ロンドン大学SOASで開発学を学ぶ。世界ランク2位の大学院で何を学べる?難易度・留学情報も解説

国際機関やNGO、政府機関で「貧困・格差・紛争・難民・ジェンダー」といった世界の課題解決に取り組みたい。

そんな人のための専攻が「開発学」です。

ロンドン大学SOAS(SOAS University of London)は、QS世界大学ランキング2026の開発学(Development Studies)分野で世界2位。

卒業生の多くは世界銀行や国連機関、NGO、政府機関など、さまざまな国際開発分野へ進んでいます。

SOASの開発学では、実際に何を学ぶのでしょうか。日本の大学からSOAS大学院を目指すには、どのくらいの成績や英語力が必要なのでしょうか。

この記事では、SOASの開発学の特徴、大学院コース、難易度、出願方法、学費・奨学金、卒業後のキャリアまでまとめて紹介します。

世界の課題に「関心がある」から、その解決にかかわる仕事を「目指す」へ。

SOASの開発学部について、具体的に見ていきましょう。

SOAS
目次

世界ランク2位。ロンドン大学SOASの開発学とは?

ロンドン大学SOASは、アジア・アフリカ・中東の地域研究で知られるイギリスの大学。開発学のほか、政治、経済、法律、文化、言語なども、それぞれの地域に根ざした視点から研究してきました。

なかでも開発学の評価は高く、開発学部門では長年、世界のトップランクにランクインしています。

アジア・アフリカ・中東を深く知る大学

SOASの大きな特徴は、地域研究と開発学が結びついていること。特に、SOASにはアジア・アフリカ・中東に強い専門家が数多くいます。

貧困や格差、経済発展、紛争、ジェンダー、労働、移民などの問題は、その国や地域の歴史、政治、文化と切り離しては語れません。

言語や文化はもちろん、政治、経済、法律まで幅広くカバーしながら、地域研究の知見をベースに、非西洋社会での開発の過程や考え方を大切にしています。

「開発」とはどういうこと?SOASで学ぶ開発学

「開発」
その言葉を聞いて、あなたなら何を思い浮かべますか?

  • 貧困を減らす
  • 学校や病院をつくる。
  • 経済を成長させる。
  • 国際機関やNGOが支援する。

もちろん、これらは開発学の大事なテーマです。ただSOASでは、もう一歩手前から考えることが必要だと公表しています。

そもそも「開発」とは何なのか。
誰が、誰のために、何を「発展」と決めるのか。

SOASでは、開発の意味そのものからさらに深掘りし、新自由主義(ネオ・リベラリズム)とその批判、産業化、労働と資本、貧困と不平等、ジェンダー・人種・階級、NGOや市民社会、貿易、農業や土地問題まで、幅広く扱います。

「西側から見た開発」そのものを問い直す

SOASの開発学では、アジア、アフリカ、中東などを含むグローバルサウスで起きている社会・経済・政治の変化を重要な研究対象としています。

これは、単に「グローバルサウスについて詳しく学ぶ」というだけではありません。

たとえば、ある国の経済成長や貧困問題を考えるときには、植民地主義の歴史、世界経済との関係、労働、ジェンダー、人種、階級など、現在の政策以外のさまざまな要素からその背景を考えていきます。

さらにSOASでは

「そもそも誰が『開発』を定義してきたのか」
「何を『進歩』と呼ぶのか」

という、開発という考え方そのものも問い直し、これまで当然とされてきた開発の前提を批判的に考えていきます。

在学生から「批判的に考えることがSOASらしい」という声が出てくるのも、こうした学び方とつながっています。

知識を増やすだけではなく、世界の課題を見るときに自分がどんな前提や立場からそれを見ているのかを問い直す。
ここにSOASならではの学びの特徴があります。

SOASは理論ばかり?在学生・開発業界からはこんな声も

SOASの開発学については、こんな声もあります。

口コミサイト「Reddit」でSOASへの進学を考えている人が「プログラムが理論中心すぎないか」と心配する投稿をしました。

これに対し、現役で国際開発分野で働いているという回答者が「SOASは開発学のなかでは比較的『学術寄り』だと思う」というコメントを寄せています。

確かにSOASの特徴のひとつは「すぐ現場で使えるノウハウ」だけを学ぶことではありません。開発を理論や歴史、政治、経済、社会構造から深く考えること。それがSOASらしさです。

とはいえ、詳しくは記事後半で触れていきますが、「SOAS=理論だけ」というわけではありません。

学びを実際の開発の現場につなげる現地実習もありますので、まずはそれらをご紹介する前に、SOAS開発学部の代表的なコースを知り、SOASの全体像をつかんでおきましょう。

ロンドン大学SOAS大学院で学べる開発学コース

イギリスの修士課程は主に1年間ですが、SOAS大学院の開発学修士課程も1年間が基本です。現地実習をとると、全体で約2年弱となる場合もあります。

グローバル開発学修士(MSc Global Development)

開発学を幅広く学びたい人は、まず候補として考えたいコースです。

必修科目では、開発学の主要な理論や考え方に加え、開発研究に必要なリサーチスキルを身につけます。選択科目では、貧困、不平等、労働、ジェンダー、農業、政治経済など、自分の関心に合わせて専門性を深められます。

修士論文では、自分で決めたテーマを研究します。

グローバル開発学修士・ジェンダー(MSc Global Development: Gender)

開発の問題をジェンダーの視点から掘り下げるコースです。

経済発展や貧困、労働、政策は、女性や男性、さまざまなジェンダーの人々にどんな違いをもたらすのか。
開発政策そのものにジェンダーの視点をどう取り入れるのか。

こういったテーマを考えます。

国際協力やNGO、政策分野で、ジェンダーを専門にしたい人が注目したいコースです。

グローバル開発学修士・労働とアクティビズム(MSc Global Development: Labour and Activism)

経済発展の裏側にある労働や雇用、労働運動、社会運動に焦点を当てたコースです。

「経済が成長すれば、暮らしも豊かになる」とは限りません。誰が働き、どんな条件で働き、その利益は誰の手に渡るのか。開発を「働く人」の側から考えたい人向けのコースです。

国際開発研究修士(MSc Research for International Development)

国際開発について「何を研究するか」だけでなく、「どう研究するか」まで重点的に学びたい人には、国際開発研究修士というコースもあります。

このコースは、グローバル開発学修士などと同じく授業を履修して学ぶ修士課程(Taught Master’s)ですが、より研究方法論に重点を置いているのが特徴です。

開発学における理論と研究方法、政治との関係を考えながら、国際開発研究で使われるさまざまな研究手法や方法論について学びます。修士論文も「国際開発の研究方法(Research Methods for International Development)」をテーマとした60単位の科目として位置づけられています。

また、このコースは英国の経済社会研究会議(ESRC)の支援を受けており、修了後にSOASの国際開発分野のMPhil/PhDへ進む「1+3」のルートも設けられています。将来、博士課程への進学や研究職を考えている人にとっても注目したいコースです。

日本にいながらSOASで開発学を学ぶこともできる

SOASには、オンラインのグローバル開発学修士(MSc Global Development Online)もあります。

時差を含め、現地で学ぶのとは異なる難しさもありますが、興味がある方は公式サイトをのぞいてみてください。

参考:MSc Global Development (Online) | SOAS

学ぶだけではない。開発の現場につながる機会

SOASでは、実践の場として開発の現場を経験し、仕事につなげていくための研修を実施しています。代表的なものが次の3つです。

種類内容
バーチャル・プレイスメント・開発関連組織の課題にオンラインで取り組む
・海外開発研究所(ODI)、ISEAL、国境なき医師団(MSF)などでの研修実績
・8週間、計40時間
・通常の修士課程で選べる15単位の科目
・2~9人のチームで参加
・履修人数に上限あり
ワーク・プレイスメント・イヤー・実際の組織でフルタイムで働く
・10~12か月
・2年間の「with Work Placement Year」コースを選択
・勤務先は学生自身で探して確保
・SOASのキャリアチームによるサポートあり
スタディツアー・海外を訪れて現地の専門家や組織から学ぶ
・SOAS大学院生が参加できる短期海外研修
・ニューデリー、ソウル、キガリ、ヨハネスブルク、ドーハなどで実施実績あり
・参加費や渡航費などが別途必要

ロンドンにいること自体も学びの一部

そして、SOASで学ぶもうひとつの魅力がロンドンという立地。

国際機関、NGO、シンクタンク、研究機関が集まる国際都市です。SOASでも講演やセミナー、イベントを通じて、研究者や実務家の議論に触れるチャンスがたくさんあります。

卒業生の声のなかにも、合格通知をもらった数校のなかでSOASを選んだ理由として「ロンドンならではのチャンス」を挙げている人もいました。

ロンドン大学SOAS大学院の難易度

日本の大学卒業者はGPA 2.7がひとつの目安

グローバル開発学修士の基本的な入学要件は、イギリスの大学GPA目安が2:2(Lower Second-Class Honours)以上。

この目安を日本の大学卒業者にあてはめると、SOASでは次のいずれかを満たしていることを「2:2相当」とみなしています。

  • GPA 2.7/4.0
  • 成績 70~75%
  • 評価 Good/B

ここからもわかるとおり、「世界2位だから、大学時代トップクラスの成績でないと出願できない」わけでは決してありません。

もちろん、これはあくまで出願を検討するための最低基準。基準を満たしても合格が保証されるわけではありません。

SOASでは志望理由書なども含めて、出願者を総合的に審査します。

開発学を専攻していなくても出願できる?

グローバル開発学修士の入学要件では、学部時代に開発学を専攻している必要はありません。

日本の大学で国際関係や政治、経済を学んできた人はもちろん、開発学とは違う分野の学部を卒業した人にも出願のチャンスがあります。

国際開発の実務経験は必須ではない

「NGOや国際協力機関で働いた経験がないと難しいのでは?」

そう不安に思う人もいるでしょう。しかし、公式入学要件には国際開発分野での職務経験は含まれていません。

大学卒業後すぐに進学してもいいですし、社会人として別の分野で経験を積んでから開発学に進む道もあります。

大切なのは、これまで何を学び、なぜ開発学を選び、SOASで何を学びたいのか。

成績とあわせて、自分なりの進学理由をしっかり組み立てること。それがSOAS大学院を目指す第一歩になります。

日本からロンドン大学SOAS大学院を目指すには?

日本からSOASを目指す場合、基本のルートは日本または海外の大学で学士号を取り、SOASへ大学院出願することです。

ここではグローバル開発学修士を例に、必要な提出物を見ていきましょう。

参考:MSc Global Development | SOAS

SOAS大学院への出願に必要なもの

2026年入学の場合、修士課程への出願で主に必要な書類はこちらです。

  • 大学の成績証明書
  • 卒業証明書(すでに卒業している場合)
  • 履歴書
  • 志望理由書
  • パスポートの顔写真ページのコピー
  • 英語力テストスコア

推薦状は、現在のSOASの修士課程では必須ではありません。ただ、任意で提出することはできます。

成績が入学基準を下回っている場合や、めずらしい学歴・経歴を持つ場合には、出願を後押しする材料になることもあります。

志望理由書では「なぜSOASで開発学なのか」を伝える

出願書類のなかでも、特に時間をかけたいのが志望理由書です。

SOASでは1,000語程度を目安に、自分の経験やスキル、志望プログラムへの関心、進学の動機、将来の目標などを書くよう求めています。

これまで何を学び、どんな問題に関心を持ってきたのか。なぜ大学院で開発学を学ぶ必要があるのか。そして、なぜSOASなのか。

これらを自分の経験や将来像とつなげて具体的に書くこと。それが志望理由書の核になります。

英語力も準備しておこう

日本から出願する場合、原則としてSOASが定める英語力の基準を満たす必要があります。

ただし、英語試験のスコアは出願時点では必須ではありません。基準に届いていなくても出願はでき、合格すれば英語力の証明を条件とした条件付き合格(Conditional Offer)が出ることもあります。

▼英語力スコアの目安

TOEFL iBT         5.0以上
ライティング/リスニング4.5以上
リーディング/スピーキング4.0以上
IELTS6.5
全サブスコア6.0以上 
Duolingo120
全サブスコア110以上

なお、上記の英語力に届いていない場合には、大学が定める4~8週間の英語コース履修と合わせて仮合格をもらえることもあります。

出願は早めに準備を

2026年9月開始の修士課程は、7月31日が出願締切。ただし、奨学金や外部からの資金援助を利用する予定の人には、SOASも早めの出願をすすめています。

また、SOASでは1年度につき複数の修士課程から同時に合格を受け取ることはできません。

第一希望と第二希望を出し、まず第一希望が審査され、不合格の場合などに第二希望が検討される仕組みです。

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ロンドン大学SOASへの大学院留学、費用はいくら?

SOASの大学院へ留学する場合、学費に加えて、ロンドンでの住居費や食費、交通費も考えておく必要があります。ここではグローバル開発学修士を例に、留学費用の目安をご紹介していきます。

学費

2026-27年度の授業料は、年間25,320ポンド。これが1年間の基本の授業料になり、ワークプレイスメントについては別途費用がかかります。

ロンドンでの生活費も計算しておこう

SOASが学生の生活費用算定に使っている目安が、こちらです。

  • 住居費:週300ポンド
  • 食費:週100ポンド
  • 教材費・交通費・個人的支出:週140ポンド

実際に必要な金額は、住む場所や生活スタイルで大きく変わります。

特にロンドンのような大都市では、住居の場所、そして何人でシェアするかなどで大きな差があります。学費だけでなく生活費も含めた資金計画を早めに立てておきたいところです。

留学生が応募できる奨学金もある

SOASでは留学生を対象とした奨学金制度も実施しています。

海外からの修士課程留学生150人を対象にした「SOAS修士奨学金(SOAS Master’s Scholarship International)」では8,000ポンドの授業料が免除となります。

さらに、授業料全額免除となる25人、20,000ポンドの授業料免除となる8人が選出される「SOAS国際学術優秀者奨学金(SOAS International Academic Excellence Scholarship)」もあります。

SDGsに関連する修士課程を対象にした「SOAS Sustainable Development Goal Scholarship」もあります。授業料全額と最低15,000ポンドの生活費を支給する奨学金で、支給対象人数は4名です。

奨学金は種類によって応募資格や締切が異なり、制度自体も年度ごとに変わります。大学院への出願と同時に、利用できる奨学金も早めに探しておくのがおすすめです。

学費・奨学金・生活費は年度によって変更されます。最新情報を確認してください。

SOASで開発学を学んだ、その先は?

「開発学の修士号を取ったら、どんな仕事に就けるの?」

大学院選びでは、卒業後の進路も気になるところです。

SOASの開発学卒業生は、国際機関、NGO、政府機関、シンクタンク、民間企業など幅広い分野へ進んでいます。

大学が公表している近年の就職先には

  • 世界銀行
  • 国際労働機関(ILO)
  • 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
  • 国境なき医師団(MSF)
  • Oxfam
  • Save the Children
  • Amnesty International
  • 海外開発研究所(ODI)
  • KPMG
  • 各国政府
  • 大使館

などがあります。

「SOASを出れば国際機関に行ける」わけではない

ただ、この就職先リストだけを見て「SOASへ行けば国連や世界銀行への道が開ける」と考えるのは早計です。

国際開発の世界では、大学院で何を学んだかと同じくらい、どんな実務経験を積んできたかも重要になります。

あるSOAS卒業生は「SOASでの学びは就職でプラスになった。でも自分の国際開発キャリアを大きく支えたのは、大学卒業後に西アフリカで積んだ実務経験だった」と自身の経験を振り返っています。

SOASの修士号そのものを「ゴール」と考えるより、SOASで専門性を磨く間にプレイスメントやインターン、ボランティアで経験を積む。そして、自分なりの専門分野をつくっていく。

そんな大学院生活をイメージしておくとよさそうです。

世界の課題を「学ぶ側」へ

貧困、格差、紛争、ジェンダー、移民、気候変動。

ニュースで世界の課題に触れるたび「なぜこうなるのだろう」「自分にもできることはないだろうか」と考えたことがある人もいることでしょう。

SOASの開発学部は、そのような疑問に簡単に答えを教えてくれる学校ではありません。

むしろ、世界で起きていることを、いろいろな角度から問い直す場所。自分自身で考える力を鍛える場所です。

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