『ぜんぜん内向きじゃない日本の若者たち』に登場するのは「世界で最も住みやすい街ランキング」8位(※)にランクインしている西オーストラリア州パースで出会った日本人留学生たち。とにかく高い晴天率を誇るパースに暮らすだけあって、エネルギーあふれる表情を見せてくれました。なんだか元気が欲しい方、彼らから栄養を補給してもらいませんか?
※英経済誌「エコノミスト」の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」調べ
「海があって天気が良い。それで私はいつもハッピーでいられる。」
日本では美容師の仕事をしていたというKANAさん。海が好きなKANAさんはオーストラリアの小さな街バイロンベイに渡りました。一時帰国を経て、今はパースの語学学校PICE(パース・インターナショナル・カレッジ・オブ・イングリッシュ)に通っています。
「この街の人たちは早く起きて散歩したり、仕事を終えたらリラックスしてる。知らない人同士が笑顔でしゃべります。考えてみたら、日本にいたときはのんびりするってことをよくわかってなかったかもしれません。」
今、KANAさんは、英語試験IELTSの受験を目指して猛烈に勉強しています。
「美容師としてオーストラリアに永住したい。IELTS準備コースは大変!でも永住権をとるためにはIELTSのスコアが必要なのでがんばってます。」
「航空会社を目指して勉強中です。」
エディス・コーワン(Edith Cowan)大学の旅行/ホスピタリティ学部で学んでいるのがCHIEさん。オーストラリアでは観光にまつわる学部が盛んで日本からの留学生もいろんな学校で見かけますが、CHIEさんがこの大学を選んだのには譲れない理由があると言います。
「ダウリン先生というクルーズ旅行学の第一人者とされる先生がいるからです。ここの旅行/ホスピタリティ学部は、他校とかなり違うと思います。実践的でありながら、自ら考え、研究するということが求められます。」
学期に9つの論文を仕上げるというハードな勉強内容を、CHIEさんはむしろ楽しんでいるようにみえます。
「先日は、集客に悩んでいるビーチの振興策を4人1グループで考え、企画をプレゼンするという課題が与えられました。ちなみに先生は、課題と連絡先を与えるだけ。つまり、自分で取り組んで、壁にぶつかったら“いつでも相談に来なさい”ということ。指示されるまま動くのではないから面白いんですよ。」
バーベキューで出会ったサムライ3人衆
このサムライ3人衆(KYOSUKEさん、SORAさん、TAKUYAさん、順不同)に出会ったのは、1989年創立の老舗語学学校フェニックス・アカデミー(Phoenix Academy)のランチタイム。その日はコロニアル邸宅風キャンパスの中庭で、いろんな国籍の学生たちが一斉に集うバーベキューをやっていました。
私が彼らを『サムライ』だと呼ぶ理由はこうです。
私たちが日本語でお互いに簡単に名乗り合ったころ、現地学校のスタッフ1人がホットドッグをほおばりながら会話に参加してきました。そのとき、彼らは日本語を一斉にやめて英語にすぐ切り替えたのです。渡豪からわずか数か月の彼らにとって、何の準備もなく英語でインタビューに答えるのは想像以上に大変です。でも、つっかえてつっかえて、少しずつ話す。
英語学校にいるのだから、英語で話すのは当然と言えば当然。しかし、その当然は簡単にはできないものです。英語しか介さない学校スタッフにも会話がわかるようにとの優しさが、彼らを自然に英語へと向けました。なんだか、いい心意気ではありませんか。
インタビュー当日のパース市内の気温は摂氏30度。サムライたちからは違う汗も噴き出ていました。
「違う国、違うカルチャーっておもしろくないですか?」
獣医師を目指し、目下奮闘中のSAKIさん。彼女が通うマードック大学には、オーストラリアでトップクラスの獣医学部があります。大学選びの際、SAKIさんはオーストラリア、イギリスなど、国境にこだわらずに検討したんだそう。
さて、世界のどこでもすぐに順応できそうなSAKIさんは、学業のかたわら生徒会の役員までこなすという元気女子です。
「今度の水曜日、バーベキューをやるのでその準備で大忙しです(苦笑)。ちなみに、日本のバーベキューだと、お肉とか野菜をジュージュー焼きますけど、オーストラリアのBBQは、ほぼ100%ホットドッグなんですよ!」
「日本で行きたくない大学に行くよりも海外へ飛び出ちゃえ!って」
マードック大学でカイロプラクティック留学中のAOIさん。日本で医学部を目指した時期もあったAOIさんですが、
「行きたくない大学にいくくらいなら、海外に行きたい!って思って飛び出たんです。実際、飛び出てみたら、すっごく大変ですけどね(笑)」
大変と言いながらAOIさんはよく笑います。「どんな点が大変ですか?」と聞くと、
「まず、量。3時間の授業に対して10時間の予復習が必要です。それから、リスニング。カイロプラクティクスは人の体と健康にまつわる分野だから高い英語力が必要だし、授業中はマシンガンのように説明が進みます。あと、いろんなカルチャーを持った人と共存していくということ。この大学はアフリカやアジアなどいろんなバックグラウンドを持った人がたくさんいます。彼らと接していると、意外と私自身が固定概念を持っていたことに気付かされます。」
「今つかめるチャンスをつかまないでどうする。」
NAOさん(左)とMIWAさん(右)は、日本の大学に在籍しながら、マードック(Murdoch)大学に交換留学中。マードック大学には日本人留学生をお父さんのように見守る森山先生がいて、先生には「まもなく寝るヒマもないほど大変な日々が迫っていますよ。」と脅かされています。
日本の在籍大学に単位振替ができ、休学せずに渡航できる交換留学。高校生・大学生だけに与えられたチャンスとはいえ、誰だって留学に踏み出すのは勇気がいります。そんなときNAOさんは、実家のお父さんからその勇気をもらったと言います。
「父が、自分の人生年表を手作りし、人生のプレゼンをしてくれました。迷っていた私に『今つかめるチャンスをつかまないでどうする。』と。それが転機となり、留学を実現できたのです。」
「10年前の自分に、もっと勉強しておきなよ、と言ってあげたい」
介護職からシェフへキャリアチェンジ中のMIKIさん。オーストラリアへ渡って介護職を続けるつもりでしたが、オーストラリアの法律改正で、介護職では永住権獲得が難しくなってしまいました。
「そこで出会ったのが料理の世界です。英語学校に通ったあと公立の職業訓練校に入学。プロのシェフを目指して目下がんばってます。」
MIKIさんのように、当初思い描いていたプランがスムーズにいかないこともあります。しかし、新しく出会った『料理』という世界をMIKIさんは思い切り楽しんでいるよう。
「海外の人って日本のことすごく興味あるんですよ。それなのに私、日本酒のいいところ教えて、って聞かれても答えられなかったし、日本の震災のことや原発のこと聞かれてもちゃんと答えられなかった。英語だけじゃなく、日本のこと知っておくって本当に大切です。」
オーストラリアに来て「心が開いた。」
KENさんもMIKIさんと同じく、料理人修行の身です。日本では建設業で現場監督をしていたそう。オーストラリアではブリスベンにいた時期もありましたが、ビーチがすぐそばにあって住みやすいパースが今は気に入っています。
「パースは、勉強している人たちが多い気がします。他の都市の日本人が遊んでるってわけじゃないですけど、パースにいる日本人はけっこう落ち着いてます。」
KENさんもMIKIさん同様、オーストラリアの永住権申請を予定しています。いま、調理師コース(Commercial Cookery)を学ぶために通うのが私立専門学校ACAE(オーストラリアン・カレッジ・オブ・アプライド・エデュケーション)。同校を選んだのは「パースで料理人を目指すならTAFEか、ここ。」と著名レストランのキッチンスタッフがこぞって太鼓判を押す学校だからだとか。
この取材旅行中に、永住権申請を目指す若者に何人も出会いました。むろん、彼らは日本を捨てたわけではありません。単に、生きる場所は地球のいろんなところにある、ということなのでしょう。
同じことを言った2人。「人見知りが治りました。」
西オーストラリア大学付属英語学校(UWA CELT)に在学中のSAYAKAさん(写真左)は留学前、日本で看護学校に通っていました。しかし、在学中に待っていたのは大きな行き詰まり。退学するかしないかで悩んでいました。そんなSAYAKAさんにお母さんが「環境を変えておいで」と勧めてくれたのだとか。
「母に感謝しています。こっちへ来てから、自分に余裕ができたことで、今は新しい目標ができました。今はダイビングのインストラクター資格を取るために頑張っていますし、国際看護士になることについても改めて考え始めています。」
一方、REIKOさん(写真右)はホテルで働いてみたいという夢を持ちます。
「私、ホテル大好きっ子なんです。もともとはエディス・コーワン大学のホスピタリティ学部を受けてみたかったのですが、今はきちんと英語力を上げます。留学費用出してくれた両親には、期待に応えたいと日々思っています。」
「人生は1回。やりたいことやろう。」(SAYAKAさん)
「思ったときにやらないと。」(REIKOさん)
「ダイバーシティをこんなに経験できたのが財産です。」
▲西オーストラリア大学の日本人留学生たち。一番右がRUMIさん。
西オーストラリア大学の大学院課程で人材管理を学ぶRUMIさん。日本で人材に関わる企業で働いていたRUMIさんは、その世界でさらにプロフェッショナルにステップをのぼる誰もが大学院で学んでいたことから留学を決意。人材管理の分野ではアメリカ留学が多いなか、RUMIさんはなぜオーストラリアへ来たのでしょう。
「私も最初はアメリカを念頭に置いていました。しかし、アメリカの大学院入学にはGRE、GMATなど、英語力試験以外の受検が必要です。それらの試験準備までやってると入学がどんどん遅くなってしまう。早く大学院での勉強をスタートするためにも英語力だけで入学準備できるオーストラリア、そしてイギリスにも出願しました。」
臨機応変な戦略が功を奏して、順調にいけばRUMIさんは来年6月には卒業し、修士号を手にする予定。さらに、RUMIさんは将来のキャリアについても、フレキシブルな考えを持っているようです。
「人事関連の職種だけに固執してはいません。ここでは広く浅く勉強していますし、チャンスがあれば何でもトライしたいですね。」
以上、「ぜんぜん内向きじゃない日本の若者たち【オーストラリア・パースの留学生編】」をお届けしました。気持ちいいくらい、内向きじゃなかったですね!
インタビューに気軽に応じてくれた皆さん、ありがとう。そして、また近況を留学プレスまで教えてください。
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文: 若松千枝加(留学プレス編集長・留学ジャーナリスト)
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