政治学を海外大学・大学院で学ぶ|公共政策学との違いやランキング、授業、卒業後のキャリアを解説

「政治学(Political Science)」と聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか。

政治家や官僚を目指す人が学ぶ場所、難しそう、自分には縁がなさそう…そう感じている人もいるかもしれません。

実際には、政治学は今、世界でもっとも幅広いキャリアにつながる学部のひとつとなっています。

国際機関、シンクタンク、メディア、外資系企業、NGO、コンサルティング…
卒業生が活躍する場所は「政治」という言葉を超えて大きく広がっています。

なぜそんなに広いキャリアで必要な人材になれるのでしょうか?
その理由は、政治学で身につくものの性質にあります。

「なぜこの国は安定しているのか」
「なぜあの地域は紛争が続くのか」
「この政策は誰のために設計されているのか」

そうした問いを深く考え続けるのが政治学です。そこから、どんな業界でも求められる批判的思考力・論理的な発信力・構造を読む力が鍛えられます。

また、海外の大学で学ぶことには、もうひとつ大きな意味があります。同じ教室に、異なる政治体制や文化的背景を持つ学生が集まり、同じ問題を全く違う視点から論じ合う。その経験そのものが、教科書には書かれていない最大の武器になります。

この記事では、将来、国際社会でキャリアを築きたい方、政治や社会について幅広く学びたい方のために、海外の大学で政治学を学ぶメリットや、日本の大学との違い、卒業後の進路まで、幅広く解説していきます。

「なんとなく気になっている」という段階の方でも、読み終わるころには自分の未来との接点が見えてくると思います。ぜひ自分に照らし合わせながら読んでみてください!

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政治学とはどんな学問?

海外大学・大学院で学ぶ政治学留学

政治学は社会科学分野のひとつです。国家・政府・公共機関の仕組みや、法律、政策、権力の行使、国際関係などを総合的に知り、研究します。

「社会はどうあるべきか」「より良い政治とは何か」を探求し、現代社会の動きを理解する視点を養います。

そのため、政治学専攻で扱うテーマは多岐にわたります。

▼例

・民主主義とは何か
・選挙制度や政党の仕組み
・政策決定のプロセス
・国際紛争や外交戦略
・環境政策、人権問題

政治学と公共政策学の違いとは?

政治学と混同されやすいのが「公共政策学」です。この2つは密接に関係していますが、目的とアプローチに違いがあります。

政治学が、比較的「分析」に重点を置くのに対し、公共政策学は「実践的な解決策」に重きを置くという違いがあります。

政治学公共政策学
・テーマは政治理論、制度、政治行動の理解

・政府の形態(地方・国家・国際レベル)、政治思想、政治機関、政治プロセスについて学ぶ

・授業内容には比較政治学、国際関係論、政治理論、アメリカほか地域政治など多様な分野が含まれる

▼卒業後のキャリア例
・政府機関
・国際機関
・NGO
・シンクタンク
・学術機関
・政治コンサルタント
・立法アシスタント
・政治広報
・研究者
・テーマは公共政策やプログラムの分析、設計、実施

・社会問題の解決方法や公共政策の有効性を評価する方法を学ぶ

・授業内容には経済学、政策分析、統計学、プログラム評価、政策実施などに関するテーマが含まれる

▼卒業後のキャリア例
・政府機関
・NGO
・コンサルティング会社
・研究機関
・政策アナリスト
・政治コンサルタント
・研究者

この2つの専攻には重なる部分も多くあります。ただ、政治学はより理論的で、政治制度の研究に焦点を当てています。

一方、公共政策はより実践的で、政策分析と実施を通じて現実の課題解決に取り組むことを重視しています。

政治学が向いている人とは?

海外大学・大学院で学ぶ政治学留学

世界の仕組みに関心がある人

政治学は、国家・国際社会・政治体制・政策決定の仕組みを学ぶ学問です。国際ニュースや選挙、外交問題に自然と興味を持つ人にはぴったりの分野です。

社会に対して問題意識を持っている人

社会課題(格差・移民・環境・戦争・人権など)に対して、自分なりの立場から関わりたいと思っている人に政治学は向いています。理論と知識を得ることで、自分なりの行動の軸、今後の行動の指針を持つことができます。

公務員・国際機関・ジャーナリズムなどに関心がある人

将来、官僚・外交官・国連職員・NGO職員・ジャーナリスト・政策アナリストなどになりたいと考えている人にとって、政治学は直接役立つ地力をつけるのにピッタリの専攻です。

批判的思考力(クリティカル・シンキング)を磨きたい人

政治学は、なにも「政治」の世界で活躍したい人だけが学ぶ学問ではありません。一般企業や教育機関でも幅広く役に立つスキルを磨きたい人にも向いている専攻です。

この政策はなぜ支持されているのか、なぜこの国同士が対立するのか。政治的な出来事には常にさまざまな視点があります。

政治学では「一つの正解」ではなく、複数の視点を検証する力が問われます。その視点と検証力は多彩な業界で役に立つスキルとなります。

ディスカッションやディベート力を磨きたい人

政治学の授業では、ディスカッションや論文が中心になることが多くあります。自分の意見をしっかりと持ち、他者と議論を交わすことが口頭・文章ともに日常的に求められます。

いずれ、どんな分野で仕事をしていくにせよ、発信力やプレゼン力、交渉力が大きな武器となっていきます。

学士号と修士号の違い

海外大学・大学院で学ぶ政治学留学

政治学の学士号プログラムと修士号プログラムでは、学びの深さと目的が大きく異なります。

学士課程(Undergraduate)修士課程(Graduate)
・幅広い政治理論・制度の基礎を学ぶ

・横断的・総合的に学び、専門性は限定的

・エッセイや討論、リサーチペーパー中心

・他の分野(経済学、歴史、社会学など)との組み合わせも可能

▼クラス例
・比較政治学
・国際関係論
・政治理論
・政治経済学
・より狭く深いテーマにフォーカス

・専門的な研究・分析手法を学ぶ

・論文執筆が重要な位置を占める

・専門職(政府、研究所、国際機関など)へのキャリア設計を意識

▼クラス例
・紛争解決と平和構築
・公共政策の評価手法
・EU政治、アメリカ政治、中国政治など地域研究
・政策実務とデータ分析

海外大学で政治学を学ぶメリットとは?

海外大学・大学院で学ぶ政治学留学

グローバルな視点が身につく

各国の政治制度や外交戦略の違いなどを教室で学ぶだけでなく、議論や発表を通じて国際的な視点を知り、取り入れることができます。

何より、海外で暮らすという経験自体が多角的な見方を育てることにつながり、自国の政治も相対的に見つめる意識が育ちます

多様な学生と議論する中で鍛えられる

世界中から集まる学生と近い距離で接することができるのは留学の大きなメリットです。

異なる意見や価値観に触れられるだけでなく、議論するための論理的思考力・コミュニケーション力も向上します。

実践的な学びができる

海外大学ではインターンシップやシミュレーション授業(模擬国連など)が多く取り入れられています。また、大学の立地ごとに地元の政府議会、NGOとの連携プロジェクト、地域コミュニティなどを通して、教室の外での学びも多く経験できます。

この英語力で政治学の授業についていける?

「英語で政治や国際関係を論じるなんて、自分には無理かもしれない」と感じて踏み出せずにいる人は少なくありません。

政治学のディスカッションや論文に必要な英語は、日常会話とは少し違う種類のものです。英語力そのものというよりも、論理的に整理し、どうシンプルに言語化して、どのタイミングで発言するかというテクニックがあると議論についていきやすくなります。

もし可能なら、入学前に大学付属の語学学校でアカデミック英語プログラムを受講するといいでしょう。そこでは、日常会話ではなく大学の授業についていくためのテクニックを教えてもらえます。

エッセイの書き方、スピーチのやり方、ディスカッションの参加の仕方など、実務的なスキルを上げることができます。

いまTOEFLスコアが足りていない人なら、その準備期間がそのまま入試対策にもなります。条件付き入学(コンディショナル・オファー)という仮合格制度を使うこともできますので、政治学部への入学自体も早める効率的なルートとなります。

国別のカリキュラムの特徴

国ごとに教育システムが違うため、政治学を学ぶ過程でも留学する国によってアプローチ方法が異なります。

もちろん大学ごとに方針がありますので、この表の内容があてはまらない大学もありますが、ざっくりと各国で重視している方向性についてまとめてみましょう。

特徴
アメリカ多彩で横断的な教育が特徴のリベラルアーツのなかで政治学を学ぶことからスタートし、のちに専門性を高めていきます。

選択肢が非常に豊富で、州・連邦政治、公共政策、倫理、ジェンダー政治など多岐に渡ります。
イギリスイギリスの大学は主に三年制です。
学部1年目から専門に特化しています。

伝統的に政治学分野に強い大学・大学院も豊富で、政治哲学や国際政治、欧州研究に強みがあります。
カナダ最初は社会科学全体の枠組みで基礎科目をスタートすることが多く、のちに専門性を高めていきます。

他民族国家ならではの移民政策・多文化共生などがテーマになることも多くあります。
オーストラリアオーストラリアの大学は三年制です。
英国と同じく、学部1年目から専門に特化しています。

実証的データ分析に強みを持つ大学が多く、実務との連携が強いのも特徴です。
フランスグランゼコール制度のもと、行政官養成的な政治学が中心となっています。
法律や経済と密接に結びつき、政策分析・公共経営にも強みがあります。

歴史的・哲学的な議論も多く、ディスカッション能力が鍛えられます。
ドイツ政治理論・制度・歴史に強く、比較政治学(政党・選挙制度など)や構造的研究が充実しています。

EU政策や環境政策への関心が高いのも特徴です。

卒業後のキャリアは?

海外大学・大学院で学ぶ政治学留学

海外の大学で政治学を学んだ後、どのようなキャリアにつながるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

政治学で学んだ卒業生は、国内外問わず幅広い分野で高く評価されています。

海外での進路の例日本での進路の例
・国際機関
・NGO職員
・外資系/多国籍企業
・大学院進学
・研究職 ほか
・官公庁
・地方自治体職員
・シンクタンク
・政策研究所
・メディア業界
・国際協力
・開発系の民間企業
・教育
・出版 ほか

こうして見ると、政治学の卒業生が向かう先は、驚くほど多様ですよね。

ただ、ひとつ伝えておきたいことがあります。政治学の学位を持っているというだけでこれらのキャリアに自動的につながるわけではありません。

どの大学で、どんな教授のもとで、どんなカリキュラムを選び、どんなインターンシップや課外活動と組み合わせるか。その積み重ねが、卒業後の進路を大きく左右します。
たとえば、国際機関でのキャリアを目指すなら、国連との連携プログラムを持つ大学や、国際法・紛争解決に強い学科を選ぶことが近道になります。

ジャーナリズムやメディアに進みたいなら、言論の自由や政治コミュニケーションを専門とする教授がいる環境が力になります。

シンクタンクや政策分析の道なら、データ分析や政策評価の手法を実践的に学べるプログラムが強みになります。
自分がどのキャリアに向かいたいのかがまだはっきりしていないならリベラルアーツで横断的に学びながら、上級学年で専門性を絞っていくのもいいでしょう。

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政治学の世界大学ランキング

大学ランキングにはいくつか種類がありますが、ここでは2026年QS世界大学ランキングの政治学部門から上位100位までを抜粋してご紹介します。

上位にランクインしている国の傾向としては、アメリカが圧倒的に多く、特に上位20位以内に多数ランクインしています。また、イギリスのオックスフォード、ケンブリッジ、LSEなど伝統的な名門大学が上位に評価されています。

地政学的な影響力が高いだけでなく、大学ランクが年々高まっているアジアからは、シンガポール国立大学南洋理工大学のほか、中国・韓国の大学も多数ランクインしています。日本からも東京大学、早稲田大学、京都大学が入っています。

ヨーロッパの特徴としては、伝統的に政治学に強い国から多数ランクインしています。フランスのパリ政治学院(シアンスポ)、オランダ、ドイツ、北欧諸国の大学も多数ランクインし、学費が比較的安価な国の大学も上位に多数入っています。

順位大学名国名
1ハーバード大学アメリカ合衆国
2オックスフォード大学イギリス
3パリ政治学院(Sciences Po)フランス
4プリンストン大学アメリカ合衆国
5ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)イギリス
6スタンフォード大学アメリカ合衆国
7ケンブリッジ大学イギリス
8イェール大学アメリカ合衆国
9シンガポール国立大学(NUS)シンガポール
10ジョージタウン大学アメリカ合衆国
11キングス・カレッジ・ロンドンイギリス
12コロンビア大学アメリカ合衆国
13カリフォルニア大学バークレー校(UCB)アメリカ合衆国
14オーストラリア国立大学(ANU)オーストラリア
15ライデン大学オランダ
16ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)イギリス
17マサチューセッツ工科大学(MIT)アメリカ合衆国
18ニューヨーク大学(NYU)アメリカ合衆国
19シカゴ大学アメリカ合衆国
20ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)イギリス
21ジョージ・ワシントン大学アメリカ合衆国
22トロント大学カナダ
23ルイス大学イタリア
24南洋理工大学、シンガポール(NTU)シンガポール
25アムステルダム大学オランダ
25カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)アメリカ合衆国
27エディンバラ大学イギリス
28カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アメリカ合衆国
29ジョンズ・ホプキンス大学アメリカ合衆国
30ETHチューリッヒスイス
31欧州大学院大学イタリア
32コーネル大学アメリカ合衆国
33ブリティッシュコロンビア大学カナダ
34ミシガン大学アナーバー校アメリカ合衆国
35マギル大学カナダ
36清華大学中国
37東京大学日本
37ベルリン自由大学ドイツ
39ソウル大学校韓国
40チリ・カトリック大学(UC)チリ
41アメリカン大学アメリカ合衆国
42延世大学校韓国
42北京大学中国
44デューク大学アメリカ合衆国
45中央ヨーロッパ大学オーストリア
46テキサス大学オースティン校アメリカ合衆国
47チューリッヒ大学スイス
48コペンハーゲン大学デンマーク
49ウォーリック大学イギリス
50セント・アンドルーズ大学イギリス
51ブラウン大学アメリカ合衆国
51ヘルティ行政大学院ドイツ
53香港大学香港
53マンチェスター大学イギリス
55メルボルン大学オーストラリア
55シドニー大学オーストラリア
57早稲田大学日本
58復旦大学中国
59ブリュッセル自由大学ベルギー
59KUルーヴェンベルギー
61クイーン・メアリー・ロンドン大学イギリス
61メキシコ国立自治大学(UNAM)メキシコ
63ロス・アンデス大学コロンビア
64高麗大学校韓国
65サンパウロ大学ブラジル
66ペンシルベニア大学アメリカ合衆国
66オーフス大学デンマーク
68ジュネーブ大学スイス
68ボッコーニ大学イタリア
70ボローニャ大学イタリア
70パリ第1大学パンテオン・ソルボンヌフランス
72フンボルト大学ベルリンドイツ
72オスロ大学ノルウェー
72チリ大学チリ
75エセックス大学イギリス
75タフツ大学アメリカ合衆国
77ウプサラ大学スウェーデン
78シェフィールド大学イギリス
79ダラム大学イギリス
79モナシュ大学オーストラリア
81トリニティ・カレッジ・ダブリンアイルランド
82ブリストル大学イギリス
83ボストン大学アメリカ合衆国
84京都大学日本
84ノートルダム大学アメリカ合衆国
84エクセター大学イギリス
87グラスゴー大学イギリス
88サセックス大学イギリス
89ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンドイツ
90O.P.ジンダル・グローバル大学(JGU)インド
91クイーンズランド大学オーストラリア
91ウィーン大学オーストリア
91香港城市大学香港
94国立台湾大学(NTU)台湾
95ジュネーブ高等国際問題・開発研究大学院スイス
95ジャワハルラール・ネルー大学インド
97ワシントン大学セントルイス校アメリカ合衆国
98ノースカロライナ大学チャペルヒル校アメリカ合衆国
99ブエノスアイレス大学(UBA)アルゼンチン
100オハイオ州立大学アメリカ合衆国
100マンハイム大学ドイツ
100トルクァート・ディ・テラ大学アルゼンチン
100オタワ大学カナダ
100ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンアイルランド

よくある質問(Q&A)

Q1. 政治学は将来どんな職業に役立つの?

政治家だけでなく、官公庁、シンクタンク、マスコミ、国際機関、企業のCSR部門など、幅広い業界での需要があります。

Q2. 英語が苦手でも留学できますか?

はい、大丈夫です。入試の際にIELTSやTOEFLスコアが求められますが、英語力がまだ足りない人なら、条件付き入学と呼ばれる仮入学制度や付属語学学校での語学準備などを活用することができます。実際、日本からの留学生のほとんどは語学学校を経由してから進学しています。

Q3. 学費は?奨学金はありますか?

国によって異なりますが、ヨーロッパは全体として学費が安く、なかには無料の国もあります。また、日本の財団や各国政府や大学が実施している奨学金制度にもチャレンジできます。

Q4. 海外の大学院で政治学を専攻するのに必要なものは?

学部レベルでの成績、研究計画、推薦状、英語力の証明などが求められます。必ずしも政治学関連の学士号を持っている必要はありません。自分の興味や研究したい対象をしっかりまとめ、アピールする力があるといいでしょう。

Q5. 日本の大学と何が違うの?

課題が多く、討論や論文が中心となります。評価は相対的で、授業中の発言やグループワークの貢献度も成績に反映されます。

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執筆者:若松千枝加(わかまつ・ちえか)

株式会社ウィッシュ・ウッド代表取締役。
「留学プレス」「女子Ryu」などの留学情報サイトを運営。
日本認定留学カウンセラー協会幹事。
留学業界歴30年以上。
趣味はフラメンコと読書。

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