あるアメリカの友人から「日本人であることを誇りに思いなさい」と言われたことがある。日本に2年間暮らし、さまざまな人々の触れ合いを経験したことで、すっかり日本ファンになってしまったその友人は、私にそう話してきた。
渡米してから20年たった今、私はその言葉をはっきりと実感しはじめている。日本に住んでいて、まったく感じ得なかったことが、実は私の中に起こっているのだ。
こうして、日本を外から見ると、どれほど日本がすばらしい国かが見えてくる。ハイテクノロジーが発達している国でありながら、古代のすばらしい歴史もそこかしこに残している。デリケートな味を極めた料理、礼儀正しさとこまやかさ。私も毎回一時帰国する際に実感している。
日本文化を教えてみる
海外に住んでいると、普段は日本にいた頃の感覚やその文化についても、正直言って、忘れがちになる。周りには、日本人の友人がそれほど多くいるわけではないし、自分から進んで文化を紹介しなければ、残りの人生をそのままなしで過ごすことになる可能性もある。
そこで、私が時々実行していることがある。
数年前に、Sushi Cooking Classを2度、別々に開いたことがあった。実は、私の住むカリフォルニア州ではお寿司はとてもポピュラーな日本料理のひとつである。
毎回ポットラックパーティに招待される度にもってゆくと、ものの10分でなくなるほどの人気。テーブルの上にお寿司を置いて、パーティに来ている人にあいさつをして戻ってくると、もうすでになくなっている・・・まあ、そんな感じだ。この国に来てから、ずっとこの調子でやっているが、もう見慣れた光景となっている。
アメリカも、日本同様、お寿司を食べに行くと、結構値段が高い。自宅で作れるなら、こんないいことはない。そこで私のクラスで、「手巻きパーティ」の方法を教えてあげる機会を作った。
数週間後、あるミーティングに出席した時に、クラスに来ていた女性の一人が私の腕をぎゅっと掴んで、「りか、昨日うちでsushiを作ったのよ。あなたに言われた通りやったらできたわ。子供たちも大喜びよ。おいしいし、安上がりで、とってもうれしいわ」と感激の言葉をいただいた。
他の何人かの友達も、同じことを言って、本当にその時は感謝されたのだ。
また、最近、私が通っている教会の若者向けに日本の文化を体験する、小さなイベントを開催してみた。簡単な日本語、食べ物、習字、自作のビデオなどを使って日本を紹介。若者向けなので、彼らがアニメなどで聞いていそうな言葉や文字、キャラクターなども取り入れて、さらに日本のテクノロジー、ちょっと変わった文化の内容なども話した。
▼日本文化セミナーを開催。子供たちが書道の練習をしている。
そして、最後には、みたらしだんご、ぎょうざ、たい焼き、せんべいなどの、日本のスナックも自宅で作りもっていった。このイベントは、とても楽しいイベントだったと称賛され、大成功をおさめた。
改めて知った日本文化の背景
さらに、その1か月後には、女性の友達を集めて、お手玉作りとその遊び方を披露して、彼女たちととても楽しい時間を過ごした。
▼お手玉クラスの模様
お手玉を作るにあたって、インターネットでお手玉の歴史を調べてみた。お手玉は、日本独特の文化のように思っていたが、実は世界各地にもそれと同じような遊びが存在する。それぞれ作るための素材は異なるが。
日本では歴史上、奈良時代あたりから中国からもたらされ、姿を現すようだが、そのころお手玉の中に使われていたものは、水晶や石などで、江戸時代には、大豆や米などの穀類が使用されている。そして古布でこれらを縫い込み、子供の遊び道具として家庭で作り、親しまれていたが、時代の移り変わりとともに、こういったおもちゃも少しずつ忘れ去られてしまった。
ところが、その後、この文化を継承するための活動をする団体も出てきて、お手玉の維持、継承に、現在努力を重ねているそうだ。
私は日本人でありながら、これらの歴史を知る機会がなかった。今回アメリカ人の友人たちに教えることで、初めてそれを知ることになった。その歴史も同時に友人たちと分かち合い、皆で作ったお手玉を最後に「茶摘みの歌」をローマ字で黒板に書いて、一緒に歌いながら、お手玉遊びを楽しんだ。
日本ブームが到来している
1か月前に日本に一時帰国した。ここ3年ほどは、毎年日本の実家で2週間ほど過ごすことが恒例となっている。
行く度に感じるのは、外国人観光客の増加である。話には、よく聞いていたが、どこかしこにも、携帯を持ちながら観光を楽しむ彼らの姿を見かけるようになった。確かに外国人観光客が増加したという記事をよく目にする。
また、たまたま見たユーチューブには、日本大好き外国人の話なども、かなり盛んに映像化されていて、20年前の渡米前の日本とは、少し違った様子を目にする機会が増えてきたのも確かだ。
事実、渋谷の交差点に行くと、外国人の観光スポットとなっていたり、川越の小江戸に行けば、ゆかたを来た外国人の姿を見たり、祭りの屋台でお好み焼きをほおばる光景など、私もこの目で見て、ちょっと驚いた。
さらに今日本には、外国人向けにさまざまな日本文化を体験できるプログラムが満載であることもわかった。海外からも、簡単にアクセスして、これらのプログラムに申し込めるサイトも見つけた。今回息子と一時帰国した際には、剣道のクラス、和太鼓のクラス等、何かと外国人向けに用意されたプログラムに参加できる機会が得られたのは、大変喜ばしいことである。
先述のとおり、長い外国生活の中で、私も自分の生まれた国について、語る機会が結構あり、日本文化を私なりにキープする方法を見出しているからだ。
私は、これからも微力ながらも、私が生まれた国の文化をまわりの友人たちにも伝えてみようと思う。「いいことはシェアしなきゃ」、つまりそういうことなのだ。
文:ワイズりか(ライター、イラストレーター)
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