“Dry January”と言う言葉を聞いた事はあるでしょうか?イギリス人はクリスマスに沢山の飲酒をし、1月は健康について考えようという禁酒月間運動のことです。
禁酒運動とは人体を酒害から守り、酒の害による社会問題を除去していこうとする運動を指します。19世紀初期から20世紀初期に米国、英国で特に盛んになりました。 (参考:http://news.bbc.co.uk/hi/english/static/in_depth/programmes/2001/booze/history2.stm)
たとえば1854年に制定された「日曜ビールハウス法」は、パブやビールハウスを日曜午後2時半~6時まで、午後10時~月曜の午前4時まで閉店するよう定めました。唯一アルコールに気晴らしを求めていた労働者は、飲酒の楽しみさえも制限されるようになったのです。
イギリスは長くパブ文化が根付いているというのは有名な話
イギリス人とビールと言えば、パブを連想する人が多いはずです。パブとは、「パブリックハウス」(公共の家)の略語です。イギリスにはどんな小さな街もパブがあって、地元の人の社交場になっています。とにかく老若男女イギリス人はビールを片手にお喋りを何時間もかけて楽しみます。
一昔前まではお昼のランチや午後のお茶もパブに行くのが一般的
イギリスでは、仕事中のお昼休みに1パイントくらいのビールを飲むのは問題ありません。またパブは客にビールを提供するだけでなく、宿泊施設、集会所や結婚式場等としても利用され、ときには政治集会も行われました。現在は音楽ミニライブやクイズナイト、カラオケイベントなど主催し、地域住民にとって社交の場であるとともに、レジャーセンターの役割も果たしています。
コーヒーショップ文化がパブ文化を脅かす
90年代に米国ドラマの影響でコーヒーショップがブームになり、コーヒーショップ文化がイギリスにもやってきて、大手チェーンショップが幅をきかせるようになり、パブでビールやお茶するという文化もずいぶん薄まってきました。
また、別の一面として、2007年の禁煙法(パブでの喫煙禁止)の影響もあり、酒屋としてのパブも、経営難からの閉店が相次いでいます。近年の4年間で酒税が4割も増税された事と、ビールの消費量自体も少なくなっていることも影響していると言われています。
その上さらにパブを脅かす存在、スーパーマーケット
スーパーマーケットで売られているお酒が、パブで飲むより安いのです。イギリスのパブのビールは1パイント3ポンド、もしくはそれ以下だったりと、そんなに高くはありません。しかし、スーパーのパック売りで440ml缶が1ポンド以下で買えるなら、以前は週に何度もパブにいってた人も、今は回数を極力減らして、パブへ行かない日に家でスーパーで買った缶ビールを飲むという流れになっています。
我々日本人にしてみたら、十分安い様に思いますが、それは日本のビールが高いからです。これでもイギリス人は「前は水よりももっと安かったのに!」と思っているのです。
また特に若者のパブ&ビール離れは深刻。ビールよりも手っ取り早く酔えるアルコール度数の高いウォッカやジンをスーパーで安く買って家で飲み、すっかり酔っぱらってからクラブに行く・・・といったように、安くすませるようにしているとか。その結果、昔より若者の泥酔者が街に増え物騒になっていることがニュースになっていました。
ビール一杯飲んでから運転は違法じゃないイギリス
英国では、呼気中アルコール濃度80mg/l以上にならないと違法ではないのだそうです。だから、英国のパブには駐車場があって、皆一杯引っかけてから帰る人もいます。その基準の80mgを50mgにする改善案もあるとか・・・。
英保健当局は、週末の夜になると多くの街の中心部をカオス状態に陥らせる「深酒文化」を改善しようと、根気強い取り組みを続けています。
文:ディビス奈緒子(英国在住ライター/留学生生活サポートワーカー)
この執筆者の記事一覧
《これらの記事も読まれています》
■ イギリスの伝統的なクリスマスの習慣とは(1)
■ 小学校英語教育の『早期化』に保護者の過半数は賛成、「子どもが英語を好きになるようにしてほしい」
■ 年間の祝日8日、イギリスは休みが少ない?
■ 本番を迎えるイギリス流クリスマスショッピング
■ 女性に人気のイギリス留学