お墓を色鮮やかに飾るフランスの“お盆”/11月1日「諸聖人の日」~花沢日向(ライター)

フランスでは毎年11月1日に「諸聖人の日」(トゥーサン=Toussaintを迎えます。この日はカトリック教会が崇める全ての聖人、殉教者を祝福する記念の日。フランスでは昔からカトリック教徒が多くの割合を占めており、この諸聖人の日を大切にしているのです。
 

菊の鉢植えを手にお墓参りへ行く人々

フランスでは諸聖人の日を迎えるこの時期、家族で菊の鉢植えを持ってお墓参りへ行く習慣があります。お墓だからと言って地味なものではなく、フランスの墓地は多くの色鮮やかな菊の鉢植えで美しく彩られるのです。
 
ちなみに翌日11月2日は「死者の日」。名前の通り全ての亡くなった人に祈りを捧げる日です。こちらは国民の祝日には制定されておらず、諸聖人の日とは意味も違います。
 
本来、お墓詣り死者の日である11月2日に行くべきとされるのですが、実際には祝日で学校が休みとなる諸聖人の日、もしくはその辺りが2週間程の秋休みとなることが多いため、前後の都合のいい日に行くことが多いようです。
 
なぜ菊の花なのでしょうか?それは、この時期フランスでは一気に寒い冬を迎え、寒空の下に置いても凍らない強い花は菊ぐらいしかない、と言われているためです。またフランスの人々にとって、菊の花は死者の花と考えられており、愛の象徴でもあるのです。
 
toussaint
菊の花は愛の象徴
 
この菊の鉢植えを手にお墓参りへ行く習慣、日本のお盆やお彼岸を思い出しませんか?日本でも仏壇やお墓に供える仏花として、菊の花が一般的です。宗教や文化は違っても何か通ずるものがあるようです。
 

「トゥーサンのヴァカンス」で賑わいを見せるフランス

前述の通りフランスではこの時期、2週間程の秋休みを迎え、「トゥーサン(Toussaint)のヴァカンス」と言われています。諸聖人の日は、祝日だからと言って街の店が閉まるということはありません。この時期に田舎へ帰省する人、都市部の観光地やレジャー施設へ出歩く人々が多いため、混雑するのです。
 
色とりどりの菊で飾られたフランスの墓地は実に華やかなものです。「トゥーサンのヴァカンス」で賑わいを見せるこの時期、フランスの田舎地方を訪れることがあれば、墓地を少しのぞいてみてはいかがでしょうか?日本のお盆のように、お墓参りへ行くフランスの人々が見られるかもしれません。
 
文:花沢日向(ライター)

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