海外で盗難にあったとき、どんな対応をするべきかご存じでしょうか。基本的には日本と同じなのですが、警察や保険会社などでの手続きが少し異なります。だからこそ、あらかじめどんな手続きがあるか把握しておけば、緊急時も落ち着いて対応できると思います。
今回の記事では、実際に私がベルリンでノートパソコンを盗まれてしまったときの経験を元に、ドイツで盗難被害に遭った時の対処法について詳しくご説明します。
最初にお世話になったのが警察。提出した書類例のほか、実際に聞かれた質問をお伝えしますので、万が一のために想定問答を作っておくことができます。
次にお世話になったのが日本大使館。居住地によって管轄の大使館が異なるので、あらかじめチェックしておくのもよいかと思います。
そしてクレジットカード会社や保険会社とのやり取りもご紹介します。
最後に「不審人物の見分け方」についても触れていますので、ぜひ防犯のためにもご覧ください。
警察との対応
まずは身の安全を確保
盗難被害にあったら、なによりもまず身の安全を確保します。特に、強盗の場合は複数人での犯行である可能性が高く、携帯を取り出したタイミングで再び襲われる可能性があります。また、抵抗や追跡を行ったためにナイフで刺されたという事例もありました。
→ 外務省「海外邦人事件簿|Vol.43 命あっての物種、強盗犯には抵抗しない」
被害に遭ったらすぐに近くのホテルやスーパー (個人のお店はNG) に駆け込み、とにかく命を守ることに専念します。通報は身の安全が確保されてからです。
警察に通報
ドイツでも警察の番号は110です。SIMカードが無い携帯でも通報できますし、もし携帯ごと盗まれてしまってもホテルなどで借りられます。
電話を掛けるとすぐ担当の方に繋がりますので、「Do you speak English?」などと聞けば、英語を話せる方に変わって頂けます。
私のときは通話中に以下の内容を質問されました。
・現在地
可能なかぎり詳しい住所を伝えます。道の角の表示板と建物のプレートで確認できます。もし見つからなければ、電車やバスの駅名を伝えます。
・犯行現場
同様に、可能な限り詳しい住所を伝えます。
・盗まれたもの
財布や携帯など、主に盗まれたものを伝えます。
・電話番号
担当の方が住所を聞き間違えたときや、パトカーが道に迷ったときに折り返し電話がかかってきます。逆にこちら側から新しく何かを伝えたいときは再び110をします。
事情聴取と被害届の提出
警察官が到着後、事情聴取が行われます。犯行の目撃者を確保できればより良いですが、身の安全を確保するのが第一です。説明の際には誤解を避けるためにも必ず紙とペンも同時に使いましょう。時系列にそって状況を説明し、盗まれたものを思い出せる限り伝えます。
私が事情聴取で聞かれた内容は次の通りでした。
・盗まれたもの
盗品のブランドや色、年式などできる限り詳しく伝えます。シールやネームタグなど特定に繋がりそうな特徴があれば必ず伝えます。
(例. Surface Pro4、Microsoft、本体はシルバー、キーボードは赤、2016年製)
・住所
滞在しているホテル、もしくは住んでいる家の住所を伝えます。後日警察署から書類が届きます。
事情聴取が完了すると、被害届の受理証明書 (Bestätigung einer Strafanzeige) とい重要な書類が発行されます。この書類には受理番号 (Vorgangskennung) が書かれており、以降のすべての手続で必要です。紛失する可能性を考えて、もらった時点で写真を撮って保存しておきましょう。
▼被害届受理証明書
後日指定した住所に警察署から書類が郵送
被害届を提出してから1週間程度で書類が郵送されます。封筒は灰色で警察署の判子が押されているのでわかりやすいです。この中には以下の書類が入っています。
①書類の説明が書かれているプリント
②犯行の内容を記入するプリント
③盗まれたものを記入するプリント
④返信用の封筒
※すべてドイツ語でした。ドイツ語に自信がない方の場合はGoogle翻訳などの翻訳アプリで訳す必要があります。
説明にしたがってそれぞれのプリントに記入し、返送用の封筒に入れて郵送します。
大使館との対応
大使館に連絡する
被害に遭った地域ごとに管轄する大使館が異なります。
在ドイツ日本国大使館 (ベルリン) | ベルリン州、ブランデンブルク州、ザクセン州、 メクレンブルク‐フォアポメルン州、 ザクセン‐アンハルト州、テューリンゲン州 |
在ハンブルク総領事館 | ブレーメン州、ハンブルク州、 ニーダーザクセン州、 シュレスヴィヒ-ホルシュタイン州 |
在デュッセルドルフ総領事館 | ノルトライン-ヴェストファーレン州 |
在フランクフルト総領事館 | ラインラント‐プファルツ州、 ザールランド州、ヘッセン州 |
在ミュンヘン総領事館 | バーデン-ヴュルテンベルク州、 バイエルン州 |
大使館の連絡先はこちらのページで確認できます。
→ 在ドイツ日本国大使館「在ドイツ日本国大使館及び総領事館一覧表」
大使館でできること
大使館ではパスポートや免許証の再発行が可能ですが、それ以外は基本的には不干渉です。事件の内容は大使館が記録してくれますので、後日進展があった際に警察とのやり取りを仲介して頂けます。
パスポートの再発行方法はこちらをご確認ください。
→ 在ドイツ日本国大使館「パスポート」
クレジットカード会社との対応
電話やメールでクレジットカード会社に連絡し、カードを停止します。盗難・紛失デスクは24時間・年中無休対応ですので、状況が落ち着き次第すぐに連絡します。
再発行などの手続きは会社の指示に従います。この時にも被害届のスキャンや受理番号が必要になります。
保険会社に携行品損害保険の申請
契約している海外旅行保険を確認
保険会社のホームページ等から連絡先を確認して連絡します。特定の海外旅行保険に入っていなくても、クレジットカードに自動付帯で保険がついていることもあります。
筆者は三井住友カードの海外旅行保険に申請しました。この時の手続きは以下の通りでした。
① 専用の窓口に連絡する
旅行先によって窓口が異なりますので、このページで確認します。
→ 三井住友カード「VJデスク ダイヤル一覧」
電話で被害の状況などを説明した後、案件IDとメールアドレスをメモします。
② 指定のアドレスにメールして申請書類を受け取る
件名に案件ID、本文に名前を入力してメールを送信します。その後、担当の方から提出する書類のPDFが送られます。
③ 書類を印刷して必要な内容を記入し、指定の住所に郵送する
ドイツの場合、コピーショップもしくはドラッグストアの『DM』で印刷が可能です。印刷の際にはUSBやSDカードにデータを入れておきます。もしPCが無くてもDMならBluetooth経由で印刷が可能です。
印刷後は書類の指示に従って記入していきます。すべての書類が完成したら封筒に入れて指定の住所に郵送します。また、書類に不備があった場合は②で使ったアドレスにメールが来ます。
手続きがすべて完了すると指定の口座に保険金が振り込まれます。
盗難を防ぐのに養っておきたい「不審人物」の見分け方
海外旅行中に注意すべき人物の特徴を筆者の経験をもとにご説明します。
金銭関係で話しかけてくる人は絶対に信じない
「持ってきたクレジットカードが使えなくて困っている」「シャワー中に荷物が盗まれてお金がない」「両替を忘れてユーロが無い」。これらは筆者が実際に言われたことです。
つい先日もフランクフルトでクレジットカードに関わる事件がありました。
→ 在ミュンヘン日本国総領事館「第627号:クレジットカード詐欺に対する注意喚起」
そもそもドイツにいながらドイツ人ではなく日本人に話しかける時点でおかしいです。どれだけ相手が困っているように見えても、心を鬼にして無視するのが安全です。
気さくに話しかけてくる人はまず疑う
突然異性が話しかけてきた場合は特に危険です。以前イタリアで邦人男性を狙うスリ集団がニュースになりました。集団は美人の女性で構成されており、一緒に写真を取りたいという旨で油断させているうちに盗むという手口でした。
信頼できそうな人であっても、まずはお互いの自己紹介を徹底します。正しい目的で話しかけてきたなら、自身の職業や所属、SNSを見せてくれます。もし渋ったり偽っている様子であれば、すぐに立ち去るべきです。
乱れた服装は要注意
汚れや臭いが目立つ服装の人物は、ホテルに不法侵入している可能性があります。特にゲストハウスなどドミトリータイプの部屋では注意すべきです。たとえキーカードなどでセキュリティがかけられていても、部屋の誰かが犯人に善意で貸してしまい、侵入されてしまうことがあります。この事例を筆者は2回経験しています。
これらの特徴の人物を警戒するのはもちろんですが、自分自身でも防犯対策を行わなければなりません。1人でいる、スマホに集中している、イヤホンをつけているなどの特徴があると、狙われる確率が上がります。
盗難後の対応の簡易まとめ
それぞれの項目での内容を簡易的にまとめました。
警察
・まずは身の安全を確保
・110で警察に通報
・事情聴取のときは紙を使って詳しく説明
・受け取った書類は絶対に無くさない
大使館
・パスポートと免許証のみ再発行可能
クレジットカード
・クレジットカードが盗まれたら会社に連絡して停止
保険会社
・契約している海外旅行保険のHPを確認して連絡&手続き
・申請書類を提出し、保険金を受け取る
どれだけ安全な国でも犯罪は必ず起こります。日本でさえ1年で53万件の盗難事件 (2019年) が発生しています *1。海外であれば犯罪に巻き込まれる可能性はさらに高くなります。楽しい旅行・留学にするためにも、防犯はより一層気を配らなければなりません。
*1 警察庁「犯罪統計資料(平成31年1月~令和元年12月【確定値】」