生活のなかに花があると、豊かな気持ちになるものです。自粛生活に伴い、日本でもここ最近ガーデニングや家庭菜園を始める人が増加中との記事を目にしました。
花や土いじりにはストレス解消や気分向上といった精神的な効果と同時に、土を運んだり立ったりしゃがんだりすることで、普段使っていない筋肉を動かし、爽やかな汗をかくことができます。外出がままならない時期に、花のある生活を取り入れたいと思う人が増えるのは自然な流れだったかもしれません。
私が住むイギリスは、ガーデニング好きな人じゃなくても耳にしたことがあるであろう「イングリッシュ・ガーデン=イギリス式庭園」で有名です。
大都会ロンドンでさえ、ところどころにイングリッシュ・ガーデンが点在しています。
それは王立公園であったり、住宅の庭だったり。特に住宅街を歩いていると、表庭がきちんと整えられ美しい花々が植えられていて、それを見るために散歩に出かけたくなるほど魅力的です。
この記事では、植物や花が私たちに与えるおどろくべきメリットから、いますぐトライしてみたくなるイングリッシュ・ガーデンの作り方まで詳しくお話していきます。
イギリスで撮りためたイングリッシュ・ガーデンの写真たちと共にお楽しみください。
花のある生活を取り入れるメリット・効能
イングリッシュ・ガーデンに欠かせない花たち。花の魅力は誰もが感じていることでしょう。今回深掘りしてみたところ「やっぱり花は生活に欠かせない」と思わせてくれるようなことが分かりました。
ガーデニングは心にも体にも優しい
ガーデニングをおすすめしたい理由は、精神的にも身体的にも良いとされることです。
まずは、ストレス解消や気分向上などの精神的な効果です。花や植物が持つ香りで癒されたり、見ることで植物の色からもヒーリング効果を得られます。アロマセラピーやカラーセラピーといった療法もあるほど、香りや色から得られるヒーリング効果は有名ですよね。
また、土いじりをした時に、なんとなく心が落ち着くことを体験されたことはありませんか?これは、土壌に含まれる細菌がストレスを防ぐ働きをしている可能性があるというメカニズムによるものだそう。
身体的に良いとされる理由は、体を動かすことでエクササイズ効果が得られます。土の持ち運びや植物の世話で立ったりしゃがんだりすることで、普段使っていない筋肉を動かしたり、鍛えたりできます。はじめはキツイなと感じるかもしれませんが、汗を流すことはいい運動になり、体の不調を防ぐのに大切なことです。
ガーデニングは自己表現のツール
ガーデニングはとってもクリエイティブです。ガーデンのデザイニングやどういった植物を植えるかで個性を表現できます。
イギリスでは、表庭を美しく保つことで誰がいつ家の前を通ってもはずかしくないよう心がけています。それは裏庭であっても同じ。現にイギリスでは80パーセント以上の人が表庭か裏庭を所有しており、中には多くの人が年間約10万円以上も庭に出費しているなんて調査結果も。
庭は訪問客を温かく迎えてくれる特別な空間。綺麗な表庭のある家の前を通ると、きっと素敵な人が住んでいるんだろうなとその家主のパーソナリティーが垣間見られるような気がします。
日本でも簡単にガーデニングを始められる
ガーデニングが心身ともに効果をもたらすのはもちろんのこと、家庭菜園なら美味しい自家製野菜が食べられます。この機会に、ガーデニングに挑戦してみるのもアリではないでしょうか。ご自宅の庭でもマンションでも簡単に始められますよ。
小さい庭編
おすすめは、できるだけガーデニングをする範囲を小さくすることです。
- 玄関周り
- 表窓付近
- 壁側のみ
このように、植物を植える部分を限定することで手入れが簡単で、世話がしやすくなります。敷地内の色々なところに植物が点在してしまうと、水やりや草引きなどの管理も大変になり、美しく保つことが難しくなります。まずはできるだけ狭い範囲に絞り、慣れてきたら増やしていくと良いでしょう。
マンション編
マンションやアパートにお住まいの方でもガーデニングを始める方は増えていますね。ポイントはプランターが使えることです。ベランダにプランターを置くことで十分ガーデニングを楽しめます。
詳しいイングリッシュ・ガーデンの作り方も、後ほどご紹介いたしますので、その前にイングリッシュ・ガーデンらしいってどんなことなのか、その特徴をご紹介しておきますね
イングリッシュ・ガーデンの特徴
イングリッシュ・ガーデンの歴史は長く、現在のナチュラルさに重点を置いたスタイルに変貌したのは18世紀ごろのことです。イギリスで見られる美しいイングリッシュ・ガーデンをまずは写真でご覧いただきましょう。
イングリッシュ・ガーデンならコテージ・ガーデンを知ろう
イングリッシュ・ガーデンと一言で言っても、様々なスタイルがあります。ランドスケープ・ガーデン、チューダー・ガーデン、ヴィクトリアン・ガーデンなど・・・。
その中でも特に人気が熱いのが、コテージ・ガーデンです。コテージ・ガーデンはもともとイギリスの労働階級の人たちが住んでいたコテージの庭に、植物や食卓用のハーブ、野菜やフルーツなどを植えた、家庭的で生活感のあるものだったそうです。様式化されたのは1870年代にまでさかのぼり、長い歴史を誇ります。
田舎風のコテージ・ガーデンといえば、ピーターラビット。そう、ピーターラビットの絵本の中に出てくるような、自然豊かな農牧地帯にたたずむコテージ。敷地内に足を踏み入れると色とりどりの花や植物、ハーブなどがミックスされた、まるでおとぎ話の世界に足を踏み入れたかのような世界観。それがコテージ・ガーデンです。
キーワードは自然体
イングリッシュ・ガーデンの特徴は、いかにナチュラルに見せるかがカギです。一見無造作でもそのバランスはパーフェクト。綿密に計算されているのにわざとらしさがなく、植物や花々の特性を活かしたスタイルです。庭なのに庭っぽくない、まるで草花が広大な草原で生き生きと咲いているような、そんなイメージです。
たくさんの種類の植物を使う
イングリッシュ・ガーデンを見ていただくとお気づきのように、たくさんの種類の草花がぎゅっと寄せ集まっています。サイズも様々で、短めなものと高く伸びるものをミックスしています。色とりどりのたくさんの植物を散りばめることで、無造作でナチュラルな雰囲気に。
自分で作れるイングリッシュ・ガーデン
イングリッシュ・ガーデンの特徴はお分かりいただけたでしょうか?それでは実際に自宅でイングリッシュ・ガーデンを作ってみましょう!
あると便利なガーデニング用品
ガーデニングを始めるならまずは、最低限の道具を揃えることから始めましょう。便利なガーデニング用品をチェックしてみて下さい。
1.シャベル
土を掘り起こすのに、シャベルは欠かせません。大掛かりに地面を掘り起こす必要がなければ、ハンドサイズの小ぶりなシャベルで十分です。選ぶポイントは丈夫さです。
私は土の固い部分を掘ろうとしてシャベルを壊してしまった経験があります。今ではイギリスで購入したアンティークの使い慣らされた丈夫なものを使っており、とっても使いやすいです。
2.手袋
素手で土に触れるのも気持ちが良いですが、虫が気になったり、土が爪と指の間に入るのが気になったりすることもあるでしょう。そんな時には手袋を使います。
しっかりと指にフィットする自分に合ったサイズを選び、指先がスムーズに動くものがいいですね。選び方はガーデニング専用のもので、腕をカバーする部分が長いものか、腕や手首にしっかりフィットするものであれば手袋の入口から土が入り込む心配がありません。
3.ハサミ
植物をカットする時にはハサミを使いましょう。ハサミを使わずに切ろうとすると、余計なところまでカットしてしまったり、植物を傷付けてしまったり。
いつまでも植物に元気でいてもらうためには、ハサミを使って優しくカットし、枯れた部分もこまめに取り除いてあげましょう。ハサミは剪定ばさみを選びます。普通のハサミで切ってしまうと、茎や枝を潰してしまうので、スッパリ切れる剪定ばさみで植物への負担を減らせます。
4.ジョウロ
水やりをするのに、どうしてジョウロが必要なのでしょうか?それは、ジョウロなら植物や土を傷めずに水を与えられるからです。
用途によって選び方は異なります。庭の範囲が広く、たくさん水をやる必要があれば、タンクが大きめで丈夫なものがおすすめです。何度も水道まで水をくみに行かなくて良いですよね。
しかし、庭が小さいかベランダの狭いところのみであれば、小ぶりで口の細いものが使い勝手が良くぴったりです。
イングリッシュ・ガーデンにおすすめな植物
こちらでは、本場イギリスのガーデンで良く見かける植物を紹介します。不規則でもオッケーなところがイングリッシュ・ガーデンの魅力ですが、植物によってはイギリスで元気に育っていても日本の気候や風土に合わない、植物の組み合わせによってはうまく育たないこともありますので、ぜひお住まいの土地風土に合う植物を園芸ショップなどで相談してみてくださいね。
1. バラ
イギリスの国花でもあるバラ。見た目も優雅で美しく、香りも最高ですね。つるバラの様に絡みながら伸びていくタイプでアーチを作ったり、壁に這わせたりするのもグッドアイディアです。
2.ラベンダー
細かい紫の花と、たくさんの細い茎や葉がボリューミーに広がるラベンダー。香りはもちろんのこと、その繊細な姿は見ていて飽きることはありません。
3.あじさい
あじさいというと、日本の梅雨の時期を思い浮かべるかもしれませんね。白色やピンク色、うす黄緑色もあり、大きく育ちボリューム感もあってインパクトを与えてくれます。
4.ハーブ
ハーブの良いところは、イングリッシュ・ガーデンの雰囲気をより一層感じられることと、虫を寄せ付けないことにあります。ハーブの近くにある植物を害虫から守るために、ところどころに分けて植える方法も。そして何より料理にも使えて実用的です。
5.タチアオイ
空へ向かって高く伸び、大きな花を咲かせる美しいタチアオイ。暑さにも寒さにも強い丈夫な植物です。花の色もたくさんあり、好きな色をミックスして楽しみたいですね。
6.アネモネ
50cmくらいまでしか伸びないものから1mを越すものまであり、色とりどりで品種も様々。ガーデニングでは人気の美しい植物ですが、毒を持っているので扱う際には手袋をおすすめします。
7.ハゴロモグサ
葉の形が聖母マリアのマントのようだと言われたことから名付けられた、ハゴロモグサの英名はレディース・マントル。細かい黄色の花がかわいらしく、地面に這うように育ちます。葉はハーブティーとして楽しめるなど、ぜひ取り入れたい植物の一つです。
植物を植える時のポイント
以下でご紹介するのは、基本的なガーデニング作業に加えてイングリッシュ・ガーデンを作るのにおさえておきたい重要ポイントです。
- 植物の開花時期を把握する
- 植物の特性を知り、世話の仕方を学ぶ
- 背の低い植物を手前に植え、大きく伸びる植物を後方に植え立体的に仕上げ
- 植物同士の相性をチェックする
- 地面の境界線をかぶせてくれるグランドカバー(地面を這うように伸びる植物)を使う
自由で無造作でも美しく見えるイングリッシュ・ガーデンですが、ポイントをおさえなければ荒れ放題で残念な庭になってしまいます。まずは事前に植える植物についてのリサーチをし、プランを立てるとよいでしょう。
紙に描いてデザインしてみるのもおすすめですよ。実際に知り合いのイギリス人は紙に描いて、だいたいの出来上がりをイメージしてから植えています。
プランターを使ってベランダガーデニングを始めたい方にとっても同じです。ぜひポイントをおさえてからトライしてみて下さいね。
ナチュラル感にアンティーク調をミックス
ナチュラルなイングリッシュ・ガーデンのラストタッチには、アンティーク調の雑貨がぴったりです。ジョウロはブリキをチョイス、鉢のかわりにホーローを使用したり、壁に使用する素材をイギリス風なレンガにしてみたり・・・。
ちょっと錆びかかったシャビーな雑貨もおすすめです。使い古されたアンティーク調のものを使うことで、どことなくイギリスのカントリーな雰囲気をさりげなく演出し、アイディア次第で素敵なイギリス風に近づけられます。
花のある生活で心豊かになろう
世界中の人びとが愛してやまないイングリッシュ・ガーデン。その美しさは一度目にしたらずっと忘れられずに心に焼きつく唯一無二の存在。見て楽しむ他に、実際にガーデニングをすることでたくさんの効能が得られ、植物が私たちを癒してくれます。
そしてイングリッシュ・ガーデンを学ぶことで、今までなかったガーデニングの発想や、テクニック、イマジネーションなどが芽生えます。
イギリス人のガーデニングに対する情熱が証明するように、ガーデニングは一生楽しみ続けられる趣味。日本にいながらでも自由に楽しく、イングリッシュ・ガーデンを作ってみませんか?
いつか皆さまの豊かな生活の中に、ひっそりとイングリッシュ・ガーデンが息づいていることを願って・・・