人口の75%がイスラム教徒であるインドネシアでは、イスラムの教えによる祝日は国の大切な祝日です。中でも、イスラムの聖地メッカへの大巡礼の最終日に行われる「犠牲祭(Idul Adha)」は断食明けのお祭りに次ぐビッグイベント。しかし、日本人にとっては全く馴染みのないこの祝日。一体どんな日なのでしょうか。
名前は少し怖いけど・・・
何も知らないまま「犠牲祭」と聞くと、少し身構えてしまいますよね。しかし、決して怪しいお祭りではありません。
犠牲祭の目的は牛や羊の肉を貧しい人に分け与え、そして神に捧げることです。そのため生活に余裕がある家庭では、犠牲祭前に牛や羊を購入したり、もしくはイスラム教の寺院であるモスクに寄付したりして、犠牲祭当日にそれらをト殺、解体し、地域の人々に配ります。
犠牲祭を目前に控えた街中では、番号を書かれた牛や羊があちこちに見られます。ちなみに牛は1頭10~15万円ほど、羊は1匹1万~1.5万円ほどとされています。大卒初任給が2万円ほどのインドネシアではとても大きな買い物になります。
犠牲祭は前夜から始まります
犠牲祭前夜、モスクの拡声器からはイスラム教のお祈りの言葉が響き渡ります。
お祈りは深夜まで鳴り響き、モスク周辺はお祈りに参加する人々でにぎわいます。筆者も含め、モスクの近くに住んでいる外国人にとっては寝不足に苦しむ夜の始まりです。そして翌朝、これまた早朝からお祈りが始まります。
一連のお祈りが終わると、いよいよメインイベントとなる動物の供儀が始まります。
儀式はプロフェッショナル達による早業
儀式を目前にしたモスク裏の広場に行くと、大きく穴を掘られた地面と、その横に作業台になるであろうレンガで作られた小さな台がありました。その奥には大量の牛や羊が縄につながれています。
おそらく聖職者であろう正装をした男性がお祈りを始めると、前触れもなく儀式は始まりました。
男性2名でヤギを連れてきたかと思うとテキパキと台に横たえ、大きなナイフを持った男性がのど元を一気に切ります。ある程度血を抜いた後で後ろに設置してある木の棒にさかさまに吊り下げられ、そこで解体されます。その作業はとても早業で、グロテスクとは程遠い光景でした。
その後解体された肉は綺麗に均等に分けられ、地域住民に分けられていました。
こちらの犠牲祭、儀式には子供も駆け付けて動物たちの運命をにぎやかに見守ります。興味半分で見に来てしまった外国人である筆者も、「もっと前でよく見たら良い」「あの牛は絶対に美味しいぞ」などと快く迎えてくれました。インドネシアのイスラム教徒のおおらかさを感じた一日となりました。
日本人にはなじみの薄い犠牲祭。命が命を支えていることを思い出す機会なのかもしれませんね。
文:aya ogawa(ライター)
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