国民全員が休みをとるドイツの「日曜日」事情~クリューガー量子(ハイデルベルク市公認ガイド)

2月末に施行されたプレミアムフライデー。しかしながら、実際に早く帰った人は3.7%(株式会社インテージの調査による)と、結果は芳しくはありませんでした。
 
ドイツでは、日曜日を法律で休日と定めています。人々の生活を身体的に精神的に豊かにするために、企業規模や職種に関係なく、皆で休む日を法律で制定しています。
 
本記事ではドイツの日曜日をご紹介します。
 

 

ドイツの法律:日曜日は店は休み。

ドイツでは労働者の保護、日曜休日の保護を目的として、日曜日の店の営業が閉店法によって厳しく規制されています。企業規模や職種に関係なく、基本的に日曜日は皆、仕事を休みます。
 
閉店法は州によって少々異なります。
 
殆どの州で、日曜日は店は営業禁止。いくつかの州で年に3~6回の日曜日に営業。2つの州で年に8~11回、日曜日の営業が認められています。
 
パン屋、ガソリンスタンド、レストラン、カフェ、駅や空港店舗などは、閉店法の適用外であるため、日曜日も営業しています。
 

日曜日に店が休みでも、GDPデータでは消費に問題はない。

日曜日に店が休みでも、以下の通り、国民消費において日本との大きな差は見られません。
 
・GDPは日本が3位、ドイツは4位(2015年IMF統計)。
・1人当りのGDPは日本が32位、ドイツが24位(2015年国連統計)。
・1人当り購買力平価は、日本が31位、ドイツが20位(2015年IMF統計)。
 

買い物はいつする?

それでは、ドイツ人は日曜日に買い物をしないで、いつするのでしょうか。
 
家族そろっての大きな買い物は、土曜日にします。その他の小さな買い物は、月曜日から金曜日まで、仕事が終わった後です。これは、残業がほとんどないこと、時短勤務などによって可能です。
 
そもそも、ドイツ人にとっては日曜日に店が閉まっていることが当たり前。店の休業に不便さを感じるたり、 本当に困ることは殆どありません。
 
どうしても必要な食料品などは少々高価になりますが、ガソリンスタンドである程度購入できます。卵1つ、小麦粉が少しいる場合などは、ご近所さんにもらいに行くこともしばしばです。日曜日はちょっとしたご近所交流が生まれる日でもあります。
 

クリスマス前の日曜日営業に関する宗教上の論争

2006年にベルリンで新しい閉店法が定められ、クリスマス前の4回全ての日曜日の店の営業が認められました。この決定に対し、カトリック、プロテスタント教会は強く反対しました。
 
プロテスタント教会代表の主張は「病院、老人ホーム、消防署など、日曜日に働かなくてはいけない人は既に沢山いる。しかし、店の営業時間は我々が決めることができる。日曜日は、ミサやスポーツ、街の行事、展覧会など、人々が共に時間を過ごす日だ。」というものでした。
 
その結果、2010年に法律が再制定され、ベルリンにおけるクリスマス前の日曜日の店の営業は2回までと制限されました。
 

日曜日は家族で静かにゆっくり過ごす

ドイツ人の日曜日は、家族で静かに過ごす日。法律で、犬も子供も日曜日は静かにしなくてはいけないと定められています。
 
ドイツでは各街の規模が小さいため、人が住む街のすぐ近くに森や畑、美しい自然があります。百万都市は、ベルリン、ハンブルク、ミュンヘン、ケルンの4つしかありません。
 
日曜日になると、人々はこの昔から大切にしてきた家の近くの美しい自然の中を散歩します。
 
人が沢山いる所や店に行かず、自分のペースで家族や友人と歩き、話をしながら、風を感じ、日の光を浴びて、空を見上げ、木々の緑を堪能するのは、それだけで心が落ち着くものです。全身が深呼吸をするようです。
 
店が閉まる日曜日は、1週間の中で1番落ち着いた、豊かな日です。
 

国民が望む法律を制定し、国民は順守する。

残業規制に揺れる日本。その改善策の一つとして始まったプレミアムフライデー。
 
祝休日を問わず店が営業している日本で、サービス業の人は今以上の仕事が期待され、早時の帰宅を促される他種業の人は今以上の消費を期待されてしまう現状があります。
 
しかし、ドイツの元プロテスタント教会代表の言葉の通り、我々の労働時間は我々が決めることが出来るのです。
 
国民が望む法律を制定し、国民は順守する。ドイツではこれが実行され、人々は潤いのある生活を送っています。ドイツ有力紙”Die Welt”による2012年の委託調査では、ドイツの73%の人が日曜日の店の閉店に賛成しています。
 
日曜日、ドイツでは店は休み。1週間で1番豊かな日です。
 
文:クリューガー量子(ハイデルベルク市公認ガイド)
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