私が訪れた日は人形劇シアターの桃太郎が演じられていました。キラキラした眼で人形劇を見る子供たちは日本と同じです。太鼓のバックミュージックがあったり、一緒に掛け声をあげたり日本の昔話が自然に受け入れられていきます。最後に桃太郎の本があること、図書館にあることが紹介されます。
人形劇から本への興味、そして桃太郎の本から他の本へと繋がって行くのです。
私たちはエプロンシアターの人形絵本「三びきのやぎのがらがらどん」を制作しました。制作した絵本はボランティア仲間の日本人とタイ人のスタッフでインターナショナル、エプロンシアターが行われる予定です。
自宅がクロントイだと言うと、スラムのイメージから良い印象が持たれません。社会からの眼、実際目の前にある貧困から、子供たちは学びの機会に出会えません。
タイでは、日本のように福祉制度が整っていません。日本のような補助金、助成金などはありません。多くの施設は、寄付金で運営されています。
日本の福祉制度は、サービスを選択できるほど多様になっています。貧困に対するセーフティネット制度もありタイに比べれば充実していることがここに来るとよく解ります。
「シーカ」はサンスクリット語で「教育」の意味があります。言葉通り、教育から未来が開ける場所であって欲しいと思います。図書館の窓からいつも注がれているお日様のように。
取材協力 シーカ―・アジア財団 http://sikkha.or.th/jp/
文:Sazu Iwai-Pawle(タイ バンコク在住ライター)
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