「選手の能力を引き出せるコーチになりたい」
「科学的な裏付けをもとにチームを育てたい」
「選手の技術とメンタルを引き上げたい」
そんな仕事を目指している人に役立つのが「スポーツコーチング学(Sport Coaching)」。
スポーツコーチング学では教育学や心理学・運動生理学・リーダーシップ論などを学び、経験や感覚中心の指導から、科学や理論も交えた「教える技術」を学びます。
スポーツコーチング学は、特に北米やヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなどを中心に活発に研究されている専攻で、世界の名だたるコーチや指導者達が学び、指導に活かしています。
この記事では、スポーツコーチング学を海外の大学で学ぶメリットや具体的な授業の例、大学と大学院の違い、卒業後の進路までをご紹介します。
スポーツが好きで、指導者としてその気持ちと経験を発揮していきたい人は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください!
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スポーツコーチング学はどんな専攻?

スポーツコーチング学をひとことで表すなら「指導の科学」。
選手の能力を最大限に引き出すためには戦術や技術を教えるばかりでなく「どうすれば人は主体的に学び、自ら成長するのか」といった面についても、深く広く突き詰めていく専攻です。
どんな授業が行われるの?
大学や大学院で学ぶスポーツコーチング学では、多様な分野の専門科目を横断的に学びます。一見スポーツ指導とは直接関係がなさそうな科目であっても、そのエッセンスを組み合わせることで効果的な指導法を見つけていくことを目指しています。
たとえばスポーツ心理学を通じてモチベーションやメンタルトレーニングを、運動生理学では筋力や持久力の向上をはじめ怪我防止やリカバリーを、指導論やリーダーシップ論ではチーム運営やコミュニケーションを学びます。
また、最新のテクノロジーを使ったデータや映像分析やその応用も大切です。さらに、教育理論を学び、指導者としての導く力を鍛えます。
大学と大学院の違いは?
大学ではスポーツ科学全般の基礎を学びながら、上級学年になるにつれコーチングに特化する科目が増えていきます。海外の大学は一般的には3年間から4年間です。
大学院では、元アスリートであったり社会人経験がある人、現役指導者のキャリアアップのための入学も多くなります。より専門的で実践を多く取り入れたり、選択科目の割合が多くなります。
学生それぞれの専門性に特化した研究を行う大学や、学生それぞれ個別テーマのリサーチを主体とするコースもあります。
実際のカリキュラム
学部課程(例:英国ノーザンプトン大学)
大学によって科目には違いがありますが、ここではひとつの例としてイギリスのノーザンプトン大学のスポーツコーチング学の授業科目をご紹介します。
参考:日本の大学学部課程は4年間ですが、イギリスでは3年間です。そのため、いわゆる「一般教養課程」はなく、1年から3年次まですべてが専門科目でカリキュラムが組まれています。(日英の教育年数を是正するため、日本で高校を卒業後すぐに入学を目指す人には1年間の準備課程履修が必要となり、大学卒業までは計4年間となります)
参考:Sports Coaching Degree BSc (Hons) | University of Northampton
1年 |
スポーツ・運動心理学概論 スポーツと運動の社会的背景 大学授業の効果的な受講法 スポーツコーチング実践 スポーツコーチング科学 運動学習とスキル習得入門 |
2年 |
スポーツ研究法 実践・開発 スポーツ教育学 パフォーマンス分析技術 発達期のアスリート フィットネストレーニングメソッド スポーツパフォーマンスの心理学 スポーツ・オプショナル・プレースメント・イヤー |
3年 |
学位論文 パフォーマンスコーチング環境の構築 パフォーマンス分析応用 スポーツにおけるチームとグループの力学 スポーツにおける社会福祉問題 アドバンスト・プロフェッショナル・プラクティス |
修士課程(例:米国オハイオ州立大学)
修士課程では学部課程よりも深く掘り下げる科目や実践科目、学生個々のテーマに応えられるよう選択科目も増えていきます。
現在仕事を持っている人が学業と両立できるようにオンライン受講に対応している大学院(例:豪州クイーンズランド大学)もあります。
ここでは修士課程の例として、アメリカのオハイオ州立大学のカリキュラムをご紹介します。イメージとして参考にしてください。
なお、一般的にアメリカの大学院修士課程は2年間の履修期間となりますが、オハイオ州立大学のスポーツコーチング学修士号は秋学期と春学期に加えて夏学期を履修することで、約1年での取得を目指すことも可能なコース設計になっています。
参考:オハイオ州立大学|Sports Coaching MSC
コア科目 |
▼秋学期 スポーツスキルと試合分析 スポーツにおける心の準備とパフォーマンス コーチングに対する考え方 ▼春学期 コーチング倫理 スポーツにおける人種・ジェンダー・文化 コーチングの有効性 ▼夏学期 コーチングの実践を理解する: 影響力・動機・価値観 スポーツコーチングにおけるリーダーシップ |
いずれかの学期で受講 |
プラクティカム(実践科目) |
総合修士試験の要件 |
受験学期に「個別テーマ」を3 時間以上履修 |
選択科目 |
スポーツ医学分析 アダプテッド・フィジカル・アクティビティ(障害のある学習者のための指導プログラム) コーチングの効果 アスリートのリクルーティング(大学スポーツ) 運動の発達と学習 個別テーマ スポーツ法 スポーツ・マーケティング |
スポーツコーチング学を海外で学ぶメリットは?

実践科目が多い
海外のプログラムではコーチ実習や実地研修やインターンシップが必修となっていることが一般的です。プロのチームやその下部のジュニアクラブ、地元のスポーツチームやスポーツ施設と連携している大学も多く、実際の指導が行われている環境で経験が積めるのが大きな強みです。
国際資格を取れる
大学によってはUEFAライセンスやNSCA認定などの資格取得と連動したプログラムを持っていることもあります。
また、卒業生のネットワークやスポーツ業界とのつながりが強く、就職のチャンスが世界レベルで広がっていることも魅力のひとつです。
多文化環境での指導者として成長できる
様々な背景を持つ学生たちとともに学ぶなか、異文化への理解を深め、どんな国の人とでも柔軟にコミュニケーションを取れる力やリーダーとしての資質を伸ばすことができます。
世界レベルでの成績を目指すチームやアスリートとの対話はもちろん、現在は国内のジュニアレベルのスポーツでも多様性を無視することはできません。
多くの大学のスポーツコーチング学が目指しているのはスポーツで良い成績を出すことだけではありません。例えば、豪シドニー大学では教育学の学位のなかでスポーツコーチングが行われているように(Master of Education (Sports Coaching) )、人を育成するという「教育」の側面も重視されています。
大学選びのポイント

時間とお金をかけて行く海外留学。
やりたい勉強に没頭して、将来につながる仲間を作れる素晴らしいチャンスです。充実した留学生活を送るためにも、後悔のない大学選びが欠かせません
大学を選ぶ際は自分のなかで優先順位をつけ、自分にとって譲れないことは何かを自問自答することが大切です。そのなかで「モア・ベター」なコースを複数探し、最終的に「できるだけベスト」に近づけていくという大学選びが理想です。
大学選びのヒントになり得る検討ポイントをご紹介していきます。
ランキング
現在、スポーツコーチング学分野単独での世界大学ランキングはどこの機関からも発表されていません。
代わりの指標となるのが、世界大学ランキングで知られるQSの「スポーツ関連学部ランキング」や、『上海ランキング』の名で知られる世界大学学術ランキング(ARWU)が発表しているスポーツサイエンス学部ランキングです。
これらのスポーツ科学ランキング上位校のなかで、スポーツコーチングの学科や学部を持っている大学を重点的に調べていくことで、スポーツコーチング教育の高評価校をとらえていくことができます。
▼スポーツ関連学部上位ランク、かつスポーツコーチング専攻を持つ大学の例
- ラフバラ大学(英国)
- クイーンズランド大学(オーストラリア)
- シドニー大学(オーストラリア)
- バーミンガム大学(英国)
- ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)
- ディーキン大学(オーストラリア)
- デンバー大学(米国)
- オハイオ大学(米国)
- オタゴ大学(ニュージーランド)
ランキングは参考のひとつにはなりますが、あくまでも指標のひとつに過ぎないということも覚えておきたいところです。
大学の知名度ばかりではなく、自分はどんな将来像を目指しているのか、競技の種類、育成したい年代などを含めた大学選びも、キャリア形成には欠かせないポイントとなります。
種目やインターンで見る
大学ごとにどんなプロチームと連携しているか、どんな競技に強いかなどが異なります。大学がある地域やその大学が好成績を修めている大学スポーツなども参考になります。
例えばサッカーの指導者を目指す人なら、豪ニューサウスウェールズ大学や英ミドルセックス大学のように、サッカーに特化したプログラムを持つ大学もあります。
「NCAAとの連携が多い」「地元の強豪サッカーチームと提携している」「スイミングのメダリストを多く育成している」「パラスポーツのインターンシップが多い」など、自分の目指すコーチ像や競技と関連があるかどうかもポイントのひとつになります。
カリキュラム
全体の科目構成を見ると、その大学が何を重視しているかが見えてきます。
たとえば「教育学」を主眼ととらえる大学もあれば、キネシオロジーや健康科学に重きを置いている大学、理論や研究を重視する大学もあります。
自分の目指すスポーツコーチングキャリアの未来に近いかどうか、カリキュラムの特色もチェックしてみてください。
教授陣の背景
どんな教授や講師、スタッフをそろえているかも、見逃せないポイントです。教授たちはそれぞれに専門性を持っています。自分がいずれ指導を受けることになる先生のバックグラウンドを探ってみてはいかがでしょうか。
さらに、どんな研究が行われているか、どんな論文が発表されているかもチェックしてみると、より理想に近い学校選びができるでしょう。
卒業後の進路
卒業生の顔ぶれや進路を公表している大学も多くあります。人脈も将来の財産になっていく可能性があります。
どんな業界で活躍している人が多いのか、どんなポジションや国で成果を発揮しているのか、なども参考にしてみてください。
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入学条件は?

大学(学部課程)
一般的に大学の学部課程では次の要件が必要となります。(大学により異なる)
- 英語力(IELTS 6.0以上、TOEFL iBT 80以上)
- 高校(最終学歴)の成績
- 志望動機などを含む小論文(エッセイ)
日本と教育システムが類似しているアメリカやカナダの場合は、高校卒業後すぐに出願し大学1年次に入学することができます。
一方、イギリスやオーストラリア、ニュージーランドでは、高校卒業が最終学歴の人の場合、1年間の大学進学準備コース(ファウンデーションコースと呼ばれます)を履修することが求められます。ただし、これらの国では大学課程は3年間のため、合計4年間で大学を卒業することには変わりありません。
英語力が足りない場合や仮合格制度を活用したい場合など、さまざまな入学経路があります。あわせて次のような記事も参考にしてみてください!
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大学院(修士課程)
一般的に大学院課程では次の要件が必要となります。(大学院により異なる)
- 英語力(IELTS 6.5~7.0以上、TOEFL iBT 90~100以上)
- 大学(最終学歴)の成績(大学での専攻を問われる大学も)
- 志望動機などを含む小論文(エッセイ)
- 大学によっては指導歴などの実務経験
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・大学院留学って難しいのでは?・自分にできるだろうか?・費用が高いのでは? このページではそういった疑問にお答えし、大学院留学についてわかりやすくガイドしていきます。 「大学卒業」と「大学院卒業」ではその後のキャリアに段違いの[…]
卒業後のキャリアはどうなる?

卒業後はさまざまな舞台でスポーツコーチング学を活かすことができます。その一例をご紹介しましょう。
- プロチームやナショナルチームのコーチ
- アウトドア指導者
- パーソナルトレーナー
- スポーツ開発
- スポーツセラピスト
- フィットネストレーナー
- ライフコーチ
- 警察官
- 小学校教師
- 中学校教師
- スポーツ管理者
- パフォーマンスアナリスト
- フィジカルコーチ
- 地域スポーツ指導者
- ジュニアスポーツ指導者
- 障がい者スポーツや教育支援分野
- スポーツ庁/NPO
- 研究者
「プロの育成を目指してスポーツコーチング学を学び始めたけれど、学ぶうちにジュニアの底上げに興味が湧いた」「直接指導をするよりも研究に向いていることが見えてきた」「指導者よりもスポーツ振興やビジネスのほうが向いているかもしれない」など、留学中に新しい発見がある人も多いです。
自分にリミッターをかけず、大いに挑戦し新しい自分を見つけていくのも、留学の醍醐味のひとつとなるでしょう。
スポーツマネジメント(Sports Management)やスポーツビジネス(Sports Business)といった専攻は、スポーツ業界での組織運営やマーケティング、イベント企画、ファイナンス管理など、多岐にわたるスキルを学べる学問です[…]
よくある質問(Q&A)
スポーツコーチングは座学よりも実技が多いですか?
多くの海外大学では現場での実習がカリキュラムに含まれており、理論と実践を結びつけた教育が行われています。座学と実技の両方をバランスよく学びますが、大学ごとに「研究重視」「パフォーマンス重視」「特定の競技に強い」などの特色があったり、個人の研究テーマを決めてリサーチ主体で行うプログラムなどもあるため、それに応じて実技と座学の割合が変わります。
海外の大学に進学するにはどのくらいの英語力が必要ですか?
IELTSスコア6.0〜7.0、またはTOEFL iBTで80点以上が求められます。修士課程では、英語力だけでなく、学部での成績やスポーツ指導経験が評価される場合もあります。英語力が規定に達していない人の場合には、付属の英語コースや提携英語学校などで進学用の英語コースを履修することでTOEFLなどの試験が免除になるケースもありますので、詳しくはお問い合わせください。
日本の大学ではスポーツコーチングは学べないのですか?
日本の大学でも学ぶことができます。ただし、現時点ではスポーツコーチングを専門的に学べる大学の数が日本では限られており、数としてもカリキュラムの多様さにおいても、海外大学の方が選択肢が豊富です。
コーチ経験がないと海外の大学院には行けませんか?
必ずしも必要ではありませんが、実務経験があると入学審査で有利になる場合があります。指導歴がなくても、学部での専攻や熱意・目的意識、学生時代のリーダー経験などが評価されることもあります。可能ならボランティアでもよいので、指導やアシスタントの経験をしておくと、出願の際にアピールできるポイントになります。
海外の大学に進学する費用はどのくらいかかりますか?
国や大学によってまちまちですが、欧米の大学の場合、学費は年間25,000〜35,000ドル程度、生活費も含めると年間400万〜600万円が必要です。奨学金制度や就労可能なビザを活用できる国もあるので、費用面で心配な方はまずはお問い合わせください。
スポーツコーチング学の意義

ここまで海外大学で学ぶスポーツコーチング学についてお伝えしてきました。
「早く大学でスポーツコーチングを学びたい!」
そんな気持ちになった方もいるのではないでしょうか。
スポーツコーチング学ではスポーツ自体の経験だけでなく、科学・心理・教育の視点を通じて、指導するアスリートの人生にも大きな影響を与えることになります。
スポーツコーチング学は大きな可能性を秘めている分野です。日本でも認知が広がり注目されている分野ですが、世界ではスポーツコーチング学の価値が年々高まっています。「教える力」を磨くという道について、ぜひ真剣に考えてみてください。
スポーツコーチング学に興味が湧いたら
大学を選ぶ際はランキングだけでなく、カリキュラムや予算、キャリアプラン、自分と留学先の相性も合わせて検討することが大切です。
「いろんな大学/大学院を比較したい」
「実際にかかる費用を計算したい」
「合格の可能性を知りたい」
そんな方の情報収集のために、留学の専門家が資料をお届けしています。まずはじっくり自分と照らし合わせるためにも、ぜひ活用してみてください!
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