ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London、以下UCL)は、ロンドン中心部にキャンパスを構える名門校です。4万3000人を超える学生数が在籍し、そのうち半数ほどが留学生です。
大学設立当初から「すべての人に教育を」を掲げ、人種、性別、宗教の枠を取り払い、幅広く学びの機会を与えてきました。初代総理大臣の伊藤博文など、日本社会を牽引してきた著名な日本人もUCLで学んだ歴史があります。大学構内にはその歴史を記した記念碑もあります。
UCLは、イギリスの24の研究型大学で成り立つ「ラッセル・グループ」、一流大学が加盟する「ゴールデン・トライアングル」のメンバーでもあります。
大学ランキングではトップ圏に入る常連校で、様々な分野が高い評価を得ている難易度が高い大学です。
本記事はUCLについて徹底解説した留学ガイドです。偏差値や難易度、学部、入学条件などを知りたい人へ向けてご紹介します。ぜひ最後までお読みくださいね。
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基本情報
UCLはロンドン大学のメンバー校
UCLは1826年に「ロンドン・ユニバーシティ」の名で設立され、1907年にロンドン大学に加盟しました。(ロンドン大学は17の独立したカレッジと10の研究機関が加盟する連合大学群です)
UCLが掲げる自由と平等
UCLは学生を平等に受け入れ、より多くの人に学問を提供してきた長い歴史があります。創立者は開校当初から、「すべての人に開かれた教育を」を目指し教育の大衆化を強く訴えてきました。
19世紀当初、イギリスの名門大学ケンブリッジ大学やオックスフォード大学は入学生を男性、貴族出身、イギリス国教徒と限定していました。しかし、UCLはそれに反してイギリスで初めて平等に女性を受け入れ、性別や人種、宗教の枠を取り払う自由・平等主義をモットーとしてきました。
UCLの自由な校風は地域にも根付いており、学生だけでなく一般市民もUCL構内に足を運ぶことができます。大学内のパブでは市民がサッカーを観戦したり、UCLの学生の演奏を楽しむ風景も日常的です。
UCLは数々の映画撮影に大学構内使用許可を出しています。これまでに「グラディエーター」「インセプション」「バットマン・ビギンズ」などのロケ地となりました。
UCLは日本の近代化をもたらした教育機関
UCLは日本と深いつながりがあります。
幕末から明治維新の頃に活躍していた日本人の多くがイギリスに渡り、UCLで学問を学んでいました。
長州ファイブの呼び名で有名な山口県から派遣された5人組(伊藤博文、井上馨、遠藤謹助、山尾庸三、野村弥吉)は、UCLで習得した学問や技術を日本に持ち帰ってきたことで知られています。
文部省から英語教育の研究のために留学を命じられた小説家、夏目漱石もUCLに留学し近代日本文学を広めました。
このようにUCLが日本からも多くの学生を受け入れていた背景には、大学が掲げる自由と平等の精神があってこそでした。
イギリストップの研究力
研究の質を測るREF2014では、UCLはオックスブリッジ(オックスフォード大学とケンブリッジ大学の総称)を抑えて最高レベルの評価を得ました。UCLは文化、健康、政策、ビジネス分野や世界が抱える課題に大きく貢献している重要な研究機関のひとつとして名を知らしめています。
UCLの場所
UCLのメインキャンパスはロンドンの中心エリア、ブルームズベリーにあります。大英博物館や大英図書館など主要施設へのアクセスが良く、大変便利な立地です。
フランス・パリなどヨーロッパを繋ぐ列車、ユーロスターの発着駅キングス・クロス駅も徒歩圏内です。
ロンドン大学の他の加盟校の大学も近く、バークベック・カレッジやスクール・オブ・オリエンタル・アンド・アフリカン・スタディーズが至近距離にあります。
また、UCLイーストと呼ばれるキャンパスが2022年9月にオープンする予定です。場所は東ロンドンにあり、オリンピック会場として使用されたクイーン・エリザベス・オリンピック・パーク内です。
UCLイーストキャンパスの最寄駅はストラットフォード駅で、メインキャンパスまでは電車を利用し約40分で行き来できます。
ノーベル賞受賞者も!著名な卒業生
UCLはこれまでに30人のノーベル賞受賞者を生み、歴史に名を残した著名な日本人も通っています。
以下に、UCLでの研究を経てノーベル賞を受賞した人と著名な卒業生の一部をご紹介します。
ウィリアム・ラムゼー | スコットランドの化学者。 空気中の貴ガスの発見により、ノーベル化学賞受賞。 |
フレデリック・ソディ | イギリスの化学者。 原子核崩壊の研究、同立体の理論でノーベル化学賞受賞。 |
ピーター・ブライアン・メダワー | ブラジル人生物学者。 免疫系の研究に貢献しノーベル生理学・医学賞受賞。 |
ヤロスラフ・ヘイロフスキー | チェコ出身の分析化学者。 ポーラログラフィーの原理を発見しノーベル化学賞受賞。 |
アレクサンダー・グラハム・ベル | スコットランド出身の科学者。 世界初の実用的電話を発明。 |
クリス・マーティン ガイ・ベリーマン ジョニー・バックランド ウィル・チャンピオン | イギリスの音楽バンド、コールドプレイのメンバー。 |
ジェーン・エリザベス・メアリー・ファロン | イギリスの作家。 メリッサ・サイネン賞や全米図書賞にノミネート。 |
小泉純一郎 | 日本の元内閣総理大臣。 |
伊藤博文 | 日本の初代総理大臣。 |
井上馨 | 明治、大正時代の政治家。 内閣大臣、大蔵大臣など務める。 |
遠藤謹助 | 明治時代の官僚、元造幣局長。 |
山尾庸三 | 日本の政治家で工部省(現在の日本電信電話NTT)開設に努めた人物。 |
野村弥吉(井上勝) | 日本の鉄道官僚。 「日本の鉄道の父」と呼ばれる人物。 |
UCLの偏差値

日本とイギリスの大学制度の違いと偏差値
イギリスと日本の大学入試制度は少し異なります。日本では試験による偏差値方式ですが、イギリスでは書類選考がメインです。
また、義務教育制度が異なっていることから、日本の高校を卒業した学生は一部を除いて大学入学前に「大学準備コース(ファウンデーションコース)」を受講します。ファウンデーションコースでの成績も考慮されて、大学に正式な入学を認められます。
詳しくは「イギリスの大学の仕組みとは?日本とイギリスの大学教育制度を比較」も参考にしてください。
ランキング
イギリスで大学の質やレベルを知るためには偏差値ではなく大学ランキングを参考にします。
UCLは世界、イギリス国内ともに高いランキング順位を誇る大学です。ここでは、UCLの世界ランキングとイギリス国内ランキングをご紹介します。
近い順位の日本の大学もご紹介しますので、比較の参考にしてみてください。
【世界ランキング】
QS世界大学ランキング2022年 | UCL 8位 東京大学 23位 京都大学 33位 |
タイムズ・ハイアー・エデュケーション2022年 | UCL 18位 東京大学 35位 京都大学 61位 |
【イギリス国内ランキング】
難易度
UCLはかなり難易度の高い大学として有名です。イギリス国内では入学基準のランキング(コンプリート・ユニバーシティ・ガイド2022年)で8位の難易度です。
UCLの学部

UCLには11の学部があり、学部ごとに細かいコースが設けられています。
学部 | 学科 |
人文科学・芸術 | 芸術・科学 英文学 ヨーロッパ社会/政治研究 ギリシャ語/ラテン語 ヘブライ語/ユダヤ語研究 情報学 ヨーロッパ言語/文化/社会学 ファインアート 哲学 |
建築環境 | 建築学 サステイナブル建築 環境/エネルギー/資源 開発企画 国際開発 イノベーション・公共目的 都市研究 |
脳科学 | 神経科学 精神医学 心理学・言語科学 聴覚 認知神経科学 眼科 プリオン病 認知症 メンタルヘルス |
科学工学 | 生物化学工学 生物医学工学 化学工学 土木工学 コンピュータサイエンス 犯罪・セキュリティ科学 電子・電気工学 機械工学 ビジネス情報管理学 医学物理学 マネージメントサイエンス |
教育・社会 | 文化/コミュニケーション/メディア 教育学 リーダーシップ 心理学/人間開発 社会調査 |
法学 | 刑法 契約・不法行為法 財産法 公法 行政法 人権 |
生命科学 | 薬学 バイオサイエンス 分子細胞生物学 神経回路・行動学 神経科学 |
数理物理科学 | 自然科学 化学 地球科学 数学 地球人類学 物理学・天文学 統計科学 科学技術研究 リスク・防災 宇宙・気候物理学 |
医科学 | 応用医科学 感染・免疫 がん生物医学 栄養学 スポーツ・エクササイズ運動科学 医科学・工学 歯学 外科学 生命医科学 |
ポピュレーションヘルス科学 | 疫学 グローバルヘルス ヘルスデータサイエンス 健康情報学 細胞・遺伝子治療学 小児保健 |
社会・歴史科学 | 人類学 経済学 地理学 歴史学 美術史 政治学 |
強い分野
UCLは幅広い分野で強みを持つ大学です。多数の科目がランキングで世界トップクラスの評価を得ています。
以下にQS大学科目別ランキング2022年版で世界50位以内に選ばれている科目をご紹介します。
考古学 | 3位 |
建築学 | 3位 |
薬学・薬理学 | 4位 |
解剖学・生理学 | 6位 |
医学 | 7位 |
心理学 | 7位 |
ライフサイエンス・医学 | 8位 |
地理学 | 9位 |
芸術・人文科学 | 11位 |
生物科学 | 11位 |
英文学 | 13位 |
歴史 | 15位 |
歯科学 | 17位 |
言語学 | 18位 |
現代言語 | 20位 |
コンピュータサイエンス・情報システム | 22位 |
古典・古代史 | 23位 |
哲学 | 23位 |
化学工学 | 24位 |
地球・海洋科学 | 28位 |
地球物理学 | 29位 |
地質学 | 30位 |
化学 | 32位 |
環境科学 | 35位 |
物理学・天文学 | 36位 |
工学・テクノロジー | 37位 |
自然科学 | 37位 |
数学 | 39位 |
土木・構造物工学 | 40位 |
電気・電子工学 | 47位 |
アート・デザイン | 48位 |
UCLへの留学方法

UCL Student Centre, London, by Orangeaurochs
大学準備コース(インターナショナル・ファウンデーション・イヤー)
日本とイギリスの教育システムが違うことから、日本で高等学校を卒業してすぐにイギリスの大学留学を考える場合は、まず大学準備コース(ファウンデーションコース)を受講するのが一般的です。
ファウンデーションコースの期間は約1年間です。その後3年間の学士課程へと進み、計4年で卒業が可能です。
ファウンデーションコースでは
- 大学で使う専門的な英語の学習
- エッセイやレポートの書き方
- ディスカッションスキル
など、イギリスの大学の講義を問題なく受けるために必要なことを学びます。
UCLが推奨するファウンデーションコースを受講するためには、高等学校で優秀な成績を収めていることが求められます。高等学校の最終学年で出願する場合は過去2年間分の成績証明を提出します。卒業してから出願する場合は、過去3年間の成績表が必要です。
必要な成績・資格は、高等学校の成績の平均が3以上、かつ、志望分野と関連性のある科目の成績が4未満でないことが求められます。選考はコースに関連する最も重要な3科目と総合の成績によって行われます。
必須の英語力は専攻分野によって変わります。専攻分野に関連する科目とそれに必要な英語力は以下をご参照ください。建築学を志望する場合は、成績と英語力の証明に加えポートフォリオが必要です。
UCLの科学・工学/建築学(科学・工学)に進学する場合
関連科目 | 生物学/化学/数学/物理学 |
英語力(IELTS) | 総合6.0 各項目で5.5以上 |
UCLの人文科学/建築学(人文科学)に進学する場合
関連科目 | アート・デザイン/経済学/地理/歴史/文学/数学/哲学/政治学/社会科学 |
英語力(IELTS) | 総合6.0 各項目で6.0以上 |
学士課程に直接進学
日本の大学の1年次を優秀な成績で修了している場合は、UCLの学士課程コースへ直接出願できます。
必須の英語力はコースによって三段階(標準・良好・上級)に分けられます。志望コースがどのレベルを求めているかは、大学公式ホームページで確認してください。
三段階の英語力(IELTS)
標準 | 総合6.5 各項目で6.0以上 |
良好 | 総合7.0 各項目で6.5以上 |
上級 | 総合7.5 各項目で6.5以上 |
修士課程準備コース(インターナショナル・プレ・マスター)
出願には優秀な成績で学士号を取得していることが求められます。また、日本の修士号や博士号も考慮されます。
必須の英語力(IELTS)はコースの長さによって変わるため、以下をご参照ください。
2学期(6ヶ月) | 総合6.0 各項目で6.0 |
3学期(9ヶ月) | 総合5.5 各項目で5.5 |
修士課程に直接進学
以下のような資格を持っている人は、UCLの修士課程に直接出願できます。
- イギリスの下2級または上2級(※)に相当する成績で学位を取得している
- コースに関連する分野で数年間の実務経験がある
- 日本の大学で修士号や博士号を取得している
(※注:イギリスの優等学位は1級、上2級、下2級、3級の4段階です。持っている学士号がどのレベルに相当するかは、直接大学にご確認することをおすすめします)
詳しい出願要件はコースによって異なります。また、英語力については学士課程コース出願と同じく、各コースによって三段階の英語レベルに分けられます。
どのレベルが必要かどうかは大学公式ホームページでご確認ください。
三段階の英語力(IELTS)
標準 | 総合6.5 各項目で6.0以上 |
良好 | 総合7.0 各項目で6.5以上 |
上級 | 総合7.5 各項目で6.5以上 |
UCLの学費

Grant Museum, by Neil Turner
※UCLにあるグラント動物学博物館
大学準備コース:インターナショナル・ファウンデーション・イヤー(9ヶ月)
※2022年5月現在1ポンド160円で計算
科学・工学 | 約361万円 22,550ポンド |
人文科学 | 約361万円 22,550ポンド |
建築学 | 約377万円 23,550ポンド |
学士課程
学部ごとに授業料が異なります。志望学部の授業料は大学公式ホームページを参照してください。
ここでは参考例としていくつかの学部の学費(1年間)をご紹介します。
修士課程準備コース:インターナショナル・プレ・マスター
コースの長さによって学費が異なります。
2学期(6ヶ月) | 約221万円 13,800ポンド |
3学期(9ヶ月) | 約296万円 18,500ポンド |
修士課程
学部ごとに授業料が異なります。志望学部の授業料は大学公式ホームページを参照してください。
ここでは参考例としていくつかの修士課程の学費(1年間)をご紹介します。
UCLは開かれた教育を重んじる名門校
UCLは現在までに様々なバックグラウンドを持つ人々を受け入れ、日本で活躍した著名人も輩出してきました。世界的大都市のロンドン中心地で学べるため、キャンパス内外で国際性や多様性を高められるチャンスです。
UCLが提供する多くのコースは世界トップレベルなため、合格への道は平坦ではありません。入念に早めの対策を心がけて、ぜひ合格を目指してみてくださいね。
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