「飛行機やロケット、人工衛星の開発にかかわりたい」
「宇宙産業で働いてみたい」
「宇宙飛行士になりたい」
そんな夢を実現するための代表的な学部のひとつ、それが「航空宇宙工学」です。
この記事でご紹介するアメリカのパデュー大学(Purdue University)は、航空宇宙工学で全米トップクラスの大学。
航空機から宇宙機まで幅広く学べるだけでなく、推進や極超音速、宇宙システムなどの研究環境も充実しています。
この記事では、パデュー大学の航空宇宙工学の強み、卒業後の進路、学べる内容、難易度、日本からの出願方法や費用まで紹介します。
航空・宇宙の世界で働きたい方、最後まで楽しみながら読んでみてください!

パデュー大学の航空宇宙工学は何がすごい?
パデューの航空宇宙工学部は、2026年のU.S. News全米大学ランキングで航空宇宙工学学部プログラム全米3位にランクされている名門です。
正式名称を「パデュー大学ラファイエット校」と言い、インディアナ州ラファイエット市にメインキャンパスを持つ州立大学です。
パデューの強みは、ランキングだけではありません。航空から宇宙までを幅広く学べること、大規模な教育・研究環境、そしてアメリカの航空・宇宙分野をひっぱってきた長い歴史があります。
航空から宇宙まで。「飛ぶ」を幅広く学ぶ
学部名にあるAeronauticsは「航空」、Astronauticsは「宇宙航行」を意味しています。
その名のとおり、パデューでは「航空機だけ」「宇宙だけ」に分けるのではなく、大気圏内の飛行から宇宙空間までを幅広く扱っています。
空気力学、推進、構造・材料、制御、宇宙力学、航空宇宙システムなどを学びながら、自分が航空・宇宙のどの分野を専門にしたいのかを探していけます。
アメリカ最大規模の航空宇宙工学プログラム
パデューの航空宇宙工学部は、アメリカ最大規模の学位授与数を誇るプログラム。2020年以降、全米のどの大学よりも多くの航空宇宙エンジニアを送り出しています。
航空と宇宙が大学の歴史に根づいている
パデューと航空の関係は、航空宇宙工学部が設立される前から始まっています。
1930年にはアメリカの大学で初めて飛行訓練を単位として認定。1934年には大学所有としてアメリカ初の空港を開設しました。
1930年代には女性飛行士アメリア・イアハートがパデューで女性のキャリアに関するアドバイザーを務めたこともあります。
卒業生のなかには、人類で初めて月面に立ったニール・アームストロングをはじめ、27人の宇宙飛行士がいます。そのうちの18人が航空宇宙工学部出身です。
「飛行機」がまだまだ「新しい乗り物」だった時代から、現在の宇宙開発まで、パデューが長い間、航空・宇宙分野の人材と技術を育ててきたことがうかがえますね!
航空宇宙工学を学んだ、その先は?
航空宇宙工学からつながる仕事は、宇宙飛行士のほか、航空機や宇宙機の設計、ロケットの推進システム、人工衛星、構造・材料、飛行制御など、多くの仕事があります。
▼職種の例
- 航空機・宇宙機の設計や開発
- ロケットエンジンなどの推進システム開発
- 人工衛星や宇宙システムの開発
- 空気力学・極超音速飛行などの研究
- 飛行制御・自律飛行システムの開発
- 航空宇宙向けの構造・材料開発
- 大学・研究機関での研究や大学院進学
卒業生は航空・宇宙産業の第一線へ
大学が公表している2022年春の卒業後調査では、卒業生の97%が卒業時点で進路や就職が内定。56.6%が就職(フルタイム)、40.4%が大学院へ進学しています。
主な就職先にはノースロップ・グラマン、ロッキード・マーティン、ボーイング、ブルーオリジン、コリンズ・エアロスペースなどが老舗から新規参入企業まで、有望企業がずらりと並びます。
近年の卒業生も、NASAのような巨大組織に限らず、シエラ・スペース、アストラニス、ストーク・スペースなど成長が見込まれる宇宙ベンチャー企業にもどんどん活躍の場を広げています。
卒業生の初任給平均は82,272ドル(2025年度)です。留学費用については後述しますが、年間の留学費用を大きく上回る初任給水準となっています。
日本人留学生は「米国籍」の条件に注意
アメリカの航空宇宙産業には国家安全保障や防衛にかかわる仕事もあり、国籍やセキュリティ基準が必要な職種があります。米国籍を持っていない日本人留学生の場合、アメリカではすべての仕事に応募できるわけではありません。
日本にも有望な航空宇宙産業があります。JAXAをはじめ大手重工・電機メーカー、さらには最先端の宇宙ベンチャーも生まれています。米国の航空宇宙企業の日本法人もあり、未来のチャンスは日本にも広がっています。
パデュー大学の航空宇宙工学では何を学べるの?
パデューでは工学の基礎から始め、航空宇宙工学の主要分野を幅広く学び、最後はそれらを組み合わせて実際の設計をするところまで進みます。
1年目は航空宇宙工学ではなく「工学」を学ぶ
高校から学部課程に入学した人は、1年次から航空宇宙工学部に所属するわけではありません。
まず1年次には工学部に入り、工学の基礎を学びます。2年次から航空宇宙工学の専門科目が加わり、静力学、動力学、構造、熱力学などさらなる基礎を固めます。
3年次になると空気力学、推進、構造、ダイナミクス、制御システムなどの専門科目が本格的に始まります。
6つの分野から専門性を深める
パデューでは、主に次の6分野を学びます。
| 空気力学(Aerodynamics) | 航空機や宇宙機のまわりの空気の流れを扱う |
| 航空宇宙システム設計(Aerospace Systems Design) | 複数の技術を組み合わせて航空機・宇宙機を設計する |
| 宇宙力学・宇宙応用(Astrodynamics and Space Applications) | 人工衛星や宇宙機の軌道、宇宙での運動を扱う |
| 自律・制御(Autonomy and Control) | 航空機や宇宙機などを安全に動かすための制御技術を学ぶ |
| 推進(Propulsion) | ジェットエンジンやロケットエンジンなど、機体を動かす仕組みを学ぶ |
| 構造・材料(Structures and Materials) | 飛行時の力、振動、熱などに耐える構造や材料を学ぶ |
入学時に将来の細かい志望を決めていなくても、幅広く学ぶなかで徐々に自分の専門を絞っていくことができます。
最後は航空機か宇宙機を設計する
最終学年では、チームでプロジェクトに取り組みます。
空気力学、推進、構造、制御など、それまでに学んだ知識を組み合わせ、航空機または宇宙機の予備設計を行います。
工学の基礎から始まり、専門を深め、最後はひとつの航空宇宙システムとしてまとめ上げる。これがパデューでの学びの大きな流れです。
パデューだからできる最先端の航空宇宙研究
パデューには、航空・宇宙分野を実験できる大規模な研究施設があります。
まだ答えのない技術を研究するのが航空宇宙工学。パデューの施設は大学教育の範疇を超えて、航空宇宙業界のプロフェッショナルにとって貴重な研究拠点でもあります。
世界最大級の大学推進研究施設「Zucrow Labs」
ロケットやジェットエンジンに興味がある人が注目したいのが、モーリス・J・ズクロウ研究所です。
世界最大級の大学推進研究施設で、燃焼、タービン、極超音速、空気力学、流体力学などの研究設備が集まっています。
ジェットやロケットの燃焼試験に加え、近年は3Dプリンターで製造した回転デトネーション・ロケットエンジンなど、次世代の推進技術も研究されています。
「マッハ8」の世界を研究する
パデューが力を入れている分野のひとつが、音速の5倍を超える極超音速です。
極超音速・応用研究施設(HARF)には、世界で唯一のマッハ8静穏風洞と、極超音速(マッハ5以上)の飛行環境や大気圏再突入時の高温・高圧状態を再現するための衝撃波・膨張波トンネル装置「ハイパルス」などがあります。
高速になるほど大きくなる熱や機体への負荷などを、最先端の実験を通して研究できます。
人工衛星から宇宙探査まで
宇宙力学・宇宙応用の分野では、宇宙機の軌道、ナビゲーション、リモートセンシングなどを研究します。
光学地上局、衛星追跡局、ミッション運用センターなどもあり、ロケットで打ち上げた後の宇宙機や衛星の運用まで研究対象になります。
学部生も研究に参加できる
こうした研究には、大学院生だけでなく学部生も教員の指導を受けながら参加し、単位を取得できる制度があります。
パデュー大学航空宇宙工学の難易度
パデュー大学の航空宇宙工学は、世界のトップクラスです。パデュー大学工学部1年次の合格率が34.7%、2年次以降は成績に応じて航空宇宙工学系へ進めるかどうかが決まりますので、入学後もしっかり勉強していく必要があります。
第一歩はパデュー大学工学部への合格
日本の高校から学部課程を目指す人がまず頭に入れておきたいのは
- パデューに合格すること
- 入学後に航空宇宙工学部へ進むこと
この2つを分けて考えることです。
まずは1年次工学部へ出願します。
ここで合格することが第一歩です。
入学審査は日本の大学のようなテストでの足切り方式ではありません。
書類審査です。
合格者のGPA中央値は3.89-4.00という高い成績水準です。(参考:パデュー大学クラスプロファイル)
そのため、焦って自分で書類をそろえて出願するのではなく、ひとつひとつの書類を丁寧に準備し、よく対策を練ってから出願することが合格を勝ち取る秘訣です。
入学後に航空宇宙工学へ
無事に工学系基礎科目を終えたら、希望する工学専攻を申請します。
もちろん航空宇宙工学部は定員のある競争率の高いプログラム。希望者が定員を上回った場合は、成績のほか、工学関連科目を重視した評価、数学・物理などの成績、履修状況や成績の推移などを見られることになります。
日本からパデュー大学の航空宇宙工学を目指すには?
では、具体的に日本の高校から学部課程を目指す流れを確認していきましょう。
まず工学部への出願準備を進めます。特に大切なのが、高校での数学・理科と英語の準備です。
高校では数学・理科をしっかり履修しよう
パデュー大学では、高校までの最低履修要件は次のとおり指定しています。一般的な理系志望の日本の高校生はだいたい履修しているはずですが、まずは確認しておきましょう。
・英語:4年間
・数学:4年間
・実験科学:3年間
・社会科:3年間
・外国語:2年間
化学の履修も推奨されています。また、微積分、物理など、可能な範囲でより高度な数学・理科を学んでおくことも勧められています。
英語力はどのくらい必要?
留学生は次の英語力テストのスコアをクリアしていることが基準となります。
- IELTS 6.5以上(各セクション6.0以上)
- TOEFL iBT 4.5以上(各セクション4.0以上)
- Duolingo English Test 110以上
必要な試験や基準は変更されることがあります。出願する年度の最新情報を確認してください。
English Proficiency Requirements – Undergraduate Admissions
何を提出する?
出願時には、高校で履修した科目や成績、エッセイなどを提出します。詳しくは「パデュー大学ガイド」のページでも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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大学院からパデューを目指す道も
日本の大学で工学を学んでから、パデュー航空宇宙工学部の大学院課程へ進む方法もあります。
大学院では、空気力学、航空宇宙システム、宇宙力学・宇宙応用、自律・制御、推進、構造・材料などから専門分野を深く研究できます。
大学院課程では志望に合わせて細かくプログラムがわかれていますので、ここでは参考までに「Aeronautics and Astronautics」の出願要件をご紹介します。
▼出願に必要なもの
・推薦状(2通まで)
・志望動機書
・個人の履歴書(パーソナルヒストリー)
・GREスコア(verbal156、quantitative159、analytical4.0)
・レジュメ
・成績(GPA3.25以上:A=4)
・英語力スコア
▼英語力スコア基準
| TOEFL iBT | 4.0以上(ライティング/リーディング4.0、スピーキング/リスニング3.5以上) |
| IELTS | 6.5以上(ライティング5.5、リスニング/スピーキング6.0、リーディング6.5以上) |
| Duoling | 115(全セクション115)以上 |
▼志望動機書
選考の大きなウェイトを占めるのが志望動機書です。これまでの課題例をご紹介しますので、自分ならどんな風に組み立てるか、書くのに何が足りないか、などイメージしてみてください。
| 1.あなたの将来の仕事やキャリアの目標は何ですか? |
| 大学院で学ぶことが、その目標の実現にどのように役立つのか説明してください。 |
| 2.研究・学術・創作分野で、どのようなことに関心がありますか? |
| 特に興味を持っているテーマを説明してください。関心分野は将来変わる可能性があることを審査側も理解していますが、できるだけ具体的に書いてください。 |
| 3.これまでの経験やスキルが、大学院で学ぶためにどのように役立つのか説明してください。 |
| 大学で履修した科目、仕事や研究の経験、インターンシップ、研究発表、展示、論文・出版物、地域活動などを含めることができます。研究・学術経験について書く場合は、研究テーマ、指導教員、自分が担当した役割、得られた成果についても説明してください。 |
| 4.あなたのスキル、これまでの準備、関心分野が、志望するプログラムとどのように合っているのか説明してください。 |
| 自分の研究・学術的関心と共通する教員についても具体的に挙げてください。審査では、志望するプログラムや教員、主要な研究分野について、事前に十分調べているかどうかも確認されます。 |
▼パーソナル・ヒストリー・ステイトメント(Personal History Statement)
志望動機書とは別に、個人の人生経験を語る「パーソナルヒストリー・ステイトメント」も、審査官に自分を理解してもらう大切な提出物です。
参考として、過去の課題例をご紹介します!
| 【必須回答】 1.これまでの生い立ちや人生経験が、大学院で粘り強く学び、工夫しながら課題を乗り越えていく力にどのようにつながっているか説明してください。 |
| 【必須回答】 2.これまでの人生経験を踏まえ、多様な研究関心、能力、背景、経験を持つ研究者が互いに支え合い、尊重され、その価値を認められる学術コミュニティに、あなたがどのように貢献できるか説明してください。 |
| 【任意回答】 3.成績などの学業記録が、自分の本来の能力を十分に反映していないと考える場合は、その理由を説明してください。 学業成績に影響を与えた事情や要因があれば、それについても説明してください。審査では、あなたに与えられていた機会や環境を踏まえたうえで、どのような成果を上げてきたのかが考慮されます。 |
3番は、日本人学生にとっては少し意図が分かりにくい設問に見えるかもしれません。「成績だけを見ると不利に見える事情があるなら、その背景を説明するチャンス」と考えてみてください。
単なる言い訳を書く欄ではなく「置かれていた状況に対して、実際にどこまで取り組み、何を達成したか」も含めて伝えるための任意の設問ととらえてみましょう。
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パデュー大学への航空宇宙工学留学、費用はいくら?
パデュー大学工学部学部課程の1年間の留学費用(住居費等を含む)について、大学公式では約56,748ドルを目安とすると算出しています。修士課程では53,414ドルです。(内訳、最新の学費は→Tuition – Finance)
日本から応募できる奨学金も調べよう
パデュー大学ラファイエット校があるインディアナ州は、都市型の州とくらべて約3割ほど物価が安いとされています。
学費や家賃についても、ニューヨークやカリフォルニアなどの同ランクの大学と比較すると約30,000ドル~40,000ドルほど抑えめです。
とはいえ、決して安い留学費用ではありません。やはり奨学金の活用も念頭に入れたいと思う人も多いでしょう。
パデュー大学では、留学生が利用できる大学独自の奨学金は限られています。そのため、日本人留学生は日本の公的制度や民間財団の奨学金の活用がメインとなってきます。
学部留学では、日本学生支援機構(JASSO)の海外留学支援制度(学部学位取得型)などが代表例です。そのほかにも財団、自治体、企業などが奨学金を実施しています。
大学院では、JASSOの海外留学支援制度(大学院学位取得型)やフルブライト大学院留学プログラムなども候補になります。
奨学金の内容は年度ごとに変わるため、最新の募集要項を確認してください。
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