人口の60%以上がイスラム教徒のマレーシア。2016年は6月6日からラマダンが始まり、現在こちらはラマダン真最中です。ラマダンが明ければ、マレーシア最大の祝日『ハリラヤプアサ』(『ハリラヤアイディルフィトリ』とも言います)がやってきます。本日は、断食明けの大祭『ハリラヤプアサ』についてお届けいたします。
ラマダン真っただ中のマレーシア
夕方にはあちこちのラマダン・バザーからお肉や魚を焼く匂いが漂い、露店にはルマン(竹筒に詰めた餅米をココナッツミルクで炊いたもの)が火にくべられ、食事を買い求める人々で昼は静かだった街が活気を取り戻します。
▼露店に並ぶルマン。ラマダン、ハリラヤの名物。
▼竹筒からルマンを出して切るところ
マレーの人々はお腹を満たした後、身を清め、白の礼拝用の服に着替えて、礼拝へ行きます。涼しい夜の風に白い裾を翻しながらモスクへ向かう人々の姿は風情があります。
ハリラヤプアサへのカウントダウン
ラマダンを半ば過ぎた頃にはアル・クルアーン(Al Quran)があります。預言者ムハンマドにコーランが啓示された大切な日ということで、マレーシアのいくつかの州と首都は休日となります。ムスリムの友人によると、ラマダン中は他の月よりも深くコーランを理解しようと勉強するそうです。
アル・クルアーンが過ぎると、マレーシア最大の祝日、断食明けの大祭ハリラヤプアサへのカウントダウンが始まります。店頭にはクエ・ラヤ(お祝いのお菓子)の材料が売られ、家々からはクエ・ラヤ(お祝いのお菓子)を焼く甘い香りがし、スーパーやモールはハリラヤプアサの買い出しをする人で賑わっています。
街はイスラム教で神聖な色とされる「緑」を基調とした色や、ハリラヤ飾りの定番「クトゥ・パット」(本物はヤシの葉で餅米入 )飾りで彩られ、お祝いムードが盛り上がっていきます。
ハリラヤプアサはマレーシアの正月、お盆、そして新年。
マレー人たちは、ハリラヤまでに家を大掃除、修理し、服、靴も新調し、ご馳走や子ども達にドゥイ・ラヤ(お年玉)を用意します。
バジュ・ラヤと呼ばれるハリラヤに着るマレーの衣装を既製品またはオーダーメイドで新調するのですが、日本と違うのは服を家族でお揃いにするのが主流なこと。
▼家族お揃いの晴れ着
▼お年玉
日本のお正月ともう一つ違う点は、ラマダン中やハリラヤプアサの最初の礼拝の前に子どもも含め、家族全員が寄付を行うことです。その寄付は貧困家庭がハリラヤプアサを祝えるよう、またはその子ども達の学用品代などのために使われるそうです。
イスラム暦の新年は別の日なのですが、ムスリムにとっては、断食明けが一番の祝日となり、マレーシアでは中華正月と同様に盛大。そのため、新年と間違えられることが多くあります。ちなみに新年はハリラヤプアサの月(10番目の月)から3ヶ月後、2016年は10月にあります。
いよいよハリラヤ
ハリラヤプアサの数日前にはバリッ・カンポン(Balik Kampong/里帰り)の帰省ラッシュが始まります。ムスリムであるマレー系は1週間ほどの休暇、その他の民族も連休で里帰りするため、田舎へ向かう高速道路は大渋滞、その逆に首都クアラルンプールは普段の混雑がウソのように人が少なくなります。
断食月ラマダンの始まりも終わりも新月の確認によって始まり、ラマダンの次の新月が確認されると、いよいよハリラヤプアサ。モスクや礼拝所からアザーン(お祈り)が街中に流れ、お祈りが終わると、そこに居る人や家族とサラーム(マレーの握手)をしながら、“Maaf Zahir dan Batin”と過去1年の許しを請い、許し合い、そして“Selamat Hari Raya”と挨拶、そして、皆でご馳走を楽しみます。
▼ラマダン中に送るカード、“Minal AIdzin Wal Faidzin”は私の罪をお許しくださいという意味。“Maaf Zahir dan Batin”とも言い、同様の意味。写真はヒジュラ暦1430年(2009年)のもの。
Hellmy,Selamat Hari Raya Aidilfitri from Flickr
ハリラヤプアサの朝、マレーの人々は礼拝に行き、そして、家族揃って先祖のお墓参りに行きます。そのあとは、新調したマレー衣装を着て、家族、親戚でハリラヤプアサのご馳走を囲み、子どもにはお年玉をあげます。そして、1ヶ月に渡って、親戚、友人宅を訪ね、サラームを交わし、ハリラヤプアサを祝います。
オープンハウス、自宅に招かれたら
オープンハウスと呼ばれる大人数の親戚、友人を招待するパーティを開く家庭も多いです。首相官邸の前や地元出身の大臣が地域の広場などで催すオープンハウスは誰でも、外国人も参加でき、開催場所と日時は新聞に載ります。
ムスリムやマレー系じゃなくても、オープンハウスやご自宅に招かれたら、「スラマット・ハリラヤ」と挨拶し、お年玉(マレー系は2、3リンギット程度)も持参しましょう。
その際ひとつだけ豆知識を。マレー系は大声を嫌がるので、相手に聞こえるくらいの音量でソフトに話すのがおすすめです!
文:森千恵(マレーシア在住ライター)
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