薬物・アルコール依存症の治療をするタイの寺院とはどんな所なのか?~Sazu Iwai-Pawle(タイ バンコク在住ライター)

タイでも薬物依存アルコール依存は社会問題です。そんなタイに、薬物、アルコール依存症の治療を行う寺院、Wat Thamkrabok(ワット・タムクラボーク)があります。今日は、ワット・タムクラボークの訪問レポートをお届けします。
 

外国人にも門戸を開いている寺院

日本でも芸能人が逮捕されるなど、薬物依存は社会問題となっています。タイでも薬物依存は社会問題となっており、貧困からお金のために薬物の運び屋となり、薬物に手を出し依存症に陥ることもあります。
 
寺院ではタイ人だけでなく外国人にも門戸は開かれ、仏教だけでなく異教徒にも対応しています。この寺院では、薬物依存症への治療だけではなく、アルコール依存症の治療もおこなわれています。
 
見学した日の利用している人を見ると、男性は20~30歳代の若者が多く、女性は40歳代の人が多い模様。1日の利用者の上限は200人、見学に行ったこの日の利用者は80人。昨年は595人が利用、2012年には1490人が利用しました。ポーランド、オランダ、オーストラリア、アメリカ、イギリスと世界からも多くの人が治療に訪れます。この治療は、西洋人社会では有名ですが、日本人の利用は今まで一度もないそうです。
 

タイのライフスタイルに根差した「ハーブ」

寺院では、タイハーブのお茶を飲みで吐いて、身体の中を浄化し、依存からの離脱、解毒するというケアを行っています。タイのハーブはタイ語では「サムンプライสมุนไพรไทย」。
 
タイハーブは、料理、化粧品、石鹸、シャンプー、お茶、歯磨き粉などにも使われ、漢方と似ているところがあります。ハーブはタイ人にも生活の中に入り、体調が悪い、ニキビが出来たなど言うとハーブの種類をアドバイスしてくれる人も少なくありません。生活に根差した健康法なのです。
 

ハーブを活用したお寺での治療

寺院には、最低5泊6日、最大15日滞在します。15日間は、寺から出ることができません。15日以上の滞在は延長理由により可能な場合があります。
 
最初の5日間は、タイハーブをショットウイスキーのように飲み、大量の水を飲み吐きます。吐くときは、利用者が横並びに並び、周囲を他の利用者、お坊さん、利用者の家族、子供、友人、見学者が囲み、太鼓、鐘を鳴らし囃し立て、手拍子をします。周囲の囃し立てに合わせ吐きます。
 
大勢のなかで実施するのは、当事者同士の仲間意識を持たせ支え合うことができるように、子供たちに見せることは教育として考えているそうです。家族、知人、見学に来た人に見せるのは、お寺を出た後再び薬物、アルコールに手を出さないように社会的n支えを協力してもらうためでもあります。
 
5日間は、1日1回は必ず、この状況で吐くことで身体を浄化していく治療を続けます。6日目以降は希望により続けることができます。5日までの人は白いTシャツを着用しそれ以後の人は赤いTシャツを着用しています。
 
▼吐くときの様子。Tシャツで色分けされています。
ワット・タムクラボーク
 
6日目からは、2種類のハーブティを毎日飲みます。これは、吐く時に使うお茶とは違うものです。消化と睡眠を助けます。飲んでみましたが漢方薬のまだ濃いような味です。見学者はペットボトルに無料で持ち帰れます。お茶の部屋の周りには、ウコン、生姜、ターメリック、こぶみかんなどが干してありました。
 

ハーブで吐き体内を浄化する以外の治療

ハーブの治療だけでなく、規則正しい生活も身に付けるよう指導されます。朝は4:00に起き、20:00に寝ます。食事は3食提供されます。
 
寺の掃除、農作業、皿洗いなどの軽作業も毎日あります。ハーブサウナにも毎日入ります。
 
▼ハーブサウナ
ワット・タムクラボーク
 
仏教の説教は、仏教の教え、人間のカルマについて話されます。座禅も行われます。お坊さんとの対話もカウンセリングを受けるようにすることができます。
 
▼境内の仏像
ワット・タムクラボーク
 

僧侶の話

脱離で苦しみ、又薬物の誘惑が来たとき、仏教やカルマの理解があると食い止められると説明がありました。
 
ここで治療した西洋人で、このお寺の僧侶になる人もいます。その割合は全体の15%に及びます。
 
▼作業をする僧侶
ワット・タムクラボーク
 
薬物を再度使用した時は、もう2度と寺院の中での解毒はできません。アルコールの場合は数回の利用が許されています。
 
この寺院には、様々な人が見学にきます。政府関係者、警察関係者なども含まれています。僧侶が、外に出向き寺院について講義やセミナーなどをすることはありませんが、見学者を受け入れるという活動で啓発活動にしています。
 
なかにはこのお寺で治療し、薬物の誘惑の恐怖でそのまま、もう何十年も滞在し、吐き続け浄化をしている人もいました。
 
ハーブでの身体的治療、僧侶の精神的治療、見学者など目にさらされる社会的治療がなされています。それでも、この寺院での治療は5%、後の95%は自分と向き合い、自分と対話し止める決断をし継続することが必要なのだとか。
 
タイの街を朝早く歩くと托鉢する僧侶、僧侶にタンブン(徳を積む)する市民の姿を見ます。スーパーに行けば様々なハーブが売られ、手にすることができます。仏教の教え、ハーブへの医学的な考え方で、この寺院の依存症への治療が効果的だと考えられているのです。
 
文:Sazu Iwai-Pawle(タイ バンコク在住ライター)
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ワット・タムクラボーク
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