脱ガラパゴスなるか?フィリピン英語学校グローバル化への分岐点 ~星野達彦(国際教育事業コンサルタント)

英語圏を中心に600校以上の学校を視察し、この10年間のフィリピン留学もウォッチしてきた筆者が、欧米諸国の留学生向け英語学校のグローバルスタンダードとは違う、独自の進化を遂げてきたフィリピン英語学校のグローバル化への兆しを紹介する。
 

フィリピン英語学校がガラパゴスな理由

フィリピン英語学校のグローバル化の説明の前に、そもそもなぜ彼らはガラパゴス化しているのか、何が英語学校のグローバルスタンダートと違うのかを説明したい。
 
1 韓国人による英語教育ビジネスイノベーション
韓国人の英語教育ビジネスイノベーションなしに、現在のフィリピン英語学校は語れない。もともと、同じアジアにあり、英語が公用語で人件費が安いフィリピンを、英語教育の場として活用すること、そしてそれを使った英語教育ビジネスモデルを構築したのは韓国人である。フィリピンに現有するほとんどの英語学校が、このビジネスモデルを踏襲している。
 
なぜイノベーションを起こせたかを、私なりに分析すると、このビジネスモデルを作った韓国人たちが、ある意味、世界の英語学校の実情やスタンダードを全く気にしないで、自分たち韓国マーケット目線で、最適な英語学校を作ったからだと思っている。自国内や欧米英語留学では解決できない、英語学習の費用対効果の課題を踏まえてデザインされたのが、フィリピン英語学校のモデルであったといえよう。
 
つまり以下のようなロジックでフィリピン英語学校の特色を作ったと推察できる。
 
・マンツーマンレッスン中心スタイル ← グループレッスンより英語力がつく。賃料や人件費が安いのでそれでも欧米学校より安く提供が可能。
 
・学校+食住のオールインワン化(ボーディングスクール型)← 軍隊式のスパルタ&管理詰め込み教育により短期間で誰でも英語力アップ。治安問題も解決。親も安心。
 
2 英語学校のグローバルスタンダードとフィリピンスタンダードの違い
次に欧米を中心にした英語学校業界のグローバルスタンダードと、フィリピンスタンダードの違いについてここでおさらいしてみたい。
 
フィリピン英語学校グローバル化への分岐点1
 
このようにフィリピン以外の英語留学受入国ではイギリスでもアメリカでもオーストラリアでもこのグローバルスタンダードでの学校形態になっている。いかにフィリピン英語学校がガラパゴス化しているのかがわかるだろう。
 
ただ、私は「ガラパゴス化」が単に悪いことだと思っていない。逆に費用対効果に厳しい韓国人がクリエイトし、10年以上にわたって、厳しい韓国人消費者に鍛えられてきたフィリピン英語学校のモデルは、ある意味グローバルスタンダードの英語学校モデルを部分的には凌駕するアドバンテージさえも持っていると思っている。
 

フィリピン留学2.0の時代の兆し

私が10年ほど前からウォッチしてきたフィリピン留学だが、この3年ほどで大きくその様相を変えつつある。その理由は大きく以下の2つあると分析している。
 
(1) 韓国経済の低迷による韓国人留学生の減少
(2) 日本人経営の学校の増加による日本人留学生の増加
 
その結果、韓国系学校の淘汰や一部の日本人経営学校の躍進が目立つようになってきた。また、韓国系学校も日本人マーケットを無視できなくなり、日本人向けのサービス(日本人スタッフの配置や日本食の提供など)を積極的に提供するようになってきた。
 

グローバルマーケットを意識した学校の出現

そのような状況の中、初めからグローバルマーケットを意識して作られた学校も出てきた。
 
私が訪問したIDEA Academiaは昨年(2015年)オープンしたそんな学校の一つである。ここで私がそう感じたいくつかの理由を紹介したい。
 
・世界と戦える素晴らしい学校施設
セブ市中心にも近い近代的なオフィスビルの16階の最上階フロアすべてを学校として使っており、モダンで居心地が良い空間に設計されている。狭く閉鎖的になりがちなマンツーマン専用のレッスンスペースも、オープンで落ち着いた作りになっていた。椅子やソファーをふんだんに設置し、学生同士がゆったりくつろげる、エリアも充実している。
 
▼開放的だが集中できるマンツーマンレッスン専用スペース
フィリピン英語学校グローバル化への分岐点2
 
▼学生がゆったり寛げるスペースを十分に配置
フィリピン英語学校グローバル化への分岐点3
 
・脱韓国食&脱日本食一辺倒のカフェテリア
驚いたことに、この学校の食堂ではほぼ毎食サラダを提供している。これはサラダを食べる習慣のないフィリピンでは画期的なことである。16階からの素晴らしい眺望を持つカフェテリアには、側壁に映画を映し出す天井設置型プロジェクターもあった。
 
▼日本食や韓国食だけでなく欧米食も取り入れたメニュー。サラダやデザートも付く。
フィリピン英語学校カフェテリア
 
・脱スパルタ管理の学校方針
フィリピンの多くの学校は悪く言えば管理詰込み型教育のカリキュラムを取り入れている。朝7時から単語確認テストをやっている学校も少なくない。
 
IDEA Academiaではグローバルマーケットを意識して、学生の自主性を尊重する方針をとっている。滞在先も学生が学校に隣接する学生寮だけでなく、ホテルや自炊ができるシェアハウスなどのタイプを選べるようになっている。(シェアハウスは2016年1月現在まだ提供されていない)
 
・世界へ向けた学生募集活動を展開
私が一番フィリピン留学の欠点だと思うのは「学生の国籍ダイバーシティの低さ」だ。
 
前述したとおり、現状、フィリピンの英語学校では日本人と韓国人の学生比率がほぼ8割以上という学校が殆どである。実際、IDEA Academiaでも現状(2016年1月現在)はほぼ100%が日本人学生だが、台湾、ロシア、タイ、インドネシアなどから学生を募集すべくマーケティング活動を昨年から積極的に展開している。今後その成果が出てくることが予想される。
 

フィリピン留学グローバル化は必然か?

これまでフィリピン留学のガラパゴスポイントと新世代の学校の出現について述べてきたが、ここでフィリピン留学の今後を私なりに予想してみたい。
 
・グローバル化の流れ
比較的規模が大きい学校を中心に、グローバル化の流れが加速する。まずは韓国と日本以外からの学生を積極的に獲得するマーケティングが強化される。当初のターゲットは台湾、ロシア、ベトナム、タイが中心になるだろう。募集コストが大きい、欧米の非英語圏や南米からの学生に関しては、その次のフェーズになると考えられる。
 
・専門特化の流れ
資金的余裕がある大手の学校以外は、上記のような新たなマーケットでの学生募集は困難である。そのような学校は、「日本人専用学校」「韓国人専用学校」「スパルタ学習特化型学校」「医療英語専門学校」「TOEFL等試験対策専門学校」のように専門特化していくことが考えられる。
 
・エデュツーリズムの流れ
フィリピンの素晴らしい自然環境を利用した、全く新しいコンセプトの学校がもっと増えてくると思われる。現在でもセブのビーチリゾートや、パラワン島にも英語学校ができている。ビーチでのんびりしながら、ゆったり学べる学校が増えてくるだろう。このコンセプトなら、学生向けと感じて今までフィリピン留学を避けていた社会人やシニア層、そして欧米や南米の学生や旅行者を呼び込める。
 
上記のように一部専門特化の流れはあるが、全体としてフィリピン留学は確実にグローバル化していくと思われる。もはや韓国と日本マーケットだけに頼っていては学校経営が成り立たないし、英語学習環境の整備を考えても、施設などのハードの部分だけでなく、学生の国籍ダイバーシティ、学食のメニュー、柔軟なカリキュラムなどソフト部分の改革を断行し、グローバルマーケットから選ばれる学校になることが今後の生き残りのカギになるからだ。
 
この様にどんどん変わっていくフィリピン留学事情を今後も楽しみにウォッチしていき、皆さんにレポートしていきたいと思う。
 
文:星野達彦(国際教育事業コンサルタント)
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フィリピン英語学校グローバル化への分岐点3
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